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12話 穏健派と武闘派

「では昨日の続きといきましょう。

今回は私がいる穏健派と、アラエルがいる武闘派についてになります。


あなた方の中にも呼び方は違えど穏健派と武闘派のような区分けがされていたと思いますが、どうでしょうか?」


「似たような呼び方はあったが、基本的に俺達は武闘派が多かったな」


ここでレルゲンが信憑性を上げるような嘘をつくとセリエルはにこりと笑い、話を続ける。


「なるほど。あなた方が持っている武器は、きっと武闘派層が多く居たために発展した物なのでしょうね。


戻りますが、穏健派とは無翼の天使が武闘派とは違い、できるだけ波風を立たさずに、静かに暮らしていける輪を作ることを目的にしています。


引き換え武闘派は翼を奪った有翼の天使達から翼を奪い堕天させる事を目的にする者や、御法度を破ってでも翼を取り戻そうとする者達の輪になります」


セリエルの話を聞いてマリーが純粋な疑問をぶつける。


「私達を助けてくれたアラエルは翼は斬れないと言っていたけど、斬れないと分かっていながらどうやって翼を斬り落としたり、取り戻そうとするの?」


するとセリエルが片目を閉じて少し笑い


「とてもいい質問です。ではどうやって有翼の天使の翼に干渉するのか、お話しましょう」


セリエルが空中に天使の図を出現させ、レルゲン達の目の前に移動させて見えやすくする。


「一つは有翼の天使の身動きを封じた後に、下界にある武器を使い切断すること。


これはあまり現実的ではありませんが、下界で鍛えられた武器は大変貴重です。


天使が鍛えた武器はどうしても翼に対する切断力が大幅に落ちてしまう。


そもそも天使の翼は身体の中で一番の硬度を誇る事は既にお分かりかと思いますが、


我々が今持っている技術では翼より硬度の高い武器の製造が出来ません。

これは翼が最大の武器であることに起因しており、武器を鍛える職人は皆無翼の天使です。


そこから堕天して下界に行くまでの間に、技術の継承をするにはどうしても時間が足りない事が武器の製造技術発展を大きく遅らせてしまっているのです」


一つ咳払いを入れ、更に続ける。


「続いて二つ目です。これは単純ですが効果的で、成功例もあります。


一つ目と同様に有翼の天使の身動きを奪ってから、複数人の無翼の天使が集まって、翼を引き抜くという力技になります。


ただこれは他の有翼の天使に見つからない所で時間をかけて引き千切るように行いますので、どうしても監視の目を掻い潜らなければならない。


なので今、私達無翼の天使は必死に鍛治技術の向上を図っているのです」


レルゲン達は一通り話を聞き終えて、下界で鍛えられたこの武器達なら有翼の天使の翼を切断する事が出来ると確信を得たが、果たして無翼の天使達に協力していいのかどうか迷っていた。


昨日の召子のように、ふとした瞬間に人間としては当たり前であっても、天使から見たら異質と感じるボロが出てくる可能性が多いにあったからだ。


今でこそ無翼の天使達は友好的ではあるが、どこか引っかかる。


この感覚は恐らくは間違っていないと感じながらもレルゲンは質問をしようとしたが、それよりも前にメアリーがセリエルに向けて話しかけた。


「君達、無翼の天使達は、翼を失い堕天してしまった同胞達をどう思っているだろうか?」


少し下を向いて考え、セリエルが口を開いた。


「私が、というより他の無翼の天使達の総意ですが、

堕天してしまった無翼の天使達はゲファと呼ばれ、


どちらかと言うとマイナス感情から来ている蔑称で呼ばれていますね」


「そうか、蔑称か。

だが、君達も知っておくといい。

家族を地上に落とされ、連鎖的に堕天を繰り返した地域もあるという事例を」


「知りませんでした。これはあなた方を傷つけてしまう内容でしたね。申し訳ありません」


深く頭を下げて謝罪するセリエルを見てメアリーは顔を逸らしていたが、それでもしばらくの間、セリエルは謝罪を続けていた。


「今日は皆さんのお気持ちを考えずに、我々の常識を押し付けるような真似をして申し訳ありませんでした」


別れ際、改めて謝罪をするセリエルを無視してメアリーとクラリスは先に行ってしまったが、レルゲンが代わりに謝罪を受け入れた。


「いや、お互いまだ会ったばかりだ。

実はいつかはこうなると思っていた___だからあまり気にしないでくれ。


今日の話も非常に勉強になった。

先に帰ってしまった二人の意見も聞いてからにはなると思うが、やはり俺達は武闘派に入ると思うとだけ認識しておいてくれ」


「分かりました」


それからというもの、メアリーとクラリスはセリエルの前にしばらく顔を見せなくなった。


レルゲン達が情報収集に外出する際も、部屋に残り静かに過ごしていた。


それを心配した召子がレルゲンにあるお願いをする。


「レルゲンさん。ご相談がありまして」


「メアリーのことか?」


「はい。あれ以降、表では普通に振る舞っていても、何だか塞ぎ込んでいるように見えまして」


「わかった。メアリーは召子に任せる。

手伝って欲しい事があれば何でも言ってくれ」


パァっと明るくなる召子は、元気よくレルゲンにお礼を送った。

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