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22話 天界で魔物が発生しない理由

どこまでも続いていきそうな、吸い込まれる黒が広がっている穴に向かって落ちていく。


「随分と深い穴ですね」


セレスティアが真っ黒な穴に囲まれていくことに若干の恐怖感を抱えながらも、レルゲンの近くで下りていきながら照明魔術のサンライトを周りに配置していく。


しばらく時間がかかると踏んだレルゲンは、次の階層について予め聞いておくことに。


「ミカエラ様、次の階層はどんなところですか?」


「次の階層は言ってしまえば、天使達の墓場になります」


「お墓の階層…」


召子の顔が若干青ざめるが、ミカエラは少し笑って否定する。


「人間達が想像するような墓場ではないですよ。貴女は一度翼が粒子になる所を見ていますので想像がつきやすいと思いますが、その粒子が積もった砂地のような大地が広がる場所です」


レルゲンは納得したような表情になり、セルフィラの目的は天使全体ではなく堕天する天使のみを鑑賞することだと理解する。


「つまり本当にセルフィラは天使の寿命を全うした時に砂のようになる現象よりも、それよりも更に下に堕ちて堕天する天使を見て楽しんでいる訳か」


ミカエラは頷いて、堕天使こと悪魔が大量に発生する原因の一つだと教えてくれる。


「そろそろ穴が終わります。皆さん準備を」


真っ黒に包まれていた世界が徐々に色を取り戻していく。


薄い雲を抜けて地面を見ると無数に魔力感知に引っ掛かるが、セレスティアは違和感を感じる。


「この魔力、まるで下に魔物が敷き詰められているような…」


「今貴女が感じているそれが砂地の正体です。

この砂地は言わば全て元々天使だったもの。

残留魔力を感じ取っても不思議ではありません」


「この広い大地が元々は全て天使だったのですか!?」


見渡す限り何処までも続いていきそうな砂の地平線を見つめながら下りる。


柔らかい感触が足元を包み、魔力に慣れている召子以外のメンバーが若干顔をしかめる。


言うなれば以前魔石龍から流れ出ていた液体魔石の上を歩いているような感触。


触れたことの無い未知の気持ち悪さが襲い、思わず念動魔術で浮かび上がる。


メアリーとミカエラはそのまま飛び、クラリスもまた重力魔術の恩恵を受けて浮遊している。


魔力の知覚方法を〈魔力眼〉しか持たない召子は


「本当にただの砂みたいですね」


と軽く砂を掬って確かめたが、レルゲンやマリー、セレスティアは手で触れる勇気は出なかった。


点々とある岩場の隙間を見つけ、空中に浮かびながら移動する。


どうやら砂以外にも岩のように固まって出来た物があるようで、凝縮しているせいか魔力反応が敏感に反応する濃さを放っていた。


「これだけの魔力…魔物が発生してもおかしくないはずですが、何か特殊な力が働いているのでしょうか?」


魔界で魔物が通常発生しないのは、大気中に濃すぎるが故に魔力が固まらない現象が起きていたが、


天界で魔物が発生しない仕組みはどうなっているのか疑問に思ったセレスティアが独り言のように言葉を漏らす。


するとメアリーが天界の、ひいては天使からなる魔力の違いを簡単に説明すると、納得の違いがそこにはあった。


「天使の魔力は基本的に全て聖属性からなる。その顔はみな薄々気づいているようだが、魔物は本来聖属性を持たない。


だから純粋な聖属性からなる天使からは、魔物は発生しないという訳だ」


「だから天界に魔物が全くいない事を理由に、フェン君やアビィちゃんを連れて来れなかったんだね」


メアリーが軽く頷くと、召子は「なら仕方ないか」と目を閉じて何度か繰り返し首を縦にコクコクと振って納得していた。


ミカエラは勇者である召子の素性が気になったようで、一つだけ疑問を投げかける。


「勇者である召子さんはテイマーなのですか?」


「テイマー…あっ、私が使っているのは魔物召喚という魔術で、魔法陣を使って魔物を使役する事が出来ます。確か後数日で…」


プロパティを開いて確認すると、確かに後数日で再召喚が可能になる日付まで来ていた。


「前回のアビィちゃんは魔界に行く前だったから…やっぱり!あと四日で再召喚可能になってる!


でもここで魔物召喚なんてしたら目立っちゃってしょうがないからできないか」


「なるほど、召喚士のようなものですか」


納得するミカエラを他所に、レルゲンは可能性の一つとして捨てるのは勿体無いと感じていた。


「確かに魔物召喚はやめた方が良さそうだけど、最終手段として仲間を増やす方法の一つとして握るのは悪くないと思うよ」


一度腰を落ち着けて、全員でこれからここを拠点にしてこの層の探索を行うと決める。

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