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【7.5万pv感謝】念動魔術の魔剣使い -王女を助けたと思ったら、自国を滅ぼした敵国の姫でした。それでも俺は護りたい-【第五部】  作者: 雪白ましろ
第一部 絆の糸編

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第二章 10話 セレスティアの課外授業 改稿版

笑っているとセレスティアが歩いてくる。その表情はどこか羨ましそうだ。


「楽しそうですね。何かありましたか?」


「ああ、セレス様、マリーは俺のところでは卒業です。

後は自主的な修行に変えようかと」


「随分と早いですね。そういえば、

マリーがレルゲンと発注しに行った首飾り、

完成したようなので届いていましたよ。そして……」


と続けたセレスティアは、今日の講義は課外授業にしたようだ。


レルゲンが心の中で握り拳を作る。


修練場に案内されたレルゲンとマリーは口を大きく開けて驚いていた。

本来なら木製の床が敷き詰められ、

雨除けの屋根がある程度の簡素な場所だったが今日は違う。


自分の背丈の五倍はあろう巨大な水晶玉に、

測定する人の魔術系統がわかる特殊な白い紙が用意されている。


魔術系統は全部で七つに分類される。


火、水、風、雷、光、影、無


無属性魔術は言ってしまえばレルゲンがよく使っている

念動魔術が含まれ、六種類で分類出来ない系統の総称とされる。


驚かせたことに満足したのか、微笑みながらセレスティアが続ける。


「今日はここで、最大魔力量と魔術適正、魔術系統を再確認します。

まず始めは最大魔力量と魔術適正になります。

この水晶に手を当て魔力を注いで下さい。こんな感じで」


セレスティアが意識を集中し、全身から魔力が溢れ出る。

ゆらゆらと陽炎の様に周囲の空間が歪んで見えるほど、

魔力濃度が高いことが分かる。


セレスティアの結果は最大魔力量A、魔術適正S。

魔術師としての素質はほぼ頂点と言っていいだろう。


続いてマリーは最大魔力量B、魔術適正A。

修行前の最大魔力量はCだったというから、大きな進歩だ。

これにはセレスティアも驚いており、

レルゲンに方法を教えて貰おうと必死になったのはまた別のお話。


続いてレルゲンが水晶に手を触れ、

アシュラ・ハガマと戦った時の事を思い出す。


あの時の全魔力解放は……こうだ。


ドスンと空気が一気に重くなり、

水晶の管理でついてきていたギルドの女性が重さに耐えかねて座り込む。


レルゲンの全身から真っ赤な魔力が、

アシュラ・ハガマの時よりも濃い赤色となって溢れ出る。

マリーは一度側でレルゲンの魔力解放を身に受けているため

そこまでの驚きは無かったが、


セレスティアはというと額から冷や汗がこぼれ落ちるほどの

圧力を感じ取っていた。

ピシッと水晶にヒビが入ったが、

もう一段階上を出そうと腰を落としたところでセレスティアが

待ったをかけるべく、レルゲンの肩に手を置く。


我に帰り魔力の解放をやめ、

結果を確認する。最大魔力量S+、魔術適正B


へたり込んだギルドの女性がつい口にしてしまう。


「S、+ですか…計測範囲外です…」


後で聞いた話だが、S+は過去に何人かはいたらしい。

それこそ偉人や英雄と呼ばれた人物が大半で、

元王族とはいえレルゲンの潜在能力はそれらに匹敵するようだ。


もう一段階上の出力が出せそうな気がしていたが、

これ以上やるとレルゲンの放出された魔力を糧に

王宮で魔物が発生しかねない。


自身がやりそうになったことを諌めて、反省する。

ギルドの女性がすぐに魔力揮発剤を周囲に撒いて事なきを得たが、

一歩間違えば大惨事だった。

レルゲンがへたり込んだギルドの女性に手を差し伸べる。


「すまなかった」


「いえ、私の方こそすみません。ありがとうございます」


セレスティアが軽く手を叩いて仕切り直す。


「さぁ、気を取り直して次は魔術系統を調べてみましょう」


セレスティアから実演を始め、

魔力は少しだけ込めれば紙がその系統の色に変化することを説明する。

セレスティアの色は鮮やかな色に変化し、

複数系統を均等に扱える事が見て取れる。


しかし、無属性魔術に見られる変化はなく、

セレスティアには無属性魔術の系統はない事が証明された。

それを見て少し残念そうに呟く。


「やはり無属性は扱えませんか」


「ですが無属性以外の魔術適正が

これ程均等に表れる術師はそういませんよ!」


