32話 神に愛されるということ
(さて、これからが本番だな)
全力で魔力を消費した分、すぐにフルポーションを各自飲み込んで回復する。
セカンドアタックを始めようと身体に力を入れた瞬間、ヤマタノオロチが上空へと壁を這いずり回りながら上昇していく。
「デカさで分かりづらいが、相当な機動力だ!
俺達も行くぞ」
全員で追いかけると、ヤマタノオロチは大空間の天蓋を突き抜けて東京スカイツリー目掛けて登っていく。
絡みつくようにスカイツリーを登っていき、頂上まで登り切った後、残る五本の頭から大音量の超音波を発する。
人間には聞こえないが、魔物には伝わる声。
なぜこんな事をしたのか、答えはすぐにセレスティアが気づいた。
「大量の魔物がここへ押し寄せて来ます!
用心して下さい!
間違いなくヤマタノオロチが呼び寄せています」
「編成を崩す! もう他国もヤマタノオロチが出現した事に気づいているはずだ。
一度魔物の……! っ!!」
指示を出している最中にヤマタノオロチがレルゲン目掛けて空気の塊を発射して牽制してくる。
頭はお前だな。
と言わんばかりの風魔術による牽制は、マークスとの戦いから常に矢避けの念動魔術を発動していないレルゲンの身体を間一髪で掠めていく。
すぐさま矢避けの念動魔術を発動し、再びスカイツリーに巻きついているヤマタノオロチを睨む。
「どうすんだ大将?」
「セレス、下の指揮を頼めるか?」
「ええ、問題ありません」
「よし。セレス、召子、レイノール、メアリーは下の魔物を頼みたい!
マリー、ミカエラ、クラリスはヤマタノオロチと!」
「「了解!」」
地上の魔物制圧とヤマタノオロチとの対峙にメンバーを分けて、今度こそ戦いが再開されようとしていた。
先手を取ったのはヤマタノオロチ。
残る五本の頭からそれぞれ違う属性の魔術の光が口元から漏れ出ている。
風、火、水、雷、そして闇。
どれもまともに受ければ致命傷となり得るが、レルゲンは残った三人に矢避けの念動魔術をかけ直し、その名を呼ぶ。
「ミカエラ!」
はっとしたミカエラがすぐに意図を汲み取って、ヤマタノオロチが発射したと同時に口を揃えた。
「「戻れ!!」」
放たれた技は二人の強い心念と念動魔術で弧を描くように軌道を曲げていき、発射した口へと勢いよく戻って着弾する。
自らの攻撃をその身に受けたヤマタノオロチの口元から、黒煙が吹いている。
「行くぞ!」
四人が飛び出すように空中を進む。
遠距離がダメなら直接攻撃はどうだと言わんばかりに、五本の頭を使った連続の噛み付き攻撃はまだ空中機動制御に慣れたばかりのマリーがついていけなかった。
神剣で受け切るが、それでも精一杯。
「重いわね……!!」
何とか後退りながら攻撃を受けきるが、それでも手や腕に衝撃による無数の傷が付いていく。
(このままじゃ私が足を引っ張ってしまう!
私の長所は、加護に愛されていること。
でもディオス様の力は封じられている。なら!)
ヤマタノオロチに追い詰められながらも意識を集中する。
「マリー!」
レルゲンがすぐにカバーに飛んでいくが、このままでは食い殺されてしまう。
更にいるかも分からないこの世界の神へ言葉を投げかける。
(この世界の神様!
私はこの魔神を止めたい……!
だから、力を貸して!)
マリーの周囲に青白い光が集まっていく。
いつの間にかセルフィラに破壊された宝石の位置に、ピッタリと収まる新たな宝石が嵌め込まれていた。
神剣の刀身が呼応するようにグググっと伸びる。また、失われていた加護である絶対切断の加護が、再び戻って来る。
「ハアァァアアア!!!」
ヤマタノオロチの頭を縦に両断し、カバーに入って来た夫の名を呼ぶ。
「レルゲン!」
「ブルーフレイム・アローズ!」
真っ二つに裂けたヤマタノオロチの頭を焼いて再生を阻害させる。
「マリー、無事か? それに今のは」
「やっぱり私、神様に愛されてるみたい」
レルゲンは神剣を見て不敵に微笑み、再び二人でヤマタノオロチを見据える。
残る頭は四本。




