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51話 決定的な違い

召子はプロパティを開き、改めて自身の〈スキル〉を確認する。


鍵はやはり何かしらのトリガーを満たした後に取得できる、戦闘を有利に進めるられる〈スキル〉なのは間違いない。


召子の現在のレベルは282。


もうじき三度目のレベルアップボーナスが訪れると頭の隅で考えたが、朱雀の時のようには恐らくはならない微妙なレベル帯。


またスキルは〈対魔王城〉がコピー側の召子には適応されないことを除けば、汎用性の高いスキルを多く持っている召子とは遜色の無いコピーだろう。


いつ来るか分からないスキルの追加取得ではなく、召子が注目したのは聖剣に関する〈スキル〉


〈魔力眼〉でもう一度聖剣を確認すると、一度見た時と同じく魔力の流れが自分の持っている聖剣とは似て非なる流れとなっている。


(聖剣関連の〈スキル〉は発動しない…はず。

なら、私は決定的な違いを押し付けていくだけ)


召子は自身の能力変化よりも聖剣としての性能を押し付けるように、自身のコピーへ向けて走り出す。


レルゲンは、もしもコピーと逆のシチュエーションなら間違いなく聖剣を持たない仲間を庇いに行く。


予感は当たっていた。

レルゲンのコピーが仲間をフォローしようと動き出す。


前もって予測が出来ていたため、コピーが動いた先に余裕をもって浮遊剣を地面に突き刺して注意をこちら側に向ける。


今のごく短いやり取りの中で、自分の思考までもある程度はトレースされていると知ると、レルゲンは少し口角を上げる。


(思考がトレースされているのはむしろついていたな。突拍子も無い動きをされる方がやりづらい)


フォローの手を阻まれたなら、次に自分ならどうするかを考える。


(間違いなく遠距離からの牽制を入れるはずだ)


