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17話 勇者と魔王の共闘

正確に狙いをつけられた神速の一撃は見事下顎に命中し、尚も連続して翼の隙間である身体の正中線に集中して体術をヒットさせる。


「くっ…たかが下界の者どもが!」


男は翼に魔力を集中し、剣を振るように先端をクラリスに向けて振り下ろす。


しかし、抜群のしなやかさを活かして攻撃をしゃがんで回避し、足を蹴り上げるように振り上げてこれもまた正確に男の頬に命中させる。


あまりの威力の高さに壁に向かって吹き飛んでいった男は、何枚もの壁面を貫きながら吹き飛んでいった。


「クラリスさん…凄い…!」


「これもメイドの嗜みですから」


ミカエラが今の一連のやり取りを見てもまだ表情は強張ったまま、三人に注意を促した。


「今ので奴の動きを封じても、まだ倒すには至っていません。私は契約で口しか出せませんが、どうかご無事で」


口から大量の赤い血を吐きながら、男は苛立っていた。


「貴様らぁ…!この俺様に向かってなんて無礼な。必ずここで殺してやる」


男は更に殺傷能力を上げた一撃を放つために魔力を翼に込める量を上げていく。


勢いよく十枚の翼を広げた男は光り輝く光点を無数に出現させ、更にその光点に向けて翼から魔力が流れ込んでいく。


臨界点を迎え、大きく育った光点から一本の細い熱線がメアリーと召子の間を抜けていく。


床は焼き焦がされたように瓦礫が小さな音を立てて火を上げている。

喰らえば間違いなく致命症になる一撃。


「召子、あの熱線は速すぎて私の重量魔術で軌道を変更することが難しい。だが、奴の動きはあの翼の量もあって鈍い。


私に考えがある。合わせてくれ」


「分かった。いつでもいいよ」


二人で頷き、メアリーが広範囲の重力魔術を唱える。


「グラビティ・ストンプ!」


〈天の翼〉と〈重力操作・中〉を合わせて召子を巻き込んだ重力過重の広範囲魔術を中和し、翼が重そうにバランスを崩した男へと突っ込んでいく。


瞬時にミカエラが召子の聖剣から生えた翼を見て、翼を無理矢理増やした天使に対するカウンターになると考えて指示を飛ばす。


「勇者よ!彼の翼を今の貴女なら断ち切れる!」


裂帛の気合いと共に、男に生えている翼に向けて〈飛翔〉を使って飛び上がり、大上段から思い切り振り下ろされた。


「やああぁぁぁぁあ!!」


召子が放った一撃は、半分の翼を完全に切断し、男の魔力が大きく半減する。


待機していた光点も半数以上が消え、残る光も消えるまで後数秒といったところ。


完全に勝負がついた事でミカエラは安堵したが、それでも男は諦めが悪かった。


「き、きさまらぁ……!」


片翼になった男は消えかけた光点を全て一点に集約し、身体中の魔力をかき集めるように高めて最後の一撃を放とうとする。


重力の過重を感じさせないくらいに意志力が振り絞られたことで立ち上がって光点が臨界点を迎えたが、それもここまで。


身体が先に限界を迎え、力無く重力魔術によって地面に叩きつけられて気を失った。


「勝ちはしたけど、なんて心念の強い…というより相手よりも自分の方が強いという自負のようなものが強かったように思えます」


クラリスは倒れた男の最後の足掻きを見て、少しだけ冷や汗を掻いたが、すぐに切り替えて一度拠点に戻るように二人を迎えに行く。


「これで私達も完全に無翼側として有翼の天使達と敵対するわけだ」


「そうだね。だけど、十枚の翼持ちを倒せたのはセリエルさん達に報告する?」


「いや、言ったとしても信じてはもらえないだろうし、これはレルゲン達だけに共有しよう」


切断された翼は既に粒子となってバラバラに崩れて消えてしまい、倒した証拠となる天使を連れ帰ったとしても大した違いにはならず、


寧ろ恐れられてしまい居場所が無くなるだろう。


未開の土地でやっていくにはどうしても現地の協力が不可欠だ。


魔界の時とは違い、最悪の場合撤退という手段もない。より慎重に物事を考えるようになっていた。


帰る前に、一言だけミカエラにメアリーが頼み事をする。


「ミカエラ様。今かけられている呪いを解呪するためには一度無翼の天使の拠点に行く必要があります。


高貴なお方とはいえ混乱を避けるべく、一度無翼の天使として振る舞っていただきたい」


「ええ、構いません。それでこの呪いから解放されるのであれば」


こうして四人に増えたメアリーの思い出巡りは、波乱の一日となるのだった。

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