49話 決意の目
「落ち着いたか?」
「すみません……もう大丈夫です」
まだ涙が収まってから間もない時に、何があったのか心配そうにする仲間達を他所に、ディオスは不確定情報を伝えた事実を謝罪した。
だが、今も召子の故郷である日本には魔物が溢れ、刻一刻と殺戮が繰り広げられている。
すぐにでもディオスに頼んで世界への扉を開いて貰いたいが、それよりもまずは召子の世界についてもっと詳しく知る必要があった。
すぐに異世界について話し合いを設ける場を作り、召子が口を開く。
「私のいた世界では主に電気や石油といったエネルギー、この世界で言う魔力の代わりになる物がありました。
ただ、このエネルギーは人間の体内からは作れず、機械を使って電気を作ったり、地中を掘って石油を採取しています。
分かりやすい例を挙げると、人間界に魔王軍が攻めて来た時に使っていた蒸気船のような物が進化した乗り物が沢山あります。
軍事力でみれば、銃の種類や数が特に発展していて、こっちの世界で言う三段階目くらいの魔物なら問題なく倒せるはずです」
「魔力無しで三段階目までは倒せるのか、凄い技術だ」
召子は頷き、それ故になぜ壊滅一歩手前まで追い詰められているのか理解が出来ないと言うが、アンツヴェルトは冷静に
「それよりも強い魔物で溢れているんだろうね」
非常にも予想される事実を、周りの空気を気にせずに言い放つ。
重い空気が流れる。
暫く俯き加減だった中で召子が再び口を開いた。
「やっぱり皆さん全員で私の世界を救って欲しい。
正直に言えば私の世界は皆さんの世界とはあまり関係ないかもしれない。
でも、それでも私は皆さんに手伝って欲しい。
私にできることならなんでもします。
一生かかってもいい。
もし来てくださるなら私は二度と元の世界に帰れなくてもいい。
だから……だから……!!
どうかお願いします。
私を、世界を……! 一緒に救って欲しいです」
「召子、みくびってもらっては困る」
「レルゲンさん……?」
「マークスは確かに世界と契約して、様々な世界を渡り歩くだけの力を得た。
俺達の世界もいつ危険に晒されるか分からないだろう。
だから保身のために行くのが正しい選択なんだと思う。でも……
ここまで頑張って来た召子を俺達は知ってる。
不安な気持ちを押し固めて、いつか帰れると信じて頑張っていた召子を知ってる。
これはもう保身の為じゃない。
君の、仲間の危機に何とかしたいと思わない奴は、この中にはいないよ」
「レルゲンさん……皆さん!
ありがとう……!本当に!」
再び泣き始める召子に、マリーが手巾で拭いてあげる姿はまるで姉妹の様にも見える。
決意は固まった。
セレスティアとマリーはダクストベリクに直談判しに行き、クラリスは魔王メアリーに話をつけに魔界へ戻った。
次期女王の二人が両方とも行く意思を示された現女王は、今度は世界渡りをする二人に気をつけるようにだけ伝え、
複雑な表情を浮かべながらも送り出すと決意する。
カリストルとのやり取りはダクストベリクとメフィストがすることになるだろう。
「俺達は近いうちに召子の世界へ行く。
あんた達はどうするんだ?」
レルゲンがレイノールとアンツヴェルトに振り返り尋ねるが、一人はもう決心がついていた。
「勿論行くぜ。じゃないとマークスの野郎に借りを返せないんでな」
「気になることは山程あるんだが、個人的に君の戦い方に興味があってね。
レルゲンが行くなら私も同行させてもらうよ」
「わかった。ディオス神、一度に送れる人数に決まりはあるだろうか?」
「百人以上になると話しは変わってくるが、十人程度なら問題はないよ」
「なら出来るだけ多いほうがいいな。ミカエラはもちろん来るだろ?」
「ええ、私はいつでも貴方のお側に」
「すぐに出発するかい?」
唯一神に声をかけられたレルゲンと召子は、決意を込められた目で
「「はい」」
同時に返事をした二人は少しだけ微笑みあった。