コピーが動く前よりも早くレルゲンが相手との間に割って入り、召子のコピーに対して背を向ける。


すると、召子のコピーは一見隙だらけにも見えるレルゲンに身体の向きを変えようと、一歩足を踏み出した。


しかし、駆け出していた召子がレルゲンの背中を護るように入り、聖剣を構える。


コピーの二人に挟まれるように、一直線に四人が並ぶ。


「背中は任せて下さい!」


「頼んだ」


本来はコピーとの立ち位置が逆になる方がベスト。

しかし、あえて不利とも取れるこの移動は、レルゲンの念動魔術で召子をアシストするには逆に良かった。


「私の聖剣でガンガン押していきます。

レルゲンさんはコピーの遠距離攻撃がこっちに流れないように援護をお願いします!」


「ああ、任せてくれ」


レルゲンは普段から戦いの時は先手を取り戦闘の支配を心掛けていたが、今回は違う。


これは言わば迎撃戦。

下手な遠距離攻撃を仕掛ければ忽ち軌道を曲げられてしまう。


そんな悪い予感がお互いのぎこちなさを生んでいた。


レルゲンが自身のコピーを倒す方法は大きく分けて二つ。


一つはコピーですら曲げられない強固な念動魔術を発動し、遠距離から相手の動きを封じる方法。

もう一つは近接戦で相手よりも速く致命傷を与えること。


近接戦を仕掛ければ、今戦いを始めた召子に浮遊剣でちょっかいをかけることは目に見えている。


やはり遠距離からの攻撃で、純粋に念動魔術の制度を更に上げた一撃が必要かと思われるが、これも念動魔術の制度向上には、莫大な時間か適した修羅場が必要になる。


レルゲンとコピーはお互いに消極的と言っていいやり取りが続き、まだ相手を探りながら睨み合いが続いていた。


コピーが再び動くのは、オリジナルのレルゲンが近接を仕掛けた時と仲間に危険が及んだ時。その二点に絞られているはず。


だからこそ、レルゲンは後ろで聖剣の性能をフルに活かしながら戦いを進めている召子に、意識の多くを割いていた。


「やぁあ!」


短い気合いと共にコピーを押していく召子。

同じ聖剣の見た目でも、精霊が与えた物と人工的に作り上げられた物。


格の違いは明白だった。


同種の〈スキル〉を持ち、レベルも同じ。

それでも武器の真贋だけでここまでの差が付く。


召子の見立てが正解だと証明された所で、レルゲンのコピーが第一段階の全魔力解放を始める。


召子がギョッと目を丸くしたが、すかさずレルゲンもウルカの力を借りて赤い魔力を放出。


「俺のコピーは絶対にそっちに行かせないようにする!だから召子はどんどん押してくれ」


聖剣を振りながらレルゲンのコピーからは意識を切り、再び自分の敵へ集中する。


(全魔力解放をして何をするつもりだ…?)


コピーは氷華にいつの間にか持ち替え、大上段に構えて氷華に魔力を乗せていく。


一方オリジナルのレルゲンは相手が未知の攻撃を始めた瞬間に警戒心を最大まであげ、


同じ氷華ではなく炎剣にブルーフレイムを念動魔術で固定して構える。


「喰らえ」


コピーが短く吠えたと同時に、氷華を振り下ろす。


全魔力を乗せた氷華の遠距離攻撃は、無数の氷で出来た板を周囲に何枚も出現させて冷気を撒き散らした。


「これは、一体…」


鏡がそこら中にあるような空間に閉じ込められ、そこは一種の迷路のような構造になっていた。


(一刻も早く仲間を助けに行くつもりか)


反属性で待ち構えていたレルゲンは素早く考えを転換させ、囲まれた氷の迷路を溶かすために白銀の剣にブルーフレイムを吸収させる。


白い輝きになった白銀の剣を氷の鏡に差し込むと、水蒸気が立ち上りながら綺麗に溶かしていく。


しかしコピーを完全に見失った。もといどれがコピーか視覚だけでは分からなくなったレルゲンは、魔力感知へと切り替えて敵の位置を探る。


駆け足で召子の下へと走り寄っていくコピーに白銀の剣の切先を向け、自分の魔力を混ぜ込み念動魔術を発動しやすくする。


撃ち込まれた熱弾は、先ほど溶かした時よりも速く、そして高い温度を維持しつつ氷の板を何枚も溶かして破壊する。


何発も撃ち込んだ事ですぐに熱源の再チャージが必要になるほど光が失われたが、


今度は同時にブルーフレイムを掌に出現させては念動魔術で白銀の剣に吸収させ、それを撃ち込む。


レルゲンの魔力。否、ウルカの魔力が続く限り無限に撃ち込める工夫が凝らされ、更に連写速度が上がってゆく。


完全に氷を溶かし切り、コピーに向けて熱弾が命中し足が止まる。


接触した部位からは溶けるように傷口が小さく波打ち、煙を吐いている。


やがて収まったと同時にコピーが一言放つ。


「その攻撃はいくらやっても無駄だ」


「どうかな。俺の事だ___身体の構造が違うのは認めるが、それが本当の事を言っているとは限らないな」


「好きにしろ。

お前はお前自身をよく分かっているつもりでいるが、本当に分かっているのかどうか怪しいぞ」


「どういう意味だ?」


「どうせ気づくから教えてやるが、心の奥ではパーティメンバーを足手纏いに思っているだろう。


初めて深域に調査をしに行った時、お前は、いや俺は安心した。それが答えだ」


「確かにあの時は内心安心した。

だが、違った。

俺一人で頑張らなくてもいい。

今は肩を並べて一緒に戦ってくれる仲間がいる。


気づかせてくれたのはいつもここにいる仲間や、帰りを待ってくれる人達だ。


思考までコピー出来ても、肝心のところでお前は決定的に欠けている。


今の言葉を聞いて安心したよ」


「何にだ」


「俺はコピーであるお前に負ける気がしない」

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