立ち上がったギルドの女性が子供の様にはしゃいでいる。

確かに、最大魔力量と魔術適正、

そして系統がこれ程迄に高いバランスで扱える術師はそう多くないだろう。


戦う時に共に居てくれると心強い事この上ない。

レルゲンが素直に感心していると、マリーが紙を取って魔力を込める。


マリーは風が半分程で、ついで無属性で色が変わらない箇所が三割程あり、

その他は均等に色分けされていた。


無属性魔術の念動魔術を扱える辺り、

系統の適正はあると思っていたが、やはり無属性もしっかり入っていたようだ。


最後はレルゲン、軽く魔力を紙に込める。

無属性の色が変わらない部分が半分を占め、

残る半分は均等くらいの感覚で色が変わっている。


その結果を見たギルドの女性が「はぇー」と溢した。


「これはまた珍しい系統図ですね。

無属性がこんなに占めているのもあまり見た事がありませんが、

驚くところは他の系統も少ないですが全部入っているところですね」


うーんと言いながらレルゲンの系統が示された紙を取って考え込んでいる。


「この系統図、どこかで見たような?」


と言ったところでもう一度セレスティアが手を叩いて、

ギルドの女性から紙を受け取る。


その表情はどこか寂しいような、懐かしむようにも見えるが、

正確な感情は読み取れない。


「今日の課外授業はここまでにします。

ギルドからお越し頂きありがとうございました。

壊してしまった水晶はこちらで新しいのを用意致します

とギルド長様にお伝えください」


「しょ、承知いたしました!

こちらこそ貴重な体験をありがとうございました。

今日のことは絶対に口外致しませんので、ご安心ください」


そう、この計測は外部に漏れると相当な問題となる。

次期女王候補の二人は特に極秘事項だ。

最大魔力量と魔術適正は最悪漏れてしまっても

対策が立てようがないので問題は少ないが、

この紙に系統を示したものは極秘も極秘。


扱える術の偏りや種類など、推測できる材料となり、

純粋な魔術師ほどこの情報は隠したがる。


今、仮に魔族側にこの紙が渡ると厄介な事この上ない。

セレスティアがすぐにレルゲンの紙を受け取ったのはこの為である。


セレスティアの元には自分の系統図を含めて三枚。

覚え終わったら紙を燃やして、保管もしない。


用心が過ぎると思う者も多いだろうが、

新しく建国したばかりの大事な時期に用心のし過ぎはないのだ。


授業が終わった後に届いたとセレスティアから

聞いていた首飾りをマリーの自室でレルゲンと一緒に確認する。


首飾りには三つの色で構成されていた。


左右の二つはユニコーンの角を加工した

円形のブローチがあしらわれ、

中心には予定には無かったアシュラ・ハガマの鉱石が嵌め込まれていた。


首飾りが入っていた包みに、ドライドからの手紙も入っている。


マリーがその手紙を開いて読むと


(首飾りの効果は単純で、「速足の加護」が付与されるぜ。

最初は加護までいく予定は無かったが、

ユニコーンの角を二本加工してみたら「速足の運び手」

っていう加護になりかけている効果が出ていてよ、

アシュラ・ハガマの増幅鉱石を試しに嵌めてみたらって言うわけよ!

大事に使ってくれよな。真ん中の石は俺たちからの贈り物だ。)


その手紙を見たマリーはクスっと短く笑い


「もう、無理して…」


と呟くのだった。


「よかったな、マリー。連続剣の加護と相性ピッタリじゃないか」


「そうね、効果がどれくらいかは付けてみないとだけど、

さっきよりもっと速くなれるってことよね」


首飾りのブローチ部分も綺麗だが、

首飾りの全体がキラキラと上品に光っている。


アシュラ・ハガマの鉱石もそうだが、

他にも希少な鉱石が使われているように見え、

職人のプロ意識の高さにレルゲンが思わず唸る。


それから七日間に渡って魔族の王国侵攻、

もといマリーの暗殺は止まり、一先ずの休戦状態となった。

レルゲンは許可された王立図書館に足を運ぶ日々を過ごしていたが、

気になる本があまり見つからない。


その事をカノンに相談すると、

今度一緒に本選びを手伝ってくれるようだ。


「助かるよ」


「いいさ、それよりもレルゲン君。

また魔力をこの魔石に込めてみてくれるかい?」


「分かった、加減はどうする?」


「最初はゆっくり、徐々に上げていくやり方でお願いしたいな。

ストップの合図はこっちで出すよ」


「わかった」

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