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48話 究極の一

「あぁ、なんと勿体ない。

若葉が堕ちる様をずっと楽しみに待っていたというのに」


ミカエラはセリエルの姿がセルフィラに戻った驚きよりも今はただ、アラエルに集中していた。


堕天の進行が止まり、アラエルの背中を優しくポンポンと叩き、セルフィラをキツく睨みつける。


「おやおや、その目はいけませんね。

ミカエラ、こうして会うのは久しぶりですが、やはり貴女は私の妻に相応しい精神を持っているのは変わらないようだ」


「世迷言を。私を縛る契約は既に解呪させて頂きました。貴方に従う道理はありません」


「ふむ、では今も上で閉じ込められている可愛い子供達はそのままでいいと?」


「それは…」


アラエルを抱きしめる肩に自然と力が込められ、視線が氷の地面へと流れる。


「やはり甘い。そこで嘘でも知らん顔を出来ないのは美徳と言えますが、また再び契約をして首輪を嵌めさせてもらいましょうか」


無言で静かに二人の前へ遮るように歩み寄り、

力強く目の前の敵をマリーが見つめる。


「セリエル_いえ、セルフィラ。

随分とミカエラ様に執着しているようだけど、一言だけ言わせて貰うわ」


「何でしょう?」


マリーが精一杯の不快感を表情で示し、口を尖らせて今までずっと言ってやりたかったことを口にする。


「貴方、気持ち悪いのよ」


一瞬キョトンとしたセルフィラは目を見開き、額を手で覆って高らかに笑う。


「ふふふ、はは、あハハハハハ!!

いい…とても、いい!


私に面と向かって気持ち悪い!

これが笑わずにいられるか!否!


今まで私にここまで暴言を吐けた女がいたか!

イナァ!!


いいぞ、凄くいい…!

異分子のレルゲン・シュトーゲン率いる女性達は皆同じ考えなのだろうか?


だとしたらこれ程素晴らしい事はない!

全員に私の世継ぎを授かる権利を与えよう


だが最初の堕天使。君だけは遠慮させて貰うよ」


何言ってるんだコイツ…とばかりに嫌悪感は最高潮に達し、普段温厚でふわっとしている雰囲気の召子でさえ


(あいつ、早く斬ってもいいですか?)


といった表情をレルゲンにぶつけていた。


「セレス。全力バフを頼む」


「お任せを」


補助魔術から支援魔術、果ては今まで見せた事の無いオリジナルの複合バフに至るまで、かけられる魔術を全てかけ終える。


「終わったかね?」


待ってやったとわざわざ宣言する辺り、この人数差で相手取ったとしても問題なく対応出来る自信が裏付けられていた。


「随分と気前がいいじゃないか」


「私は相手が全力を出す前に倒そうだなんて、そんな小物のような考えで戦ってはいないのだよ」


「そうかい、ウルカ!」


「存分にやっちゃってレル君!

私も生みの親の種族だとしても、あれは無理!」


スゥっと息を吸い込み全身から少しずつ魔力を高め、集めた魔力を糧にして更に魔力放出量を上げていく。


「「第二段階、全魔力解放!!」」


レルゲンが全身から迸らせた青い魔力を見て、セルフィラは上品に手を叩いて賞賛を贈る。


「素晴らしい魔力量だ。

いつぞやのクラリス君が見せた時以上と言っていい」


「全力を出すまで待ってくれるんだろう?

もう少しだけ待っていろ」


「いいとも。君の全力は下界に住まう全人類の全力だ。ここから私は一歩も動かないと約束しよう。呪いの契約でも結ぶかね?」


「結構だ。それでお前がもし避けたのなら、事実としてお前は負けだからな」


「その通りだ。ゆっくり力を練るといい」


レルゲンは悪い笑みを溢し、全開に上げられた筈の魔力をドンドンと更に上げていく。


自分以上の魔力放出を見たクラリスは、驚くのと同時に惜しい気持ちになっていた。


(深二層でギリエルという天使と戦った時よりも確実に強い魔力放出。

ですが、まだまだ無駄が多い。

もっと魔力制御を極めれば貴方はもっと先に行けるはず)


際限なく上げられた魔力が遂に最大値を迎え、行き場を求めて大きく揺らめきながら、

バチバチと星の光のような煌めきが付近で明滅する。


両手を前に突き出す。

手には黒龍の剣と白銀の剣。

二人振りの剣は一本の剣に融合され、一振りの剣となりて。


噴き上げられた青い魔力と煌めく星々は、一瞬にして全身から消え去り、代わりに剣が煌々と白い光を放ち始める。


一本の剣をコーティングするように念動魔術で仮想的に薄い膜を纏わせ、中に高濃度に圧縮された魔力が注ぎ込まれていく。


吸収されてから臨界点へと至ると、小刻みに剣が生きているかのように鳴動を始め


ブレる切先を念動魔術でセルフィラの一直線上に固定し、片足を氷に突き刺すように叩きつけて腰を落とす。


「行くぞ」


低い声。しかし確かに短い言葉の中に、大量のイメージ力が詰め込まれた念動魔術を駆使し、奥の手を披露した。


「ルミナス・ブロウ」


剣先に集約された固く重い質量を感じさせる魔力の塊から、大出力の閃光がセルフィラ目掛けて大気を突き進む。


地面の氷を瞬時に蒸発させ、海を割り、巨大な波を形成しながら空気を焼いた白煙が辺りに漂う。

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