1話 最上宗一郎
突如として異常なエネルギー派が宇宙から飛来してからというもの、大地から、海から、そして空から突如として何処からともなく湧き出るようにして現れた。
それは人類が今まで見たことのないような生態をしており、現代の銃火器が通用する物もいれば、そうでない物もいる。
銃火器が通用する妖は大きさにして熊程度くらいなもので、奴らは宇宙から降り注いで来たエネルギーと同質の力を有していた。
小型でも単純な拳銃や猟銃、麻酔銃では意味を成さず、不思議な力で保護されている印象さえ受ける。
そんな妖魔が求めるのは、東京の中心部にあるスカイツリーの地下に流れる地脈と呼ばれるエネルギーの流れの合流地点。
この地脈は宇宙から飛来したエネルギー派によって地球自体が活性化し、新たに形成された流れだ。
そこはまるで誘い込んでいるかのように強烈な誘因効果があり、力の強い巨大な妖魔が自然と縄張りを主張するようになる。
日本国対妖魔・第壱自衛隊。
東京に設けられた特殊部隊の一つである
通称、桜部隊。
十人で形成されたチームメンバーの一人である
最上宗一郎は、舗装されていないアスファルト道路を行く迷彩柄トラックの後ろに乗り、静かにただ一点を見つめていた。
「おいおい最上さんよ。
そんな辛気臭い顔してどうしたんだよ。
ここまで陰気が移るからやめてくれねぇかな?」
「バ、バカお前!誰に口効いてるか分かって言ってるのか!」
最上宗一郎を邪険に扱うように軽口を叩くのは、同じ桜部隊のメンバーである烏間。
そしてその烏間を諌めたのは上官の貝塚という男。
「すみません最上さん。今日はご令嬢の……」
「いいんだ。気を使わせて済まない。
烏間も悪かったな。今日だけは勘弁してくれ」
「へいへい。って!痛いじゃねぇか!なにすんだ貝塚さん!
「この恩知らずの馬鹿たれが!
今日は召子さんが姿を消してから一年がたった日だ!それくらい覚えとけ!」
「だからって殴ることねぇだろ……」
思いの外強く殴られた烏間はヒリヒリする頭をさすりながら、未舗装道路を進む衝撃で手持ちのアサルトライフルが落ちそうになるのを抱え直した。
(あれからもう一年か……
今お前は一体何処にいるんだ、あの馬鹿娘……)
外を眺める空は曇天の夕暮れ時。
漆黒の夜が近づいて来る。
見回りも終わり、最上が率いる桜部隊は駐屯地へと戻っていたが、急激なエネルギー計の上昇アラームが車内に鳴り響いたことにより車が急停車する。
やがて地面が地鳴りと共に隆起を始め、アスファルトを易々と突き破った影が姿を現す。
車から飛び出すように部隊メンバーが瓦礫の影に素早く隠れる。
すぐに司令部より無線が入り識別された妖魔が鼓膜を叩く。
「敵妖魔はミミズの成体。敵妖魔はミミズの成体。これより掃討戦に入る。各自、セーフティロック解除許可」
「了解。毎回この辺の地中を荒らしてるお前さんにはここで死んでもらう。撃ち方用意。
撃て」
静かな命令と共に、体長が二十メートル程あるミミズ型の妖魔に向けて一斉射撃が行われた。
激しい轟音と共に薬莢がそこら中に排出される。
弾丸が無数に着弾したミミズは嫌がるように地面へ退避しようとしたが、それも織り込み済み。
逃げる為に身を捩って穴を掘り始めた事で無防備になった身体に向かってロケット砲を発射する。
着弾と同時に瓦礫を吹き飛ばしながらミミズの身体を半分以上消し炭にし、拳くらいの妖魔石へと還ったものを回収。
緊急任務が終わったのも束の間、再び無線が入り厳戒態勢は依然として継続となった。
「巨大なエネルギーを持った鳥型妖魔が接近中。速すぎてこちらではキャッチ出来ないが、速度計からアビス・アイビスと推定。
即座に撤退を命令する」
司令部から命令が飛んで来た瞬間全員の足が車へと動いた。隊員の顔面は蒼白。
一度捕捉されれば氷の妖術が飛んでくる。
しかしこのまま司令部に到着すれば、関係のない避難民すら巻き込んだ地獄絵図と化すだろう。
撤退は必須。だがそのまま司令部には戻れない為、どこか別の所で飛来する死神をやり過ごさなくてはならない。
心臓が早鐘を打つ。腹の下を鷲掴みにされるような焦燥感が、更に隊員達の正常な思考を削り取っていた。




