表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

170/249

43話 ミミクリー・プレッション

ヴァネッサの痺れが取れるまで数十秒は猶予がある。


この隙を活かさない手はない。

周辺にまだまだ満ち満ちている魔力を少しずつ、しかし着実に黒龍の剣に込めていく。


刀身の色が赤から青へグラデーションを描くように変化していき、光が伸びる長さもどんどんと成長する。


完全に青色になった段階でレルゲンがウルカを短く呼び、第二段階の全魔力解放で吹き出した魔力を更に黒龍の剣へ込めてゆく。


全ての魔力を剣に込めると、悲鳴を上げるように甲高い音が鳴り始めながら、

刀身が青から純粋な白に近い無色に変わる。


準備は整った。

ピクピクとヴァネッサは麻痺の状態から脱出しようと身体を捻るように動かし、必死にレルゲンの放とうとしている光線攻撃から逃れようとする。


「もう遅い。その身に喰らえ」


言葉と同時に純粋な光が更に強く発光を始め、ゆらゆらと刀身周りを静かに揺らめく。


レルゲンが一度に放てる限界の一撃が解放され、大気を、そして床などの室内装飾を焦がしながら大出力の光線が未だ痺れているヴァネッサを丸ごと呑み込んだ。


その後も光線は収まることなく魔王城の壁面を貫き、白い光がどこまでも伸びてゆく。


ようやく光を失った黒龍の剣は、魔力を臨界点まで込めたことによる疲労は一切なく、寧ろその逆。


レルゲンは気づいていないが黒龍の剣には魔力を自らの糧に変えて、半永久的に新品同様の切れ味を維持する力が備わっていた。


だが、違和感レベルでは以前から思う時が何度かあり、今回もまた刃溢れが一切ない刀身を僅かばかり見たが、戦闘中にする思考ではないとヴァネッサに意識を戻す。


縦に振り下ろされた一撃をまともに受けたヴァネッサは、身体が真っ二つなりながらも、残った喉と口で悪態をついた。


「よくも、やってくれたわね。本当に」


消滅させられた部分がボコボコと沸き立ち始め、徐々に体積を増やしてゆく。


「今のが全力ね?だけど私を殺すまでいかない。残念だけど何度やっても無駄よ」


「本当にそうか?」


腹にまだ大きな風穴が空いているヴァネッサをを指差すと、すぐに修復を追加で済ませて涼しい表情を繕う。


「効かないわ」


「まあいい___それだけ分かれば十分だ」


ヴァネッサの額から汗のような液体が頬を伝って落ちてくる。


一度構え直すが、再び脱力状態になり魔力のみが膨れ上がっていく。


「セレス、何かする気だ」


レルゲンがセレスの前に立ち、庇うようにヴァネッサを見つめる。


グネグネと蠢きながら肥大化していき、どこから声を出しているのか分からないが、レルゲンに向かって宣言する。


「これから見せるのは私が持っている奥の手。

あなた達には到底どうにか出来るレベルじゃ無いわ」


肥大化してから一気に身体が圧縮される様に、ヴァネッサだった時よりも小さくなり、少女のような見た目になり語りかける。


「これが奥の手。ミミクリー・プレッション」


「ただ小さくなっただけじゃなさそうだな」


「レルゲン、注意して下さい。

先程よりも魔力が飛躍的に増大していますが、それよりも力を圧縮している様な、そんな嫌な感覚です」


少女の姿になったヴァネッサが、ニヤッと笑いながらセレスティアを見つめる。


「そっちの青髪の娘。いい線いってるわ。

私は普段から体内に溜め込んでいる魔力を解放して、それを更に圧縮して密度を上げてるの。


だから鉄よりも硬く、かつ衝撃にも強い身体になっているのよ!」


「物理攻撃には強いというわけか。厄介だな」


「さぁ、第二ラウンドを始めましょうか。

すぐに終わらせて上げるわ」


「すぐに終わらせるのは願ったりだ」


レルゲンが動き、ヴァネッサに迫る。

しかし、ヴァネッサは自らの身体からスライムの剣を出さずに向かい入れるように両手を広げる。


(鉄よりも硬いなら…!)


レルゲンが黒龍の剣に魔力を通すと光線攻撃前の状態になり、発射タイミングを今か今かと待機する状態になる。


伸びた刀身を念動魔術で圧縮し、身体を圧縮したヴァネッサの硬さと、刀身を圧縮した黒龍の剣を持つレルゲンとの圧縮の力比べが始まる。


「オオオオオ!!!」


両手を広げるヴァネッサの身体を、一撃一撃に覚悟を乗せて斬り込んでいく。


ガキィイン!!


初撃から剣と剣が衝突したような音が鳴り響くが、ヴァネッサの身体はそこから更に攻撃が当たった瞬間


皮膚部分が衝撃を吸収するように沈み込んでいき、物を斬る感覚とは大きくズレが生じる。


気色の悪い感覚がレルゲンの剣から腕に伝わってきたが、それでも連続で攻撃を繰り出して糸口を探ってゆく。


(硬いのか柔らかいのか掴みどころの無い奴だ)


「そろそろ無駄って分かってきたかしら?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