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15話 十一層 ボス攻略 ラフレシア・ガーデン


「そんな陰湿なトラップがあったんですね…それにしても良くご無事で」


「出てくる端から片付けたが、数が多すぎたな」


「それでその魔物の魔石がこの量なのですね。支払いはいつものでいいですか?」


「ああ、それで頼む」


レインがニコッと笑ってから奥へと消えていく。レルゲンは魔石を換金された額を確認することなく攻略本部を後にするが、


その様子を見ていたミリィが何やら考えている。


(レルゲンさん。いつも魔石の換金をしてからお金を受け取らないけど、量が毎回多いから後払いなのかな?)


深く考えても仕方ないと気持ちを切り替えて、本日はこれでお開きとなったため、帰路につく。


「私、本当にこれでいいのかなぁ」


オレンジ色になり、もうじき夜を知らせる一番星が煌々と輝いていた。


次の日、十一層のボス攻略を行うべく、ミリィをレルゲン達が寝泊まりしている旅館まで招待し、

少人数での攻略会議が開かれようとしていた。


「私、多分今日のことは一生忘れません…!」


しかし、やや興奮気味のミリィに三人が微笑ましい笑顔を向けて、


ミリィに旅館を満喫してもらってから会議を始めるように予定を変更することに。


食べ物、着物、お風呂と順番に旅館を回って行き、ミリィは当初の目的を完全に忘れるほど楽しんでいた。


「はっ、しまった!」


「どうした?」


「攻略会議に来たんでした…」


「進みも早いし、会議は明日でもいいぞ」


「いえいえ、さすがにそこまでは」


「それじゃ、準備するぞ」


机に広がっていた食べ物や食器がレルゲンの念動魔術で片付けられ、


あっという間に机の上が攻略会議の資料で埋まってゆく。


「念動魔術…?でしたっけレルゲンさんが使っている魔術」


「ああ」


「便利過ぎて私も習いたいくらいです」


レルゲンが少し驚いて、笑いながら


「それ、マリーにも言われたよ」


「私は少しだけど使えるようになったわ。まずは魔力糸ね!」


「魔力糸…?」


張り切って教えようとして、更に話が脱線してゆく。


マリーの話をうんうんと真面目に聞いているミリィは真剣な表情をしているので、セレスティアとレルゲンの二人でボス攻略の話をする事に。


「始めは俺が…」


「ならこのタイミングで…」


など具体的な戦術が話されてゆき、一時間ほど話し合ってからマリー達も会議に加わった。


いざボス攻略戦。

ボスの部屋は森林地帯の様で、部屋の内部は木々が繁っており、見通しがあまり良くなかった。


レルゲンの魔力感知でも魔物の位置が分かるため、そう魔物との距離は無い。


一度天井付近までレルゲンが念動魔術で飛び、魔物の位置を確認する。


するとマリー達から数十メートル先にボスと思われる魔物が動かずにじっとしていた。


「あれは、ナウム・プラントの親玉か?」


素早くマリー達の元へと戻り、情報を伝えると

セレスティアが魔物に心当たりがある様だ


「それは恐らくラフレシア・ガーデンですね。

実際に見てみないと確信は持てませんが、五段階目の魔物だと思います」


五段階目と聞いて、マリーとミリィが少し安堵の表情をしたが、


それを見たセレスティアが諌めるようにマリーとミリィを見て続ける。


「主な攻撃方法は強酸のブレス、これは暫く地面に影響が残ります。


そして極め付けは、自分に危険があると判断すると四段階目のナウム・プラントをかなりの数生み出すことにあります。


五段階目とはいえボスに配置されるだけある厄介な魔物です」


「気を引き締めていこう」


マリーとミリィが頷き、レルゲンがまだ距離があるにも関わらず黒龍の剣に魔力を込めて刀身が伸びる。


当初の予定では始めにボスに向けて黒龍の剣の一撃を放ってから開戦する予定だったため、他の三人が驚く。


「まずは見晴らしを良くする。少し下がっていてくれ」


三人がレルゲンの後ろに巻き込まれないように下がる。


横に薙ぎ払われた赤い光線はラフレシア・ガーデンを覆い隠していた木々を全て切断し、文字通りボスが顕になる。


「みんな、行くぞ!」


セレスティアが即座に全員分のノーマリィ・コンディションを含めたバフを纏めてかけ、


マリーとレルゲンが駆け出す。


予めレルゲンとマリーの剣には風の下位魔法、ウィンドカットが付与されており、ツルによる防御を許さない工夫を凝らしている。


近づいたレルゲンとマリーに向けてラフレシア・ガーデンは強酸のブレスを連続で放ってくる。


