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【10万pv完結感謝】念動魔術の魔剣使い -大切な人を護り続けたら、いつの間にか世界を救う旅になりました-  作者: 雪白ましろ
第六部 妖魔大戦編

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35話 因果の剣

「双方待たれよ!」


声に圧が乗り、人型となったヤマタノオロチとレルゲンの戦いが空中で止まる。


「私は離帝、ヤマタノオロチよ。

大体帝家に伝わる汚点よ。

私は人から姿を変えたお主を帝家として許すことを決めた。

だから矛を納めよ! これは勅命である!」


「何を言い出すかと思えば、これは私の戦いだ。かつて我を九つの頭を持つ蛇に変えた過去のお前達を許す訳がないだろう」


「では、私の命と引き換えにこの場を納めてはくれまいか!」


この時ヤマタノオロチがピクッと反応する。

不敵に口角のみが吊り上がり、レルゲンが瞬きをすると、すぐに元の表情に戻っていた。


「いいだろう。ではここで自害してみせよ」


離帝は懐から介錯用の小刀を取り出し、自らの首と腹を掻き切ろうとしたが、レルゲンが念動魔術で空中に固定して止める。


「貴方がどんなに過去を清算しようとした所でコイツは止まらない!

そんな交換条件はあってないようなものだ。

命を無駄にするな」


「なんだと!

おい、これは約束だ!

弁えているだろうなヤマタノオロチ!」


再び今度は笑いを堪えきれないと漏れ出る程に、表情を豊かに答える。


「勿論だ」


「馬鹿!

本当にやるんなら呪いの契約でも結ぶんだな!

お互いの命を対価にしなければ、そんな約束意味を持たないぞ」


「馬鹿とはなんだ無礼者め!」


会話がごちゃごちゃして来たことに憤りを見せ始めるヤマタノオロチは、離帝がタダで死んでくれるなら喜んでこの提案を受けるだろう。


そして離帝が自害した後にその亡骸をなぶるように、ぞんざいに扱うのに決まっている。


だが、呪いの契約も知らず、ただの口約束では意味を持たない。


そんな初歩的なことすら分からない、知らないのは、この瓜二つの見た目の顔をしている自身の分身を信じているのか、それとも……


「で、死ぬのか? 死なぬのか?

さっさと選べ」


「この刀が動かぬのだ!

ええいレルゲン! 余計なことを!」


レルゲンは離帝の周りにある空気を固定させ、呼吸を数秒間塞ぐ。

息が続かなくなった離帝はすぐに気を失った。


「なんだ? お前が殺したのか?」


「寝てもらっただけだ。

だが、お前があの子供の一族から生まれ落ちた元は人間であること、恨みを持っていることはわかった。


だから、お前の気が晴れるまで幾らでも付き合ってやる」


「既に魔力の大部分を消費したお前がか?

笑わせる。

後数回の打ち合いをすれば、お前は間違いなく魔力切れを起こす。


我はその時をじっと待てばいいだけよ」


「どうかな? 試してみるか」


「いいだろう。すぐに詰んでやる」


再び両者がぶつかり合う。

先に動いたのはレルゲン。全ての浮遊剣にエンチャントを掛け、先程とは比べものにならないほど強化された魔剣を射出する。


だが、この威力の差を感じ取ったヤマタノオロチもまた、髪の毛を数本引き抜いて片手剣を創造し全て迎撃してみせた。


「浅知恵よの。

そんなものでどうにか出来ると思うたか?」


「あぁ、思ってないさ。だからこうしてお前の持っている剣と似ているもので戦ってやる」


「それは、我の一部だった剣か」


「そうだ。これならお前自身を斬れるんじゃないか?」


「例え斬れるようなったとて、届くはずがない」


「いや、十分だ。今受けた右手を見てみろ」


「……っ!」


黒龍の剣でも人型になってからは一切傷がつけられなかったのに対し、天叢雲剣に切り替えてからは無数の切り傷ができている。


過去の巨悪から生まれた剣で現代のヤマタノオロチに傷を入れるのは、因果を巡る戦法として機能し始めていた。

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