最終話 あなたのためなら
レルゲンが程なく気を失っている召子を抱えて拠点に戻ろうとした時、何もない空間から次元の裂け目が渦巻くように現れた。
「レルゲン!」
「マリー、セレス」
完全に魔力反応が消えたヤマタノオロチを感じ取ってから、勢いよく抱きしめて来る。
だが、レルゲン自身からも既に魔力は消えてなくなりつつあり、普段から巨大な魔力に慣れていた二人は少し違和感を覚えていた。
「どこも怪我ない?」
「ああ、大丈夫だ」
「本当に? 強がって見せてないだけなんてことはないよね?」
「本当だよ。ちゃんと生きてる」
ここでようやく納得したのか、無言で更に強く抱きしめた。
「それにしても、何でまたこっちに来れたんだ?」
「それはディオス神の力がマークスを打ち倒したことで戻ったためですね」
「なるほどな」
レルゲンがまだ気を失っている召子を見つめて少し迷う。
「召子も協力してくれた。
目を覚ますまで待ってから戻りたい」
「だそうですよディオス様。
構いませんね?」
「ああ、構わない。
そちらの状況はいつでも見ているから、タイミングがくれば呼んでくれたまえ」
「他のみんなは?」
「全員無事よ。あのゲートは本当にただ送り返しただけみたい」
「そうか。じゃあ拠点に戻ろう。
あとマリー、謝らなくちゃならないことがあるんだ」
「なに?」
「託してくれた神剣。ヤマタノオロチの首を落とす時に折れてしまった」
「いいわよ。あれは元々拾った物だし。
愛着は勿論あったけど、貴方が無事ならそれでいいわ」
それから召子を含めた四人は拠点に戻り、宗一郎と神田に事情を説明し、直近の脅威が去ったことを伝える。
まだ魔物は集められた個体以外にもきっといる。だが、地脈の流れがヤマタノオロチの急速チャージによってほぼ効力を失いつつある。
新たに強力な魔物は中々現れず、この世界に残る召子だけでも何とかなるはずだ。
「そういえば、離帝はどこに行ったんだ?
いつの間にかいなくなっていたが」
「多分ヤマタノオロチの所に残ってるんじゃない?
来る時に少し聞いたけど、因縁がありそうだったし」
「そうだとも。私を置いて先を行った時は焦ったぞレルゲン」
急に現れた離帝に驚きつつも、手に持っている一振りの片手剣に目が吸い寄せられる。
「それは天叢雲剣?」
「ああ、この剣は熱田神宮に再び奉納するつもりだったが、今は壊滅状態。
結界を作ることすら叶わないとなれば、この世界に置いておくには惜しい剣よ。
ヤマタノオロチを倒した証としてそちらの世界に持っていくがいい」
「本当にいいのか? これがあれば俺の力の消失以外にも証明できる物があれば助かるが……」
「よいと言っておるだろう」
だが、ここでマリーとセレスティアがレルゲンに食ってかかる。
「「力の消失ぅ!??」」
「あ、ああ。ヤマタノオロチを倒すためにウルカと再契約した代償だ。日常生活は問題ないし、魔力が無くても心念による操作術は使える。
表向きは魔力が感じられないほど抑えられているで通そうかと」
「そう、ですか。それほどまでに手強い相手だったのですね」
「あの後九本の頭に戻ったからな。
勝ち目を探すために仕方なかったと思っている」
「レル君は本当に頑張ったんだよ!
魔力は全て自動的に私へ流れるようになったから、器は無事だけど。そうまでしないとあの化け物は倒せなかった」
ここでベッドで寝ていた召子が目を覚ました。
「んんー、あれ? ここ、どこ?」
「おはよう召子。フルポーションは飲ませたから多分大丈夫だと思うけど、気分はどう?」
「あっ、マリーさん。
ちゃんと元気ですよ。ヤマタノオロチはレルゲンさんが?」
「ああ、色々あったが無事に倒した」
「そうですか。お力になれずすみません」
「あれは少し規格外すぎたからな。
仕方ないさ」
「さて、召子も目を覚ましたことだし、俺達はそろそろ元の世界に戻る。
多分また会おうと思えばディオス様が力を貸してくれるはずだ。そうだろ?」
「無論だ。いつでも会えるようにさせてもらうよ」
召子が別れの挨拶としてハグを一人ずつ交わす。
「また会えるわ」
「お元気で」
そして最後はレルゲンとハグを交わす。
「この世界はまだ混沌の中にある。
それを救えるのは召子だけだ。この世界を護ってやってくれ」
「はい。歳を取れないのは少し寂しいですけど、必ず」
「ディオス様。頼んだ」
マリーとセレスが次元の裂け目で渦巻く中に入っていく。
レルゲンも裂け目へ進もうと一歩を踏み出したが、視線に気づいて振り返った。
「フェン。召子を助けてやってくれ。
お前なら出来るはずだ」
「ヴァフ!」
「じゃあまた」
「はい。あっ、そうだ最後に一つだけ」
「何だ?」
「レルゲンさんのお子さん。ちゃんと見せて下さいね」
「約束するよ」
短く別れを惜しんで、レルゲンも次元の裂け目に入ると、そこは二人が待っている王宮だった。
「ただいま」
「「おかえり!」」
「マリー、セレス」
「なに?」
「俺、やりたい事があるんだ」
二人が微笑みながら頷いてくれる。
レルゲン達の中央王国はまだ歴史は浅い。
しかし、やってくる障害を次々と排して未来を勝ち取ってきた。
大事なのは力でも権力でもない。
ただ大切な人達を護りたいと願う心。
それは例え魔力が使えなくなったとしても変わらない。
彼女達が願う国の幸せのためならば、レルゲンはまだまだ走り続けるだろう。
半年以上もの間、レルゲン達を応援し続けてくれて本当にありがとうございました!
ここでレルゲン達の冒険の旅は終わりますが、レルゲンの子供達の話を少し書こうと思っています。
もしよければ引き続きお願いします。
現在はカクヨムで
「ダンジョンという楽園は、君達に夢を見せるか」
という新作に注力してます。
カクヨムコンに参加しているので、私の作品を気に入って頂けてる方はそちらで先にお楽しみ頂けたらと思います!
評価や感想、レビューなどしてくれたら本当に嬉しいです。
今まで本当にありがとうございました!