予めセレスティアから聞いた情報からレルゲンは前衛の二人分に矢避けの念動魔術をかけて体制を整えている。


「マリー、遠距離攻撃はこっちで防ぐから気にせず突っ込んでいけ!」


「ええ!」


強酸のブレスがマリーを捉えるが、レルゲンの念動魔術を信頼してそのまま突っ込んでいく。


マリーに衝突すると同時に矢避けの念動魔術が発動し、弾く様に強酸の塊が散ってゆく。


「やぁぁぁあああ!!!」


気合いの込められた一撃がツルを深く斬り裂くが、ラフレシア・ガーデンが体を駒の様に回転させ、マリーが一度距離を取る。


レルゲンは中距離から再度黒龍の剣に魔力を込めた一撃を放ち、回転途中のラフレシア・ガーデンを飲み込んでいく。


光線攻撃が収まると、ラフレシア・ガーデンのツルは半分ほどになり、大きく傷ついているのが見て取れた。


「ナウム・プラントが生産されます!」


セレスティアが大きな声でレルゲン達に伝えると、


ラフレシア・ガーデンはツルから身のような赤い塊を地面にボロボロと落とし、動きが止まる。


赤い塊からは情報通りナウム・プラントがツルを生やしながら整形されてゆく。


「セレス、ミリィ!生成されたナウム・プラントは魔術で焼いてくれ」


二人が頷き、火炎魔術を発動する。


「ブルーフレイム・アローズ!」


「ファイア・ストーム!」


二人の火炎魔術がナウム・プラントを一気に半分近く削るが、まだ十体以上残っており、


レルゲン達はナウム・プラントをまず討伐しようと足を動かそうとしたが、マリーが異変に気づく。


「レルゲン!」


マリーに呼ばれたレルゲンは目を見開いて驚いた表情をする。


なんと半分近く削ったツルの本数が増えている。


目に魔力を集中して魔力の流れを可視化すると

残っていたツルが地面へと突き刺さり、

魔力を吸い上げているように見えた。


(こいつ、ナウム・プラントを盾にして回復するつもりか…!)


「セレス!ナウム・プラントは俺達が片付ける!火の上位魔術でボスを焼いてくれ!急ぎだ!」


セレスがすぐにターゲットをボスのラフレシア・ガーデンに変更してブルーフレイム・アローズを放つと、


文字通り肉壁となってナウム・プラントが射線上に割り込んできた。


(それなら…!)


「みんな!予定には無かったが狙いはボスだけで良さそうだ!取り巻きは勝手にボスを護ろうと動く!」


三人が頷き、各々の最大火力の魔術をぶつけていく。


割って入ったナウム・プラントを全て屠ると、ラフレシア・ガーデンが再び行動を再開する。


先程確認した時よりも更にツルの本数が増えており、傷はほぼ癒えたと言っていいだろう。


(ラフレシア・ガーデンに回復能力は無かったはずでしたが、流石は高難易度。一筋縄ではいきませんね)


セレスティアが少し唇を噛みながらも、もう一度火の上位魔術を準備し始める。


レルゲンが次の一手を考えるが、さっきと同じではこちらが消耗するだけで意味がない。


何か別の方法を試す必要がある。


ふと胸のポケットにしまっていた小瓶の音が鳴り、レルゲンは直感的に案を思いつく。


(みんな、俺に考えがある。これでダメなら一度撤退しよう)


全員に魔力糸を飛ばし、思念で伝達する。


すると全員が一斉に動き始め、ラフレシア・ガーデンは首を細かく動かしてターゲット先を決めようとしている。


まずはナウム・プラントを討伐した時の火炎魔術を魔術師二人が同時に発動し、


ツルを焼くことで追加のダメージを与える。


マリーはその間にテンペストの詠唱を済ませて遠距離から風の上位魔術を浴びせる。


すると再び傷ついたラフレシア・ガーデンが赤い身のような塊を生成し始め


この瞬間にレルゲンが念動魔術で超加速した突進を見せて肉薄すると、


それをなんとかさせまいとツルによる攻撃を仕掛けてレルゲンの足止めを図る。


たが全てツルを回避、斬り落として胸に入っていた小瓶の液体をラフレシア・ガーデンの口の中に放り込むと、一瞬にして動きが止まった。


赤い花で出来た頭部と、身をつけ始めたツルが青く染まり、


枯れる様に途中でボトボトと落とし、そこから新たなナウム・プラントが発生することはなかった。


無理矢理回復しようと地面にツルを突き刺して動きを止めたが、


レルゲンの持つ黒龍の剣が真紅の輝きを見せ、一直線に光線がラフレシア・ガーデンを焼き払った。


「みんなお疲れ様」


「私達だけでやったわ」


魔石へと還って一安心したレルゲン達は

初めての少人数でのボス攻略を成し遂げた事に安堵して、喜びを分かち合う。



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