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47話 交換

「僕が一番君に聞きたいことから始めようと思う。歴史古しとあれどそこまで多彩な戦闘術は初めて見たよ。君の魔術はどんな理論で動いているんだい?」


「俺の魔術の理論を知って、魔王にでも報告するつもりなら諦めろ」


「違う違う。僕は確かに魔王様とは親しい間柄だが、そんな事をしたら逆に楽しみを奪うなって怒られてしまうよ」


スティルはやれやれと肩をすくめたが、側に控えているハーディは目を閉じたまま話を聞いている。


「なら次の質問だ。君達の中には魔界に座標を固定できる程の高い技術者がいると思うんだが、それはどなたかな?是非教えてくれないだろうか」


「それを知ってお前は何を満足する」


「それは僕の勝手な知的好奇心だよ。研究者なら分かるはずだ。


理由のない好奇心に突き動かされるのが僕の、僕達の性とでも言えるだろう。


僕の見立てでは青い髪の君か、杖を持っている君のどちらかだと思っているが、どうかな?」


レルゲンは小さくため息を付いて、ディシアを見る。


「貴方の言う通り、転移魔法陣を構築したのは私です。ですが、私一人だけの力ではありません」


「そうか、君がここまでの大移動を可能にしたわけだ。


僕は君達の言うところの魔力が常に流れている地脈を目印に転移魔法陣を開発したわけだが、目印を一切付けないとなると多大な誤差が生じる。


だがその誤差を逆に利用して僕らからの観測範囲外からやって来たわけだ。


だけど解せないな。それにしたって計測範囲外からやって来たにしては早過ぎる。


どうやってこの短期間でここまでやってこれたのかな?」


会話は終始スティルのペースが握り、レルゲン達はそれに答えずとも、引き摺り出されるように持っている情報を引き出されてしまう。


会話をただするのではなく、相手と対等以上の情報を引き出す為にレルゲンは交換条件を出した。


「教える前に一つ条件がある。こちらが一つ情報をくれてやる時は、そちらも一つ欲しい情報をもらう」


「僕に魔王様は裏切れないけど、ちょっとくらいなら構わないよ?」


一言の内に矛盾するスティルにハーディは慣れた表情で棘のある一言を飛ばす。


「今の発言。裏切りと取られても仕方ないですよ」


「そうかい?僕が話す程度の情報はきっと魔王様は気にしないと思うけど。


それで、さっきの質問の答えを聞かせてくれるかい?」


「後ろに浮かせている剣と同じ方法だ。後はそっちで想像してくれ」


「なるほどなるほど。ふむ、では君の知りたいことはなんだい?」


「そうだな。まずは俺達をずっと狙っている狙撃手について詳しく教えてもらおうか」


「君達を狙っているのは魔王軍幹部のマークスだ。結果を出す為なら手段を選ばないタイプで、使っている武器は銃と呼ばれる物だ。


この銃と呼ばれる物は過去にやって来た勇者の仲間が使っていた技術を流用したものだね。


君達がこの城へ最初に入って来た時に一斉攻撃を受けたよね。アレの用に連射は出来ないが、一発の威力がその分高くなっていると考えるといい。


どうかな?満足のいく情報だっただろうか?」


「いや、足りないな。

今まで戦ってきた幹部は等しく自信のある最後の手段を持っている。


その手段はマークスもあるはずだ。それを教えてもらおう」


スティルは少し困った表情をして、どうしようかと呟きながら今後自身に降りかかる厄介事を天秤に掛けている。


レルゲンは狙撃手のマークスが持つ攻撃手段がまだもう一手か二手あることが分かっただけでも収穫だったが、スティルは更に交換条件を持ちかけてくる。


「教えるには一つ条件がある。マークスの狙撃を躱しているのはどうやっているのか。

やっぱり君達人間の得意な加護だったりするのかい?」


レルゲンは少し間を置いて考え、正直に話すかどうかスティルの目を見て考える。


この研究者にはきっと嘘は通じない。そう思えるだけの雰囲気を感じ取り、正直に答える事を選択する。


「銃の弾道を曲げる魔術を、俺は使える。仲間にもその魔術をかけている。常時」


正直に話すが余計な事は絶対に話さないと決めたレルゲンは、念動魔術による応用とは言わずにあくまでも弾道変更が可能な魔術と答えた。


「随分とマークスに対して有利な術を持っているんだね。


なら奥の手でも君なら無意味になってしまう気がするけど、それでも知りたいのかい?」


レルゲンが頷くと、スティルが話し始める。


「マークスは普段から実弾を使っているが、魔力のみで発射される弾丸は遠隔で操作ができる。それに加えて実弾を発射した後に」


ズガァン!ガァン!!


「随分とお喋りな研究者だな。人の手の内をペラペラと」


音が鳴った方向から無音の体捌きで影が伸びるように歩いて来る者が一人。


一メートルはありそうな銃身を肩に担ぎつつ、逆の手でそれよりも小型の銃を持ち、半透明の煙が静かに立ち昇っている。


即座に全員が戦闘体制に入る為に席を勢いよく立った。


それでもスティルは身体に穴を開けながら話を続ける。


「このように実弾を撃ち込んだ後に魔弾を隠して発射するのが」


再びの銃声が何度も部屋に響く。


(矢避けの念動魔術)


素早く魔術を発動したレルゲンは、止めを刺しに銃を撃ち込むマークスからスティルを護る。


軌道が天井に変更され、無数の穴が開いた。


「おいおい。そいつはお前達の敵だろう?なぜ護るんだ?」


「まだ情報を聞き出す為に生かしているだけだ」


「そうかい」


マークスは実弾を再装填するのではなく、空になった銃を床に投げ捨てて懐から新しい銃を取り出した。

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