6話 暗闇の地下巨大空間
「寝床まで用意してもらって助かります」
「召子から聞いたよ。そっちの世界で大変お世話になったと。これは私からの礼だと思ってくれ」
「水や食料はどうしているんですか?
見たところそれほど自然が多いとは思えませんが」
「それは地下に秘密がある。今はまだ君達に見せることはできないが、ここにいる三千人分の用意は問題なくあるから心配しなくていい」
拠点に案内されたレルゲン達は規模で言えばそこまで大きくはないが、廃墟と化していた摩天楼の群れにしては生活基盤がしっかりしていると感じていた。
召子は父親である宗一郎と夜通し会話を楽しむだろう。すぐに宗一郎から自室に案内されたレルゲンは、簡単に別れを済ませてアンツヴェルトと二人だけになる。
簡易的なベットに腰掛けるとアンツヴェルトも椅子に座り、状況の整理が始まる。
「この世界についてどう思う?」
「元々魔物とは縁のない世界だったようだし、全滅していないだけ凄いことだと私は思うよ。
この世界に魔物が溢れてからおよそ一年。
大多数の人間が恐らく食い殺されたのだろうが、ここなら君の魔力感知にも引っかからないだろうし安心だ」
「俺の感知範囲はそこまで広くないから過信はしないでくれ。
他の仲間達の行方も気になる。
烏間さんの傷も応急処置は出来たから、明日からは自由に動ける。
召子はここに護衛として残すとしても、俺達は出来るだけ探索した方がいいと思うが、お前も一緒に来るか?」
「無論だ。レイノールよりも恐らく強い君なら、近くが一番安全とも言えるさ。
それに魔物の生息場所やテリトリーなんかも知っておく必要がある。自分で地図も作りたいところだからね」
「分かった。早速明日から周辺探索をしよう。
ただ、一番高い塔付近には行かないぞ。
あそこは何か良くないものが潜んでいる。行くにしても全員が揃ってからだ」
「完全武装の君が危険を感じる程の魔物がいるのか。ふむ、非常に興味をそそられるが自重しよう」
「そうしてくれ」
次の日の朝、召子は宗一郎と朝方まで語り合っていたのかやはり起きてこない。
レルゲンがアンツヴェルトと共にテントから顔を出し、目立たない様に日の出と共に出発した。
「さて、どこから行く?」
「まずは復活した地脈付近から行こう。
戦闘になった時に私は何も出来ないから任せた」
魔力感知を広げると確かに地中深くに魔力の流れを感じる。
そしてやはり一際高くそびえる青い塔。
あそこを中心に魔力が集中しているようなイメージを掴んだ。
「やはりあの青い塔に向けて魔力が流れているな。蜘蛛の巣状に集まっているようだ」
「中継地点は?」
「ここからだと分からない。流れに逆行してどこから地脈が来ているのか探そう」
ここからはより地脈を肌で感じるために徒歩で進んでいくが、途中ポッカリと空いた大穴が出現したため歩みを止める。
「なんだ? この穴……?」
「地脈はこの下を通っているのかい?」
「ああ、間違いない。
ここの穴の先に地脈が通っている。
だが……下に魔物が多くいる反応がある。
降りて行けば即戦闘だろう。君を護れるかどうかも分からない」
「ふむ。では行こうか」
全く自らの危険に頓着のない肝の据わったこの小さな幼女は、光が奥まで全く届かない命の危険がある暗闇が怖くないのだろうかとレルゲンは思った。
だが、予想とは裏腹にアンツヴェルトは全く恐怖を表に出すのではなく、寧ろ知識欲を満たしたい気持ちで溢れており、平静を装うので実は必死だった。
レルゲンは少し呆れたような表情をしながらも、漆黒が広がる穴に視線を戻す。
「サンライト」
照明魔法を穴の下に落とすと数十メートル先に落ちて行き、尚も落下を続けている。
予想よりもずっと深い。
アンツヴェルトを連れて念動魔術で降下していくと、気温が夜のように冷えていく。
彼女が冷えないよう、そして自分が動きやすいように着ていた上着を着せる。
だいぶ大きいようで余裕があるが冷えるよりかはいいだろう。
魔力感知に引っかかった魔力は三つ。
どれも六段階目かそれ以上の強さ。
先日のアビス・アイビスのように動揺させる事が出来れば今のレルゲンの敵ではない。
縦穴の最下層まで到着すると地上よりも湿度が高く、どこかに水源のような場所があるかもしれないと予想できる。
サンライトを更に複数個出現させ、壁面に展開しようと前後左右に飛ばす。
だが、どうやらここは闘技場のように大空間になっているようでいつまで経っても壁面に到着しない。
サンライトに照らされて、三体魔物の姿が顕になる。
(ベヒモス……! アシュラ・ビーストに見たことの無い人型魔物が一体か)
知っている魔物で二体とも苦戦をした経験のある個体。魔力から人型魔物も同等の力を持っていると考えていいだろう。
手には魔剣を持っているように見える全身甲冑の人型魔物が先にレルゲン達へ走り寄ってくる。
すぐにアンツヴェルトを非難させなければ満足に戦えないと判断したレルゲンは、辺りを見回して水溜りになっている場所に、何故か人工的に建造されたであろう建物を捉えた。
「アンツヴェルト!
君はあそこの建物の影に隠れててくれ!
必要になったらすぐに護る」
「間近で見られるとは光栄だよ。
お手並み拝見させてもらおうか」




