18話 親子
レルゲンとアンツヴェルトが謎の少女、ミコトと別れ地下の大空間の存在を報告すると、召子と一緒にいた宗一郎の表情が曇る。
「レルゲン君が示した地図の場所は、数ヶ月前に何度か調査に出向いている。
その時はそんな地下へと続く道は無かったはずだが……
他ならぬ君の言葉だ、それは真実なのだろう。
だが、そこまで大規模な地下坑道を掘る予定も実績も日本国対妖魔・自衛隊には存在しない。
一度私達からも部隊を派遣して」
「いや、そこには宗一郎さん達が遭遇した魔物。
アビス・アイビスと同等の魔物が三体いた。
何とか倒せましたが、何人も護りながら戦えるレベルを超えています。
すみませんが部隊派遣は見送って頂けると助かります」
「そうか、なら部隊の派遣ではなくカメラを持って映像や画像を記録して来て貰えるだろうか」
引き出しから小型の、手の平サイズの機械を召子に手渡す。
「これがこちらの世界の魔水晶と同じものですか」
「おや、似た物がそちらの世界にもあるのか。
操作方法は少し複雑でね。バッテリー、電気で動く代物なんだが。
いざ説明するとなると難しいな」
「任せて、私がどれくらい強くなったかバッチリ撮ってくるから!」
「いや、カメラは誰が持つんだ?」
ここでレルゲンのポケットからウルカが出て宗一郎の周りをフワフワ飛んで回る。
「それなら私がやるよ。召子、やり方教えてくれる?」
「ま、魔物!!」
宗一郎は腰を抜かしてハンドガンを抜こうとしたが、今は保管庫にあることからペタペタとホルスターの位置を触るのみで銃は手元に無い。
レルゲンは少し慌てて
「ウルカ……! 勝手に出てくるな」
「だってさっきの戦いでもレル君呼んでくれないんだもん。もう暇で暇で」
「それは理由があったから。
すみません宗一郎さん。こちらは俺と契約している精霊になります。魔物ではありません」
「せい……れい?」
「お父さん。実はね。私も魔物を仲間にしているの」
「は? 今なんて?」
「フェン君、アビィちゃん。出ておいで」
召子の髪の中から小さな動くマスコットが二体出てくる。まるで動くぬいぐるみのようだと宗一郎は思ったが、間違いなく生きている。
そして二体の内の一体は、忘れもしないあの魔物とそっくりだった。
「召子、お前それ」
「そう。アビィちゃんはアビス・アイビスだよ。
魔力は二人とも抑えてもらってるけど」
二匹が可愛らしい声で挨拶すると、宗一郎はまた腰を抜かしてしばらくの間立つことが出来なかった。
落ち着いてから、召子は隠していた事を話し始め、宗一郎はそれを真剣に聞いていた。
「理由は分かった。勇者?の力で聖剣を授かってから召喚術で魔物と共に戦うのが召子のスタイルだと。
そんな力を急に与えられてよく力に溺れなかったな」
「レルゲンさんみたいに周りがすごく強かったから、寧ろもっと強くならなきゃって今でも思ってるよ」
「そうか……いなくなる前から随分と雰囲気が変わったと思ったらそういうことか。召子なりに成長したんだな」
「まあね? これでもハクロウ先生に貰ってる日課は毎日やってるんだから!」
宗一郎は知らない名前が出てきたのは気にせず力だけじゃなく、精神が成長して帰って来た召子に寂しさと頼もしさを同時に感じていた。
「よし! じゃあカメラはお願いするとして、準備が出来たらもう一度調査をお願いしたい」
「分かりました。アンツヴェルトはどうする?
また一緒にくるか?」
「勿論行くさ。か弱い幼女一人護りながら戦うくらい、難しくないだろう? 騎士様?」
「なんか含みを感じるが……わかった。
宗一郎さん。俺達三人でまた調査に行って来ます。
今から向かっても夜になるまでには戻りますので」
「分かった。うちの娘をよろしく頼む」
宗一郎の言葉に不満を感じた召子は少し頬を膨らませながら
「もう! いい加減子供扱いはやめてよね!
私だって強くなったんだから!」
「それとこれとは別だ。親からしたらお前はいつになっても子供なんだよ」
「何それウザ。もう知らない!
行きましょうレルゲンさん。アンツちゃん。
過保護なお父さんをぎゃふんと言わせる報告してやるんだから」
聖剣と二体の使い魔を連れて拠点の出口へと向かう召子について行くように、二人は宗一郎に挨拶を済ませて後を追う。




