37話 終末
九つの頭から各属性を纏った光線がレルゲンへと迫る。
だが、こちらも黒龍の剣に込めた一撃を放ち相殺。
予想もしていなかった程のレルゲンの力の高まりに後手に回っていたのはヤマタノオロチの方だった。
「純精霊とは厄介な。
契約でこれ程までに力を上げるとは」
「元々レル君が持っていた基礎能力が高くないとここまでは強くなれないわ。
契約とは掛け算。
出来る事の延長に変わりないの」
「だがそれも契約者たるお前が死ねばレルゲンの契約は不履行となりキャンセルされるはずだ。自ら弱点を作ったな」
ヤマタノオロチはウルカを狙う。
レルゲンは胸のポケットに入って隠れるように促し、黒龍の剣を突き出すように向ける。
「なるほど。それは素晴らしい作戦だ。
不可能なことに目を瞑ればな」
「ぬかせ」
ヤマタノオロチが九つの頭を使って矢継ぎ早に噛みつき攻撃をして来る。
一度に九つの攻撃が迫り、黒龍の剣だけではとても捌ききれない量の波状攻撃。
だが、レルゲンには浮遊剣がある。
各魔剣の刀身で全て受け切りながら気を伺う。
剣戟の火花が散るように、ヤマタノオロチの持つ牙と魔剣が激しく衝突した。
レルゲンの死角から迫った噛みつきと突進を兼ねた攻撃が胸に直撃し、地面へ叩き落とされる。
ヤマタノオロチは笑い声を上げながら勝ち誇るが、すぐにチ土煙を魔力圧で吹き飛ばしたレルゲンを見て歪んだ笑みを見せる。
「ハッハッハ! 今のをまともに受けても全くダメージ無しか!
ここまで力が拮抗するのはお前で二人目だ」
「それは光栄だな。
ルミナス・ブロウ」
超高圧の魔力砲がヤマタノオロチの硬い外殻を焦がしながら上空へ突き抜けていく。
再生を始める所を見るに、もう火の魔術による再生阻害も意味を成さなくなっているだろう。
であれば一度に全ての首を叩き落とし、完全にヤマタノオロチを討伐するしかない。
「オールエレメント・エンチャント。
回れ」
八つの魔剣が全てのレルゲンが使える全ての属性を纏いながら回転を始める。
確実に一撃一殺の力を持った攻撃がヤマタノオロチの攻撃をいなし、弾き、そして狩り取るために向かっていく。
一本、また一本と魔剣が砕けながらもヤマタノオロチの首を落としていく。
突き刺さったままの魔剣の破片が傷口に残っていた。
合計半分の魔剣を砕いた代価として首を同じだけ落としていき、残り五本。
既に斬られた首が再生を始めようと傷口がボコボコと泡立ち始めている。
時間との勝負。
黒龍と天叢雲剣以外の魔剣を犠牲にし、残り三本となった所で、首の泡立ちが止まり伸びようとしている。
「爆ぜろ」
砕けた破片に魔力を遠隔で通し、一気に耐えられない程の魔力を注ぎ込んで爆発させる。
轟音と共に傷口が再度吹き飛ばれて再び再生しようと抵抗を見せたが、傷口が派手に吹き飛んだために再生までに時間がかかる。
「次はお前達の番だ。頼んだぞ」
レルゲンが黒龍の剣からも手を離し、エンチャントをかけた上で高速回転させる。
「ハッ! お前は既に丸腰!
だからもうその二つの剣を使っても我は討てんぞ!」
「そうかもな!」
二本の剣が残り二つの首を落として戻って来る。
硬すぎるヤマタノオロチの首を無理な力で落とした代償に、どちらの剣にもヒビが入っている。
「残念だったな!
我が一つの首になった時、今までで一番の強度を持つようになる。そのボロボロになった剣では斬れぬぞ!」
「あぁ、斬れないだろうな。
だから天叢雲剣を駄目にする。すまない。
捻れて回れ」
天叢雲剣を螺旋剣にしてドリルのように回転させ、貫通力を上げていく。
無理矢理捻じられた天叢雲剣はギリ……ギリと悲鳴を上げながら形を変えていきレルゲンの命令を待っている。
「貫け」
全ての属性が付与された螺旋剣は青紫色の光を放ちながらヤマタノオロチの首へ風穴を開けた。
「オオオオオオオオオオオオオォォォォォォ!!!!」
喉が爆発するくらいの大声量でヤマタノオロチへ向かう。
(大丈夫だ、残る魔剣は黒い一本のみ。
貫通されたのは予想外だが十分に受け切れる!)
その時、離帝は見ていた。
手に何も持っていなかったレルゲンの手に一本のオレンジ色の光を強く発色する心の剣を。
半透明だった光はレルゲンの声に応えるように、強く発光して最後の首を落とし切った。
斬られた刹那、ヤマタノオロチは悔しそうな顔を見せて最後の言葉を放った。
「そう……か。お前には出来ないと思っていたが、遂にそこまで高みに登っていたとは」
「心剣。ここまで仲間が繋いでくれたんだ。
やったことのないことだって出来るようになるさ」
「我の見立てが甘かったか……だが次は」
「お前が何度出てきたって止めを俺が刺してやる。
もう満足に復活できると思うな」




