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15話 大天使

三人が目にした光景は、信じられない程に召子がいた時の時代に似ていた。否、それよりも進んでいるようにも見える物があった。


地下にあった部屋は薄暗く、何かしらの機械と思われる集約されたボタンのような物が怪しく光っており、管制室のように大きな機械が設置されていた。


「なんだ…ここは…?」


「何やらこのガラスの水槽に液体が入っている様ですが、このシルエットは間違いなく」


「ああ、有翼の天使だね。それも魔力を感じる事からまだ生きているだろう」


生きた有翼の天使達がいくつものガラスの水槽に抵抗する事なく入っており、


食事などの補給を必要としない有翼の天使達を閉じ込めて、何かしらの実験を行っているようにも見えた。


しかし召子は閉じ込められている有翼の天使達を間違いなく機械で何か悪さをしていると直感で感じ取り、聖剣を構えて振り下ろそうとする。


いきなり聖剣を解放した召子の肩をメアリーが軽く握って止めると、取り乱した召子は肩を振り払おうとする。


「どうして止めるのアメリア!この天使達はきっとこの機械で眠らされてる!助けないと!」


「少し落ち着け召子。私もこの天使達を閉じ込めているキカイ?を破壊したい気持ちは山々だが、決断が早過ぎる。


壊すのはもう少しここを調べてからでも遅くはないはずだ。


クラリスも召子を止めてくれ」


有翼の天使達を見ていたクラリスは少しボヤッと眺めていたが、メアリーの言葉を聞いてハッとし召子の両肩を掴んで動きを止めた。


「クラリスさんまで…!この天使達が死んでしまうかもしれないのに…」


「大丈夫ですよ。有翼の天使は悪魔より数段力の保有量は上です。ちょっとやそっとじゃ簡単には死にません。いえ、死ねません」


落ち着いたクラリスの言葉を聞いた召子はようやく諦めたのか、聖剣に握っていた手の力を抜いた。


「分かりました」


歩きながら水槽に入っている天使を見ながら奥へ進んでいくと、小さな部屋が扉で閉ざされている。


扉を開けようとするが、内側から鍵が掛けられており開かない。


それでも何か方法がないかメアリーが扉をペタペタ触っていると、機械から合成音声のような抑揚の無い声が聞こえてくる。


『認証しました。どうぞお入りください。"原初の堕天使"』


「…!!」


正体を一瞬で見破られたことで、新しく帯剣しているベヒモスの剣に手を掛けながら素早くバックステップするが、


特に罠などの類はかけられていないようで、そのまま中に入る。


部屋は先程よりも小さいが、水槽に入れられている有翼の天使は、ただの天使では無かった。


「ミカエラ様…!」


先程の天使達と同様に眠らされ、翼は有翼の天使がニ翼一対なのに対し


メアリーがミカエラと呼んだ天使は片方に三つ、もう片方に三つ生えている。


通常の天使と比べ三倍の数の翼を持つ、正に上位存在の天使だと一目で分かる圧倒的なプレッシャーを放っていた。


(眠っていると言うのにここまでの圧を放てるとは…!)


クラリスが驚きながらも咄嗟に心念計を確認すると、やはりと言うべきか眠っているのにもが関らず、どんどんと時計が回転を強めていく。


「知り合いなの?」


「簡単に言うと一番上の序列の一人。大天使と呼ばれているお方だ。直接話した事はないが見た事はある。


しかしなぜこんな所に閉じ込められておられるのか…」


「魔王様。この大天使は危険です。助けるなら相応の覚悟が必要かと」


「そうだね。ミカエラ様は中立で有名だったお方だ。助けたつもりが、逆に怒りを買う可能性すらある」


この水槽にまるで自ら望んで入った可能性を示唆するメアリーに、召子は訳がわからないといった表情を見せる。


「自分でこんな狭い水槽に入って眠っているかもしれないってこと?」


「あくまでも可能性の話だよ。

こんなところに大天使の力を封じることが出来る実力者が他にいるとするならば、同じく最上位の大天使か、自ら入ったとしかあり得ないんだ」


本当に助けるか迷っていると、ミカエラの目がパチっと見開かれた。


「…!!」


急な変化に驚いた三人は咄嗟に戦闘体制に入ろうと身構えたが、寸前の所で踏み止まる。


『何用ですか?か弱き天使達よ。

このような辺鄙なところに客人とは珍しいですね』


水槽に入りながらも思念のみで会話を可能にするほどの心念を自在に扱っていることが分かる。


メアリーは無翼の天使の擬態を止め、天使だった頃の姿に変えて改めてミカエラに自らの名乗った。


「お久しぶりですミカエラ様。

直接お話しした事はありませんでしたが、覚えていらっしゃいますでしょうか?


私です。メアリー・アメリアです」


『…!最初の堕天使と言われているあのメアリーですか?』


頷くと、ミカエラは目を細めて擬態の奥に隠れている魔王の姿を透かすように見ていた。


『確かにあなたは魔王メアリーなのですね。大きくなって。ええ、覚えていますよ。

この預かり所であなたは育っていたはず。


しかし残念です。あんなに純粋な心の持ち主だったというのに、まさか翼をもがれて堕天してしまうとは…』


「あの時はこの世の終わりだと思うほどの絶望でした。天使の面汚しの私をどうかお許しください」


『そうですね。確かにあなたは堕ちてしまった。


しかし、昔のままで変わらない心を持っている事を確認できて安心しました。


やはり、私はここから出てこの騒ぎを収める必要がありそうですね』


ミカエラはそう言って手を前にかざし、一言だけ命令を出した。


『ガラスよ、無くなりなさい』


途端にガラスが一瞬で消え、まるでレルゲンが度々口にする念動魔術のようだと召子は感じていた。

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