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18話 ミカエラの本音

「とりあえず皆が無事でよかったが、そちらの無翼の天使を紹介してくれると助かる」


首を長くして帰りを待っていたレルゲン達にクラリスが詳細に説明すると、マリーとセレスティアが大いに驚いていた。


「ミカエラ様ってあのお伽話や神話に出てくるような…あの?」


「未だに信じられません。生ける伝説のお方ではないですか」


レルゲンはと言うと、説明されても凄く高貴なお方としか分からず、天使についてはよく分かっていないようだった。


とりあえず三人が世話になったとお礼をしたが、当のミカエラはそれよりも自らの存在を知らない人間がいるのかと驚いていた。


ハッと我に返り、早速マリーの呪い斬りについてミカエラが確認する。


「貴女がメアリーの言っていた呪いのみを断ち切れる加護を持っているマリーさんですか?」


「そうです。以前にも一人、呪いの契約部分を断ち切った経験がありますが、どんな契約を結ばれたのですか?」


「残念ながらこの契約内容は話すことが禁じられています。それでも可能ですか?」


マリーは一度考えて、メアリーにおおよその内容について予想だけでも確認し、斬る対象のイメージを掴みたかった」


「メアリー、予想でも構わないんだけど、どんな契約をミカエラ様が結んでいると思う?」


「そうだね。漠然としているが、無翼の天使に不利になり、かつ有翼の天使に有利になる契約。


後は、有翼の天使に逆らえない、というよりか自分より多くの翼を持つ天使に害するあらゆる行動の制限。といったところだろうか」


メアリーがミカエラを見ると、一度だけ頷く。

すると、軽微な契約違反を犯したと判断されたミカエラは、身体中に強い電気が流れるかの様な強烈な痺れを覚えてその場に座り込む。


レルゲンが手を差し伸べて立ち上がらせると、今度は不思議そうな表情をしながらミカエラが起こされる。


足元が完全によろけてしまい、再び倒れ込みそうになるミカエラの肩を抱いて支えて一言だけ言葉をかける。


「大丈夫か?」


「少しの契約違反を犯しただけでこうなるので、内容については話す事が出来ません。


マリーさん、頼めますか?』


「それだけ分かれば十分です。

身体の中に刃が通りますが、傷は付かないので安心して下さい」


ミカエラが頷くと、マリーは神剣を下段に構えて斬る対象をイメージで選別する。


(この契約は恐らく棘の生えた鎖のようにミカエラ様を縛り付けている。私はその鎖のみを断ち切る)


イメージと現実が完全にリンクし、マリーが思い描いた鎖が表層に浮き出る様に現れる。


ミカエラの肌には鎖が食い込んだ時の様な赤いアザの模様が浮き上がり、更に音を立ててギュッと締め上げていく。


「ミカエラ様…!」


「契約の防衛反応です。それだけに貴女の想い描いたイメージは的を得ている…!

躊躇わずに振り抜いて下さい」


「…行きます」


一歩だけでミカエラとの距離を詰め切り、下段から上段に大きく振りかぶられてから、一気に振り抜く。


「っ…!!」


ミカエラが声にならない悲鳴を上げて一瞬意識が飛びかけたが、すぐに斬られた場所をペタペタと確認するように触り、


宣言通り本当に傷が付いておらずに安堵し、そして天よりも更に高い所へ向かって吠える。


「私は…私は……彼との契約など絶対に認めたく無い!セルフィラとの子を成すなど!

無翼の天使達の堕天計画など進めたくはないのです!


ですがそれでもあの預かり所の地下で今も狭い水槽で力を奪われ続けている子らを見捨てられなかった…!


わかっていた!わかっていたのです…

この契約を結んでもあの水槽の子達を真に助ける事は出来ない…ですが、それでも!


腐った草の根と分かっていても縋るしか無かったのです。


神よ、どうか私を罰し、そしてお赦し下さい…」


呪いの契約により堰き止められていた感情が爆発し、大粒の涙を流しながらミカエラが表情を大きく崩した。


その取り乱し方を見たレルゲン達の心は、引っ張られて締め付けられるような感覚に襲われる。


そんな中、メアリーが泣いているミカエラの頭を軽く撫でて、顕になっている背中を軽く摩る。


「ミカエラ様。一人でよく頑張りましたね。

ですがもう大丈夫です。

私達がそのセルフィラという天使を倒して見せますから」


ミカエラは泣くのを何とか止めてメアリーを見つめて一言だけ「無理です」


と返した。


「セルフィラは狡猾に相手の弱点をとにかく探し出して利用するのが上手いのです。私で言うところの預かり所の天使達のように。


ですから貴方のように心根が優しい方とは非常に相性が悪い相手と言えるでしょう。


貴方達の絆を逆手に取る策略をきっと取ってくる。それでも貴方達は立ち向かえるのですか?」


自分でも無理だった絡め手に対抗出来るのか、ミカエラはレルゲン達に向けてそう言いたいのだ。


しかしセレスティアが自信ありげに胸を張って宣言する。


「彼が、レルゲンの心が折れない限り、私達は戦う事が出来る。


愛する家族や国で帰りを待つ大切な方々。

寧ろそれらを人質に取った方が簡単には終われなくなるでしょう。


そう思わせてくれるのが彼なのです。

だからミカエラ様、もう一度立ち上がって下さいませんか?」


「分かりました。それだけ信頼しているのであれば、私からは何も言う事はありません。


それにレルゲンと言いましたね。

貴方はどこか私達天使と魂が似ているように感じます。


私は貴方のような魂を持っている方と…いえ、今のは忘れて下さい。


とにかく、セルフィラには十分注意して頂き、私が教えられる事があれば全てお答えします。

是非協力させて頂ければと」

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