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3話 ギルド登録と最短昇級

さて、準備となるとまずは中央ギルドに登録が必要になる。


ギルドへ向かう前に王国から副団長が出向く旨を書簡で出してもらい、大きなギルドの正門ではなく裏口から見知った女性がレルゲンに声をかける。


「シュットさん、こっちです」


「君はあの時の」


「覚えていて下さいましたか!光栄です。今では副団長まで階級を上げたと聞いております。

まずはお祝いさせて下さい」


「ありがとう。王宮から便りが届いていると思うけど、早速ギルドの登録をお願いしてもいいか?」


「そうですね。ですが、まずはギルド長へのご挨拶だけお願いしてもよろしいでしょうか?長が会いたがっておりまして…」


「すまない。では諸々の挨拶が終わったら頼むよ」


「お任せ下さい。さっ、こちらです」


中へ通され、ギルド長室に案内される。

どんな強面が出てくるかと思いきや、中にいたのはレルゲンより少し歳上くらいの男性だった。


中央ではあまり見かけない薄い緑色の髪に長い耳が特徴的だが、その他には特に目立った見た目は無く、人族の一種だろう。


爽やかな笑顔で迎えられ、少しの肩透かしを喰らうが、間違いなくギルドの長だとわかる。


笑顔の裏には年季の入った雰囲気を感じる佇まいだ。

まずはレルゲンから挨拶をするために騎士令を取る。


「お初にお目にかかる。私は王国騎士団、副団長のレルゲン・シュトーゲンだ。よろしく頼む」


「ご丁寧にどうもありがとう。私はこの街のギルド長で、クーゲル・シュヴァインといいます。そして彼女は以前お会いしていると思いますが」


一歩前に出て、彼女が深々と頭を下げて名乗る。


「従業員の統括を勤めておりますハピアと申します。レルゲン様。どうぞよろしくお願いします。」


それにしても、とクーゲルがレルゲンをまじまじと見つめる。


「その歳でその体外に漏れ出る魔力の濃さ。あの元宮廷魔術師のナイト・ブルームスタットを打ち破るだけの事はあるね」


レルゲンがピクッと動く。ナイトに関する情報は王宮以外には漏らさない極秘事項なのだが、あっさり自白するクーゲル。


(何を狙っているんだ…?)


レルゲンが警戒心を少し上げるが、その様子を見たクーゲルが慌てて両手を振って弁明する。


「いやぁすまない。これは極秘事項だったね。今この部屋には僕とハピア君しかいないから、情報の秘匿性については安心してくれていい」


「ほんとうっかり漏らさないで下さいね。全く」


「いやぁ、すまない。つい歳下の実力者を見るとからかいたくなるのは性分でね。


君は見たところ一人で生活して生きてきたのかな?

僕が話し始めてから疑念の感情がずっと伝わってくるよ」


「ならその疑念を深める事はあまり言わないで欲しいな」


「全くです。クーゲルさんは反省して下さい」


「参ったな、僕の味方はいないのかい?」


ゴホンと一つ咳払いし、椅子に腰掛けるように促される。ようやく本題に入るようだ。


「さて、今日レルゲン君がここに来た理由は書簡にも書いてあったがダンジョン攻略が目的だったね。


しかしすまない。高難易度ダンジョンともあれば個人的には直ぐに許可してあげたいが、周りの目もある。


直ぐに高難易度クエストを斡旋したとあれば君たちの素性に気づく者が出てくるだろう。


もちろん気づかれても構わないなら話は別だが、そういうわけにもいかないのだろう?」


「そうだな、秘密裏に進める必要がある。だからこうして今日来たってわけだ」


うんうんと何度も頷き、ニコっと笑いながらクーゲルが続ける。


「では、レルゲン君にはギルドでコツコツと簡単なクエストからこなして欲しいのだが、草刈りや下水処理、果ては探し物まであるが、どんなのがお望みかな?」


「最短で階級が上がれるなら種類は問わない」


「となると、納品系のクエストが良さそうかな。竜種の卵や段階別の魔物素材の納品など、もし持っているならその場でクエストをクリアして昇級試験を受けられる」


「深域で狩った魔物の素材でもいいか?」


「ほう、やはり深域でも活躍しているのか。

構わないよ。素材ランクが高すぎるだろうから、差分は別途ギルドから支払おう。


一度に大量に持ってきても構わないが、都度昇級試験は受けてもらう。


こればっかりは規則だからね。

申し訳ないが手順をしっかり踏んでいって欲しい。


始めはGランクからスタートだ。

高難易度ダンジョンに行くには最低でもBは必要だから、Gからランクが二つずつ上がってもE、C、Bの順番での昇級になるね」


「CからAには上がらないのか?」


「ギルド内での功績が一定水準必要になるから、最短で進むレルゲン君にはあまり関係ない話しと考えてもらっていいよ」


「分かった。マリーとセレスティアも同じ方法で昇級試験を受ける必要があるんだよな?


