30話 開戦前
ミコトと一度会うために地下大空間まで降りたが、会うことは叶わずに拠点へと戻る。
レルゲン達が戻って来てから事態が動く。
魔物が少なくなっている。
それだけではなく、五・六段階目の魔物が魔力検知機に引っ掛からなくなっている。
この変化に喜びの声が聞こえてくる中、レルゲン達の表情は暗かった。
強い魔物はそれだけで地脈や大気中に漂う魔力が濃いから現れるのだ。
つまり、強い魔物があまり発生しなくなっているというのは、それだけヤマタノオロチが地脈のエネルギーを限界近くまで吸い上げているという事に他ならない。
やはり早急にヤマタノオロチを全員の心念で叩き起こす必要があると結論づけ、全員がフル武装で拠点の入り口まで集まる。
宗一郎は召子を強く抱き締めて声を贈る。
「また危ない所に行くんだな」
「でも帰ってくるよ」
「ああ、信じて待ってるよ」
召子がレルゲン達の元へと走って行く。
その逞しくなった背中をただじっと見つめる宗一郎は、本当にいるかもしれない神へと娘の無事を祈るのであった。
地下大空間へと再び降りると、そこは魔物の群れが溢れかえっていた。
「魔力検知機で補足出来なかったか、それとも俺達が本腰入れて倒しに来たのを察知したのかはわからないが、このまま通らせてはくれないようだな」
全員が戦闘体制に入るが、レルゲンが手で制す。
「これだけの量、全員で戦わないと無理だわ!」
マリーが叫ぶように声を荒げたが、レルゲンは冷静に思考を巡らせていた。
「逆に考えればヤマタノオロチが俺達を警戒してここで足止めをしているとも考えられる。
だからここは、俺一人で片付ける」
レルゲンが持っている剣を全て浮遊剣にし、魔力を込めていく。
「ブルーフレイム・エンチャント」
青い炎が全ての浮遊剣に纏われ、そしてゆっくりと回転を始める。
高速回転を始めた浮遊剣は、天叢雲剣を筆頭に、魔物を次々と魔石へと還していく。
「素晴らしい……」
クラリスが思わず声を漏らす
念動魔術の魔力制度だけでなく、一本一本の剣に込められた心念の偏りが一切ない。
澱みない心念の融合に、心念の師匠として色々と手解きをした相手が、今まさに自分の手を離れ花を咲かせようとしている。
教えることはきっともう無い。
次々と相手の急所と思われる場所へと剣が吸い込まれるように剣が独自に軌道を変えて切り刻んでいく。
およそ十分間、戦いではなく排除に近い掃討戦が行われてヤマタノオロチがまだ眠っている東京スカイツリーの地下空間へと向かう。
暗い道をサンライトで照らしながら暫く歩いていると、薄く透けているミコトが待ち構えていた。
「来てくれたんだね」
「何があった?」
「私はこの地脈の管理をしていたけど、ヤマタノオロチが貴方を察知して魔力の吸収量を上げている。明日にはもうチャージが終わってしまっていると思う。
だから今倒して。この世界に再び戦火が引き起こされないように」




