34話 強制送還と見知った顔
分身二体を片付けてヤマタノオロチと再び対峙する。
言葉は通じるだろうが未だに対話するつもりはないようで、ただレルゲンを睨みつける。
「一度地上に降りてもらおうか」
黒龍の剣に魔力を込め、スカイツリーを切断しようと引き絞るように構えると、ヤマタノオロチはゆっくりと地上へ滑るように降りていく。
(やはり言葉は理解しているな)
降りたヤマタノオロチを追いかける前に、退避先としてまた登るかもしれないと考えて黒龍の一撃を放ちスカイツリーをへし折る。
「スカイツリーが落ちる。退避してくれ!」
レルゲンの一声で地上の仲間が反対側へと逃げ、巨大な地鳴りと共にスカイツリーが根本から落ちる。
残り四本の頭は地上に降りてから、集まった魔物にいきなり齧り付き補給を図ろうとしていた。
(降りたのはこのためか)
すぐにヤマタノオロチへと向かい叩きつけるように黒龍の一撃を真上から放つが、魔力障壁のようなバリアを張って防がれる。
「魔物を食って、頭数も減って魔力運用を変えたな」
ヤマタノオロチは降りてきたレルゲンを気にすることなく、下にいる魔物を貪るように食べていた。
黒龍の一撃がダメなら、一閃攻撃でバリアごと貫通させようと念動魔術で伸びた刀身を圧縮して一気に解放する。
筆で一文字を書くように放たれた一撃は、もう一度放たれたバリアを易々と斬り裂いてもう一本の頭を落とした。
残り三本。ブルーフレイム・アローズで切断面を焼いて塞ぎ再生を阻害する。
順調だ。要所でイレギュラーはありつつも対応ができている。このまま行けば討伐は問題なく進むはずだ。
だが、ここでヤマタノオロチが再び妙な光を放ち始め、姿を変えていく。
人と同じ大きさと形にまで縮まった姿は、魔力の高い人そのものだった。
「よくここまで我を追い詰めた。人間達よ。
だが、ここからが本領だ」
「人になってから話すのか」
「自らの国へ帰るといい。アビス・ゲート」
レルゲン以外の仲間が次々と黒い渦の中へ吸い込まれていく。
「……っ!!」
だが、ただでは吸い込まれんと各々の武装をレルゲンへと投げつけて元の世界へと強制送還されてしまう。
「案ずるな。お前の仲間を元の世界に帰しただけよ。そこにいるこちらの世界の女以外はな。
これで余計な邪魔は入らん。
最後の生存競争を始めようではないか」
元々レルゲンが持っていた五本の魔剣に、仲間が最後の抵抗を見せて託した四本の剣。
合計九本の剣が浮遊剣となり帯同する。
そこからの戦いは苛烈を極めた。
お互いに空中を飛びながら少年の姿となったヤマタノオロチの攻撃に召子とレルゲンが応戦する。
お互いに魔力を全開にし合う攻防は、ヤマタノオロチを驚かせた。
だが、その周りで何とか力になろうと動いていた召子を邪魔に思い、一瞬の隙に足蹴りで吹き飛ばす。
「がはッ……!」
「そこで寝ておれ、この世界の勇者よ。
それにレルゲンと言ったか?
残り三本になった事で気でも抜けたか?
動きのキレが悪くなってきているぞ」
「生憎こっちはお前とは違う人間なんでね!」
「ふむ、それもそうか。
ではそろそろ死んでもらおう。
世界の異分子たるお主はここで散ってもらった方が世界のためよ」
肩で大きく息をするレルゲンとは反対に、このヤマタノオロチが姿を変えた少年はどこか余裕を感じる。
(この顔、どこかで……!)
段々と頭の理解が追いついてきたが、それもまた体力に余力があった時の話。
落ちて来た自身の機動力をカバーするために、帯同している八本の浮遊剣を一斉に射出し、そして防御に回して拮抗状態を辛くも保っていた。
残る全魔力行使の回数も、この戦いのレベルを維持し続けるなら数回が限度だろう。
レルゲンが額に汗を滲ませながら戦っている最中に、まだ年端も行かぬ少年がレルゲン達の戦いに待ったの声をかけた。




