28話 レルゲンと離帝
戦闘が終わり初めて見た顔が現れて、周りに誰だ? という表情をする。
「離帝? 危険を冒してまでやってきたということはそれ相応の方だとは思うが、貴方は一体何者だ?」
「私は日本国の貴族と言えば分かるかな。
君達の言うところの魔物について、秘密裏に代々継承して来た一族の末裔さ。
だからヤマタノオロチについてもある程度は知っている。どうだい?
話しを聞いてみたくなっただろう?」
「なるほど。では貴方は日本の書物にはまだない情報を握っているというわけか」
「そうだとも。しかし今のヤマタノオロチの覚醒期間は私にも分からなくてね。
それを抜いた情報を伝えに来たのさ」
「それなら問題ない。ミコトという少女に教えてもらった。おおよそ一ヶ月。
それがフルパワーになって完全に復活するまでの期間らしい」
「ミコト?
君はミコトに会ったのか。
なるほど。では君達はもう既にヤマタノオロチを一度目にしているのかな。
であれば話しは早い。
東京に戻りながら伝えよう」
それから崩壊した熱田神宮を後にして東京に飛んで戻るまでの間、レルゲンは離帝からヤマタノオロチについて話しを聞いた。
ヤマタノオロチはまだこの世界に地脈が活発に流れて大気に魔力が溢れていた時、魔物が陸海空から流れ込むように現れた神話の時代。
神の遣いとして現れた勇者は魑魅魍魎が跋扈していた世の中を平定しようと一本の魔剣を与えられて地上に降りて来た。
勇者は魔物を次々に倒していき、徐々に人の世に平和が戻りつつあった。
魔物は人々が想像した産物が魔力によってイメージを形にしたもので、数を減らすと同時に魔物の話しのスケールは段々と大きくなっていった。
遂にはヤマタノオロチという神のレベルまで信仰が始まるレベルにまで押し上げられていく。
幸か不幸か、勇者が倒した魔物が多くなり、世に解き放たれる魔物が強力になると同時に数を減らしていった。
世界は学習し、バランスを取ったのだ。
物量で押しつぶすのではなく、勇者が倒すまでに時間が掛かるほど強い魔物を点在させる事で、一人だけの力で倒せる限界点を見極めて。
神は魔剣を無から生成した事で力を使い果たして疲弊していた。
その為新しい勇者候補がいても魔物に対抗するための魔剣を作る事は叶わず、その勇者も人の子であったために寿命を迎えて死んでいく。
神と世界との戦いは、世界側が優勢で進んでいったが、ここで気を大きくした世界は遂に一番強いとされる魔物を一体生み出した。
それがヤマタノオロチである。
この魔物、いや魔神を作り出すことで世界もまたリソースを使い果たし、地脈のエネルギーが枯渇状態になった。
だが、これを逆にチャンスと考えた勇者は魔剣を持ってヤマタノオロチを打倒し、その尾からレルゲンの持つ天叢雲剣を取り出して、当時の帝に献上されたと。
つまり、レルゲンが今持っているのは遥か昔に出現したヤマタノオロチの一部。
伝承とはかなり違った真実にアンツヴェルトは少し考えるような表情を下に向けた。
「話しは大体理解した。
つまり、今また現れたのは、世界が疲弊を回復して再び地脈の力を使ってヤマタノオロチを復活させようとしているということだな。
だが、ヤマタノオロチを作ったというのに再び地脈が疲弊していないのはなぜだ?」
「恐らくだが、前回地脈のエネルギーを使い果たしたことで世界が学習したんだろう。
ヤマタノオロチを最初から全快で出現させるのではなく、形上復活させて少しずつ地脈が枯渇しない程度に吸い上げながら全快へ向かわせると。
だから魔物はヤマタノオロチ以外も出現数を減らさずにこうして跋扈しているのだろうね」
「一度疲弊した地脈は自然と元に戻るのか?」
「いや、確かに時間は必要だが、今のこの状態へ持ってくるために何らかの活を入れた人物がいるはずだ」
「なるほど、それがマークスだったわけか」
「ああ、あの銃を使った殺人鬼だろう。
全く余計なことをしてくれたものだ」
「おおよそは分かった。
ただ、召子から度々聞いているから知っているが、今のこの世界には情報伝達機能が凄まじい。
何千キロも離れた他国にこんなのが知られたら、間違いなく日本を焦土に変えたとしてもヤマタノオロチを打ち取りにくるぞ」
「その通りだ。
だからこそ君達九人の勇者に他国へ知られる前に討ち取って欲しい。ヤマタノオロチの場所はやはり……」
「地脈の集合地点である青い塔。
東京スカイツリーだ」
「やはりか、あれば二度と地脈が溢れないように要石の役割の元建てられたのだが、ある意味場所を教えてしまったか……」
離帝はバツの悪そうな顔をしながらも、レルゲン達へ正直に助けを求めた。
「本来であれば異世界から来た来訪者ではなく、我ら日本の人間に頼るべき所なのだが、世界側がイレギュラーを連発していることから私もそれ相応の対応しなければならない。
だからこそ願う。
私達日本を、どうかあらゆる外敵から護って欲しい」
「ああ、そのためにここまで来たんだ。
最後までヤマタノオロチと戦わせてもらうよ」
「うむ、頼もしい。
では、東京に着いたらまた詳しく話し合おうではないか」
そうして離帝を含めた仲間が集まり、レルゲン達は再び東京に向けて空を飛んでいく。




