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36話 選別式初戦

「それでは第一試合を開始します。五番と十一番の天使、前へ」


クラリスの番号は十三。呼ばれた天使達が前に出てそれぞれ翼を剣の形に変形させて手に取る。


「始め!」


短い号令と共に翼同士が衝突し、発生した衝撃が全身を震わせる程の圧力を放っていたが、クラリスはまだセルフィラが声を発した上階の天覧席を見つめていた。


しばらく声からセルフィラの内部を探るように反芻して考え込んでいたが、声からは中を隠すようにカバーされているようなイメージがクラリスの頭を包み、


ついぞ自分の番号が呼ばれるまで分析することは叶わなかった。


「次の試合。八番、十三番。前へ」


自分の番号が呼ばれて前に歩いていくと、粘っこい視線を向ける天使が一人。


「俺の相手は無翼のお前か!

ハッハー!こりゃついてるぜ。

十秒で上の層に送ってやるよ。その時は粉々かもしれないけどな!」


筋骨隆々、長身のクラリスと比較しても更に二回りは大きい体躯の大柄な天使が、クラリスを見て得意気に勝ち誇る。


ここまで力を示した天使、軽薄な態度からは実力を見誤りそうになるが、短く息を整えて相手を見つめる。


自分の挑発や、他の天使達に囲まれながらも隙の見せない立ち振る舞い。


大柄な天使も十秒で、とは言ったがクラリスの立ち振る舞いを見てすぐに認識を改めた。


(こいつ、本当に一度翼を奪われたのか…?

なんだこの雰囲気は…まるで俺の事を下に見ているような圧倒的な自負を感じる)


「おい、お前クラリスと言ったか?

さっきは十秒で粉々にすると言ったが、訂正する。やはり全力でやらせて貰おう」


「そうですか」


「俺の名は聞かないのか?」


「興味ありません」


「俺の所はこれから殺す相手には自らの名を名乗るのが風習としてある。

だからお前が聞きたくなくても名乗らせて貰う!

俺の名は…!」


「始めて下さい」


「おい審判、まだ話の途中だろ。

お前もすぐに飛び掛かってくるんじゃねぇ」


開始の合図と共にクラリスが疾駆し距離を詰めて大きく空中へ跳び上がる。


大柄な天使は落ち着いて翼を剣に変形し、クラリスが空中で回転しながら繰り出した踵落としを翼の剣で防御する。


ドスンと鈍い重低音が響き、大柄な天使の足元が地面を削り沈み込む。


しかしその表情からは笑みが溢れ、再び大柄な天使が口を開いた。


「俺の名はローウェル、お前を倒す天使の名だ」


「…!」


一撃で決めてしまうつもりだったクラリスは、全力でないにせよ十分な威力を乗せた攻撃をしたつもりだった。


相手の天使は防御した翼も未だ健在。

舐めていたのは自分の方だったとクラリスは考え直す。


薙ぎ払う様に振り払い、ローウェルは距離を取り直したクラリスを見つめて仕切り直す。


「良い反応だ。やはりクラリス、お前程の動きができる奴が易々と翼を奪われるとは思えん。

それだけに翼を、俺達の動力を失ったのは惜しいな。


誰に翼を奪われた?」


「貴方には関係ありません」


「はぁ…ノリが悪いなお前は。まぁいい、相手の事を考え過ぎるのも俺の悪い癖か。


次はこちらから行かせて貰う」


クラリスは武器を持たない。その代わりに武器よりも強靭な肉体を自らの心念と魔力で常時強化し、まともに打ち合う事を可能にしている。


言ってしまえば全身が武器のようなもの。

リーチが違うだけで咄嗟にローウェルが翼で受けなければ、恐らく腕の骨を易々と折っただろう。


(あの細い身体で力自体は俺よりも上…!

しかし翼が無ければこちらに利がある。

それを活かさない手はない)


片手直剣から両手剣程までにサイズを大きくした翼は、片手で簡単にローウェルの肩に乗せられる。


自らの白い髪をかき上げて、翼の剣で肩をトントンと二回程叩く。


大きな体躯から真下を見下ろすようにクラリスを見つめてから一言。


「行くぞ、クラリス」


剣に変形させていない翼へ意識を集中し、魔力が高まり大気を震わせる。


(彼の全力が間違いなく来る)


翼で高めた魔力が足に集中し、一瞬でクラリスとの間にある距離を潰す。


「ダァァァアア!」


片手で振り下ろしたとは思えない神速の振り下ろしが、クラリスの頭蓋を砕かんとする。


クラリスは目で追いながら、振り下ろされた翼を同じく片手で受け止めた。


「なっ…!」


クラリスの全身から魔力は外に一切漏れず、完璧に扱われた魔力運用は、逆にローウェルの思考を鈍らせた。


「馬鹿な…!翼も無しに今の攻撃を受け止めるなどありえん!一体お前は何者だ」


「無翼の天使。クラリス・クラノイド」

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