俺たちは一つのパーティでやっているから昇級試験も同時にやりたいが、可能か?」


「ああ、出来るとも!ただクエストの種類の二度目以降は中難易度のダンジョンに限られるから注意が必要だ。


まぁ君達は魔物討伐の方が手っ取り早いだろうけどね。


ともあれ、ざっくり仕組みについて説明したが、何か質問はあるかい?」


「いや、大丈夫だ。ギルドとのやり取りはハピアさんが担当してもらえるとありがたいが、どうだろうか?」


「はい。私がレルゲン様達の専用窓口として承ります」


「助かる。早速で済まないがこちらも少し急いでいる。納品クエストを幾つか見繕って欲しい」


「ではお持ちいたしますので少々お待ち下さい。クーゲルさん。あまりレルゲン様を困らせないで下さいね!」


「分かったよ」


ハピアが席を外す。


「いやぁ、出来のいい部下を持つと肩身が狭くなってしまうね。ハピアが帰ってくるまで暫くお菓子でも食べながら談笑しようじゃないか」


待つ事数分、ハピアが納品依頼書を持って帰ってきた。鍛治屋や個人的なコレクター、研究者に至るまで、素材を欲しがっている者はかなりの多様性が見受けられた。


数ある依頼の中から適当に依頼を受け、すぐにそれよりも上位互換となる品を納品する手続きを行う。


深域で得た素材は非流通もいいところで、どれも希少なものばかりだが、事情がある時はみんなのために使うという取り決めをしていた。


素材納品に文句を言うのはメンバーにはいない。最速で上がれるならある程度の放出は止むなしで進めていく。


翌日、ハピアに素材を納品してクエストをクリアし、昇級試験が直ぐに用意された。


最初の昇級試験は訓練場で行われるようだ。

レルゲンは鉄剣。マリーは神剣ではなく今まで使っていた愛用の両手剣。


セレスティアも神杖ではなく、今まで使っていた杖を持っている。


ハピアが遠慮がちに宣言する。


「ではこれからみなさんには昇級試験を受けて頂きますが、シュット様とセレス様は遠距離、マリー様は近接ですね。


試験内容は簡単です。

遠距離の方は三十メートル先の的にどれだけ当たるかとなり、近接の方は武器をお持ちになって試験官の方と寸止めによる一本先取を行って頂きます」


三人とも頷く。


レルゲンの的当ては、念動魔術で全て中心に当てて満点評価。


セレスも自身の精密製の高さを発揮し、これも満点評価を獲得。


一本先取のマリーは加護を使わなくても、持ち前の身体能力の高さで試験官の剣を上空へ打ち上げる事で一本勝ちとなり、こちらも満点で試験を終えるのだった。


それからと言うもの、納品クエストをこなし、昇級試験を受けて飛び級でCランクまで順調に上げていった。


完全に閉じられた依頼完遂により、外部に漏れる事なくランクを上げていった三人は、ついに高難易度ダンジョンが受けられるBランクの昇級試験を受けることに。


Bランクの昇格戦は中難易度のダンジョン攻略で、最深部にあると言われている印を持ち帰ると言った内容だ。


このダンジョンはギルドが管理しており、最新部の印はギルドが用意したもので、主にBランク昇級試験で多くの冒険者がここを通過している。いわば初心者からの脱却用ダンジョンと言える。


出てくる魔物は最大三段階目までとされ、深域での討伐経験のある三人には朝飯前といったところだろう。


「一週間もかからずにBランク昇級試験ですか。皆さんさすがはこの王国の英雄です!では初めてのダンジョン攻略、頑張ってきてください!」


「ありがとうハピアさん。行ってきます」


手を振るハピアに三人は軽く手を振って返し、のどかな森を抜けて攻略先のダンジョンへと到着したのだった。


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