29話 焦燥
日本国対妖魔の東京拠点に到着したレルゲン達は、早速ヤマタノオロチ討伐に向けて話し合いが設けられ、席に付いていた。
「では僭越ながら私、セレスティアが議長を務めさせて頂きます。
ヤマタノオロチですが、能力は伝承から読み取ることは出来なかった。
九本の頭を持ち、体長は近くに行けないため正確には分かりませんが、私達の世界で戦った魔物工場よりも遥かに大きいとだけ。
心念に反応し、未だに地脈から魔力を少しずつ吸い上げながら力を溜めており、約一ヵ月の後にフルパワーになる。
ミコトという謎の少女からの情報ですが、その一ヵ月という見立ては正しいのでしょうか?」
これにレルゲンが答える。
「恐らくという域はでないが、マリーやセレス達の位置を地脈から正確に読み取っていた。
地脈について詳しいことから真実だと俺は思う」
「分かりました。ただ、未だに分からないことが多い方ですから、過信するのは危険とだけ心に留めておいて下さい」
ここで離帝が補足するように説明する。
「ミコトの正体についてだが、恐らく地脈からの使者だろう」
周りの仲間が疑問の表情を浮かべていると、離帝は少し笑って説明を続ける。
「彼女は私の代より遥か昔から存在する。言ってしまえば地脈の魔力を食い荒らすヤマタノオロチに対する免疫反応のようなものだ。
大昔にも記録には無いが、突然謎の少女であるミコトと出会った勇者がヤマタノオロチの弱点を教えてもらい、そして死闘の後に討伐したとある。
折角役者が全て揃ってんだ。
もう一度ミコトに会いに行けば、何か教えてもらえるのではないかな?」
「では会議が終わり次第、そのミコトと名乗る少女に会いに行ってみましょう。他に何か無ければ、早速ミコトの下へ行ってみようと思いますが」
セレスティアが早めに切り上げようとしたところ、アンツヴェルトが手を上げて待ったをかける。
「皆はヒュドラというものに聞き覚えはあるだろうか?」
全員が口をつぐんで無いと答える。
アンツヴェルトは満足そうに頷き、尚も続けた。
「これは別の国。日本では無い場所での伝承だが、九つの頭を持った蛇の神にも等しい力を持つと言われた話があって、その蛇は九つの頭を全て切断しない限り永遠と再生し続けると書いてある。
九つの頭を持った蛇。
どうだい? かなり似ていると思わないか?」
「確かに、偶然とは思えないほど外見が似ているな」
「うむ。それでこのヒュドラを倒した時は切断した首を持っていた火で炙って回復するのを阻止し、ついには倒したという。
恐らくだが異国に出現した別種のヤマタノオロチと考えても良いほどに特徴が一致している。
試してみてもいいと私は思うよ」
「火で炙るなら俺がウルカと一緒に火の上位魔術で焼ける。問題ないだろう」
「では今回の議題はこれにて終了とし、一度ミコトという少女に会いに行きましょうか」
会議を終えて地下の巨大空間に降り立つが、ミコトと会えることはなかった。
レルゲンが呼びかけても同じ、一時間程粘ったが結果は変わらなかった。
(どうして出てこないんだ?)
今まではレルゲンが来た同時に現れていたというのに。
地脈の免疫反応で来るなら、このタイミングは間違いなくいるはずだが……
(まさか……!)
「みんな、すぐにヤマタノオロチの場所へ向かう! ついて来てくれ!」
駆け出したレルゲンへついて行くと、そこには不気味なトグロを巻いているヤマタノオロチが眠っていた。
だが、明らかに前より魔力の力強さが増していたヤマタノオロチの影響か、地脈から感じる魔力が少し小さくなっているようにも思える。
ミコトの見立てよりも早いヤマタノオロチの完全復活が近いのかもしれないと、レルゲンはこの時思った。




