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【11万pv完結感謝】念動魔術の魔剣使い -大切な人を護り続けたら、いつの間にか世界を救う旅になりました-  作者: 雪白ましろ
第六部 妖魔大戦編

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8話 ミコト

ベヒモスが目の機能を失い少し大人しくなると思ったが、寧ろその逆。

けたたましく咆哮を上げながらあらぬ場所に突進をしたり、光線を放ったりと怒り狂っている。


これでは後ろに控えているアンツヴェルトにいつ被害が及ぶかも分からない。


脅威度で見たらどちらもほぼ同じ。

戦況が悪くなる一方でこれ以上手の内を隠しながら戦うのはアンツヴェルトに危険が及ぶ。


レルゲンはここで見切りをつけた。

魔剣の性能を解禁することに決め、氷華を手元に戻して炎剣で全身甲冑の人型魔物を抑える。


黒龍の剣に収められている魔力はもう体内に戻せない。圧縮していた魔力を解放するように、空中で一閃攻撃をアシュラ・ビーストに放った。


漆黒の一閃攻撃が襲いかかり真っ直ぐ捉えたが、ジャンプして回避の体制を作る。


だが、後ろ脚の踏ん張りが効いておらず、飛び上がる高度が足りずに増幅鉱石の塊がある尻尾の付け根に命中する。


音もなく切断されたアシュラ・ビーストの尻尾は後方に吹き飛ばされ、確実に戦力が削がれていく。


一瞬の安堵と共にすぐに気を引き締め直す。

目を見開いて魔力感知を同時に行いながら、アシュラ・ビーストから目を切らずに着地するが、レルゲンが着地する瞬間を待っていた。


アシュラ・ビーストは核撃のチャージを既に終え、高密度の太く紅い光線を放つ。


魔力を込めた高速移動や、念動魔術による浮遊では間に合わない。


空気を焼きながら突き進んでくる核撃を氷華を地面に突き刺し、極低温の氷で上空へ続くレールを敷いて軌道を逸らすと


核撃は大穴から上空へ伸びて行き、暫く突き進んでからやがて消えた。


アンツヴェルトは核撃が消えていく様子を見て「おぉ……」と声を漏らしたが、レルゲンには聞こえていない。


すぐさまレルゲンは氷華に魔力を込めて剣を地面に突き立て、アンツヴェルトと魔物達の間に分厚い氷の壁を張って、安全の確保と未知の視線からの目眩しを兼ねる。


仮に魔物達が核撃を氷の壁に撃ち込んでも数発くらいなら耐えられるだろう。


もう一撃だけアシュラ・ビーストの後ろ脚に強い攻撃を当てれば転倒すると予想し、次の組み立てを考えていた。


だが、それはレルゲンが動くよりも速く、別の要因でアシュラ・ビーストが横に倒れ込む。


一度守ってもらった筈のベヒモスは、後ろ向きになっているアシュラ・ビースト諸共にレルゲンへと核撃を放ってきたのだ。


虚を突かれたアシュラ・ビーストは核撃を負傷している後ろ脚に直撃してしまい、大ダメージを受けて地面に転がり藻がいた。


一瞬の出遅れがあったとはいえ、転倒したアシュラ・ビーストの空いた弱点の腹目掛けて、ルミナス・ブロウを発射。


核撃にも似た魔力の奔流は、呆気なく巨大な魔石に変えてアシュラ・ビーストは沈黙した。


残すところ二体となったが、ここで全身甲冑の人型魔物の動きが完全に停止。

魔力も一切感じられなくなり、バラバラと甲冑が地面に転がっていく。


原因は分からないが、とにかく残りは目を潰したベヒモスのみ。勝敗は既に決していた。


ベヒモスを魔石に還して氷の壁を取り払い、アンツヴェルトの元へ歩いていく。


「流石だね副団長殿。六段階目の魔物三体では朝飯前か」


「いや、色々あったからな。結構キツかったぞ。

そろそろ姿を見せたらどうだ? そこの見物人よ」


「あれ? あれれ?? どうして分かっちゃったのかな? 貴方、私のこの隠れ蓑に気づくなんて!」


建物の上で、何やらベールのような物を脱いで意外そうな返答をしたのは、黒髪ショートカットの少女だった。


アンツヴェルトは建物の上、自分の近くに第三者が潜んでいたことに驚きと共に苛立ちの表情を浮かべていたが、


それよりもまずこの得体の知れない人物の情報を吸い上げようと、考えを切り替えて言葉を掛ける。


「君の目的は敵場視察ってところかな?」


「んー? イヤイヤ。この世界にやってきた貴方達。特にそこの剣を沢山持っている男の人に興味があってここで待っていたの!


一番魔力を持っている貴方がきっとリーダーなんでしょ? だからどれくらい強いのか見てみたくなって!」


レルゲンは少し迷った。

敵対心は無いと今の会話から分かったが、まだこの少女を信じて良いのか、本当にただ観察するだけが目的なのか分からないでいた。


「君は何者だ? 何の目的があって俺を見ていた」


「私? 私の名前は……そうだなぁ、じゃあミコト! 目的はまだ秘密だよ」


イタズラっぽくウインクして人差し指を立てるあざとい仕草は、こんな人気の無い所で違和感しかなかった。


ミコトと名乗った黒髪の少女は、違和感を気にする事なくサンライトの光が届かない暗闇に上機嫌で消えていった。


(だからまだ死なないでね。レルゲン君)


胸に秘められたミコトの気持ちは、レルゲンとアンツヴェルトには届かなかった。

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