表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/252

11話 十層ボス アシュラ・ビースト攻略戦

ボス部屋の扉前

ヒューゲルがみんなの前に立ち


「俺から言える事はただ一つ。今度こそ勝とうぜ!」


「おお!」


固く閉ざされた大扉がゆっくりと開いていく。

薄暗い部屋の奥から青い火で出来た照明が順についてゆき、室内を照らしてゆく。


部屋の最奥にある玉座とも取れる位置に六段階目の魔物。

アシュラ・ビーストが鎮座している。

閉じられていた眼が見開かれ、赤い眼光が光り輝いている。


まずは挨拶と言わんばかりに室内に咆哮が響き渡る。


「グガァァアアアア!!!」


硬直まではいかないが、それでもアシュラ・ハガマと比較すると大きい。

存在感も相まって圧力がある。


経験豊富な冒険者達は圧に負ける事なくアシュラ・ビーストに突っ込んでいき、

まずは手筈通り、ヒューゲルとアスタ達が前衛として肉薄し

ターゲットを取りに行く様だ。


マリーとレルゲンは中衛に控え、アシュラ・ビーストの様子を伺う。


「ねぇレルゲン、あの魔物って」


「ああ、ハガマと比べると背中の鉱石がより鋭くなっているのもそうだが、足が長くなっているな」


長くなっている足の関節には外側に突き出す様に鉱石が飛び出ている。

防御力こそアシュラ・ハガマを受け継いでいるが、

攻撃力は速度と鋭利な背中を押し付ける様な攻撃方法があるだろうと予想できる。


素早く動くとは事前に聞いていたが、亀のような幼体であるアシュラ・ハガマからは想像出来ない進化を遂げていた。


それに加えてアシュラ・ハガマの時は増幅器代わりになっていた

尻尾の付け根部分までもが鋭利な甲殻と鉱石で覆われている。


(さて、どうやって近接攻撃を入れるつもりだ?)


走って行ったヒューゲルとアスタは無属性魔術を同時に発動し、アシュラ・ビーストを惹きつける。


「「ヘイト・ダミル!」」


ヘイト管理による後衛のサポートがメインの立ち回りで、

自ら有効打を入れることはないが後衛のサポートをするのが目的のようだ。


(なるほど、前衛で攻撃を入れるより後衛の魔術師の攻撃をメインに攻略するつもりか)


なら、可能な限り魔力タンクのレルゲンは後衛の魔力補助に回った方がいいだろうと考え、

後衛にいるセレスティアとミリィの元へと向かう。


「二人とも、初めから全開では飛ばさずに魔力を出来るだけ温存してくれ。足りなくなったら俺から受け渡す」


二人とも頷き、他の術師と同様に中級の攻撃魔術を詠唱して準備する。


「私たちはこのまま見学?」


「そうだな、前衛を突破されて後衛に攻撃が来た時は対処しよう。それまでは見学でいいはずだ」


「なんか歯痒いわね」


「初めてのボス攻略だからな、新参者は参加させてくれるだけありがたいらしいぞ?」


「面倒くさいわ、こういうしがらみ」


「このボスが終わったら俺たちだけで進めてしまってもいいはずだ。他を待っていたら二ヶ月じゃ間に合わないしな」


「我慢はここだけってことね」


「ああ」


ある程度アシュラ・ビーストが後衛に対して背を向けたタイミングで、

ヒューゲルが後衛の魔術師達に指示を飛ばす。


「魔術師隊、一斉攻撃!」


詠唱を完了していた魔術師達が一斉に攻撃魔術を発動する。

一つだけやけに大きい氷の槍がアシュラ・ビーストに向かって行ったが

これはきっとセレスティアのものだろう。


様々な種類の攻撃魔術がアシュラ・ビーストに直撃し、大きく怯んだ。


「効いているぞ!」


魔術師達が歓喜の声を上げるが、主なダメージ源は恐らくセレスティアのフロストジャベリンだろう。


ダメージが今のでだいぶ通ったのか、アシュラ・ビーストが後衛の魔術師達へとターゲットを変更する。するとヒューゲルとアスタが再びヘイト管理のために無属性魔術を発動する。


「「ヘイト・ダミル!」」


一瞬はアシュラ・ビーストがヒューゲルとアスタに目線を向けたが、ターゲット変更が出来ない。


そのまま背中の鉱石が紫色に光輝き、口元に光が集まってゆく。


「光線攻撃がくる!みんな退避しろ!」


慌てて固まっていた後衛部隊が散っていくが、これが不味かった。


口元から分割して発射された光線攻撃は、後衛の魔術師部隊を一撃で三割ほど戦闘不能にし、

セレスティアとミリィに来た光線攻撃は、

黒龍の剣で受け止めたレルゲンが念動魔術で天井へと軌道を変更され、

天井からパラパラと欠片がが落下してきた。


それを見たヒューゲルは、レルゲンに後衛の守護を任せる指示を出す。


「レルゲン君!また光線攻撃が来た時は後衛の護衛をお願いしたい!」


「了解」


残った後衛部隊へ向けてレルゲン短く指示を出す。


「光線攻撃が来た時は俺の後ろに集まってくれ!分割されると全員は護れない!」


後衛の魔術師達が頷く。

再び無属性魔術のヘイト・ダミルを発動したヒューゲルとアスタにようやくターゲットが戻り、再び残った魔術師が詠唱を始める。


ここでレルゲンがセレスティアに魔力糸を繋ぎ、思念を飛ばした。


(セレス。三割ほど削れた分の魔術を補完してやってくれ。

他の魔術師達は気づいていないが、主なダメージはセレスの魔術だ)


(分かりました。氷の上位魔術を次から使います)


(負担をかける)


(いいえ、中級の魔術だけでは数が多くても意味が薄いですから。寧ろありがたいです)


二人とも顔を見合って薄く笑う。

レルゲンはマリーに向きを変え、独自の作戦を伝える。


「次の魔術攻撃で恐らくまたこちらに攻撃が飛んでくる。

光線攻撃の時は俺が散らすが、突進してきた時は二人で抑える。準備しておいてくれ」


「なんだか本当に突進が来そうね、分かったわ。

六段階目の魔物と力比べなんて、ちょっと楽しみ」


不敵な笑みをマリーが浮かべ、準備が整う。

ヒューゲルとアスタが再びターゲットを取っている隙に、

戦闘不能になった魔術師達にセレスティアが

リジェネライト・ヒールとエクストラ・ヒールを発動し回復を行うが、

命を繋いだだけで戦闘に復帰は出来ないだろう。


三割の損害とはいえ人数が多いため、セレスティアの魔力が一気に二割ほど消費される。

しかし魔力糸越しにレルゲンが魔力を受け渡し、

セレスティアの魔力が全快するが、いくら魔力タンクとはいえ繰り返されると正直心許なくなる。


もう少ししたらレルゲン達に出番が回ってくるだろうが、あまり多用したくない手だ。


ヒューゲルとアスタに向き直ったアシュラ・ビーストが後衛魔術師達に背を向けると、

ヒューゲルから指示が飛んでくる。


「魔術師隊!放て!」


「マルチ・フロストジャベリン」


セレスティアが放つ氷の上位魔術は、ナイトとの戦闘よりも一つ一つが大きくなっており、

数も十本を軽く超えている。

これを見た魔術師達が驚いていたが、集中を切らす事なく中級魔術を繰り出す。


しかし、さすがは知能の高い六段階目。

わざと魔術師達に背を向けて、攻撃を誘っていたのだ。


発射された攻撃魔術を横に飛ぶことで回避し、

セレスティアが瞬時に射出角度を変えた事で何発かアシュラ・ビーストに氷の槍が当たり若干怯むが、

向きを変えながらこちらに向かって猛スピードで突進してくる。


ヒューゲルとアスタが突進を止めようと間に割って入るが、軽々と飛ばされてしまう。

他の前衛は回避するのに精一杯だ。


「来るぞマリー!」


「ええ!」


速度にして百キロは悠に超えている突進を真正面からレルゲンとマリーが受け止めに入る。


瞬時にセレスティアが防御系のバフを素早くかけ、

ミリィが影移動魔術をアシュラ・ビーストにかけて突進の速度が若干遅くなる。

それでも突進自体はやめず、レルゲンとマリーに突っ込んでいく。


レルゲンとマリーは魔力解放を行い、剣と足に魔力を集中させると魔力で光輝く。


剣を縦に構え、両手で抑えることで衝撃に備える。


アシュラ・ビーストが二人と衝突する。

ドシンと身体を押し潰さんとする突進を真正面から受け止め、

十メートル程後退したところでアシュラ・ビーストの勢いが完全に止まる。


「おお!!」


周囲から感嘆の声が漏れるが、二人が踏ん張った地面が大きく削れており、

突進の威力の高さを伺う事が出来る。


勢いが完全に止まった後にレルゲンがアシュラ・ビーストの前足を斬りつけ、

そして二撃目を下段から上段へ向けて斬り上げる。


腹部が顕になった瞬間、レルゲンがセレスティアを呼ぶ。


「セレス!」


「お任せを!マルチ・フロストジャベリン!」


先程と同じ、複数の氷で出来た槍をアシュラ・ビーストの腹部に向けて射出し、全て命中。


勢い良く後方に吹き飛ばされたアシュラ・ビーストは転倒し、

体勢を立て直そうと必死にもがくが、

吹き飛ばされた先に待っていたヒューゲルとアスタが腹部に向けて攻撃を入れており、

指示されていなくてもマリーが自らアシュラ・ビーストを斬りつけてゆく。


数秒の間、無防備状態のアシュラ・ビーストに攻撃を仕掛けたが、

体勢を立て直し、こちらを睨みつけている。


体勢を立て直すと見ると前衛が左右に散っていき、

レルゲンとアシュラ・ビーストとの間に誰もいない空間が出来上がる。


もう指示はいらない。ここで決める。

魔力を乗せた黒龍の剣が赤く光り、刀身が急激に伸びてゆく。


「くらえ」


振り下ろされた剣はから繰り出される全開状態の光線攻撃がアシュラ・ビーストを飲み込んでいき、

威力が収まることなく後方の玉座まで突き進んでいき、諸共破壊していった。


これに耐えきれなかったアシュラ・ビーストは魔石へと還り、

見事中間地点の十層のボスを打ち倒すのだった。


歓声が上がりみんなが喜んでいる中、

ヒューゲルはレルゲンの元へ、アスタはマリーへ歩いていき拳を合わせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