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第二章 6話 薬学研究所 カノン・トスレティア 改稿版

「薬学研究所には我が

第二王女のカノン・トスレティアがいます。

彼女にはまだレルゲン殿は会った事がありませんでしたね」


「セレス、彼に案内をお願い出来ますか?」


「承りました。女王陛下」


ここでマリーが待ったをかける。


「お言葉ですがお母様。案内でしたら私が行います」


優しく諭すようにマリーに女王が告げる。


「いいえ、マリー。貴女にはハクロウを護衛につけ、

安全な部屋で待機してもらいます。分かってくれますね」


「承知致しました」


不満そうな口振りだが、女王のお願いを承諾する。

話しがまとまったところでセレスティアがレルゲンの元へ向かう。


「ではレルゲン、参りましょうか」


「承知致しました。女王陛下、マリーをよろしくお願いします」


「任されました」


薬学研究所、もとい魔術研究所に向かう最中、

昨日できるようになったばかりの

物質分離の念動魔術が早速役に立ったことをセレスティアに伝える。


するとセレスティアが少し笑い。


「対策を昨晩遅くまで話し合った甲斐がありましたね」


と返してきた。一部の貴族がこの会話を聞いたら白目を剥くだろう。


「全くです」


とレルゲンも笑って返すが、

その表情はどこか表面的なものだった。

頭を切り替え、気になっていた事を尋ねる。


「時にセレス様、フィットとはどのような人物なのでしょうか?」


「フィット伯爵は、第二王女であるカノンの「支援貴族」になります」


「なるほど、それでセレス様は私に案内を買って出て下さったのですね」


「それもあります」


というのも、マリーがもし案内役になっていたら、

フィットの支援対象となるカノンと修羅場になる可能性があったのだ。


「他にもあるのですか?」


ニコッと笑い、片目を閉じて


「内緒です」


と一言。マリーの命がかかっている以上、

隠し事は避けて欲しいのだが、屈託のない笑顔を見せられると、

マリーには関係ない事なのだと理解する。きっと個人的な事だろう。


それから少し歩くと、

植物園のような全面ガラス張りのドーム状の建物が姿を見せる。


「驚きましたか?」


「ええ、ガラスのみでここまで大きな建物は初めて見ました」


イタズラが成功した時の子供のような笑いを見せるセレスティア。


「いい反応ですね」


(セレス様。意外と柔らかいところもあるんだな)


「では、中に入りましょう」


「はい」


中へ入ると栗色の髪に、目には深いクマを蓄えた女性が出迎える。


「ようこそ、我が研究室へー」


(ここの受付か?)


と思いながらも、植物園の天窓を眺める。


「久しぶりですね、カノン。ちゃんと寝ていますか?」


(この方が第二王女か)


「今日で四徹目だよ。セレス姉。

朝寝ようとしたら「毒物だから至急成分を分析しろ」

とか言ってきた影のせいでね」


恐らくはもっと丁寧に頼み込んでいたのだろうが、

四日寝ていないならそう聞こえていても仕方ないだろう。


申し訳無さそうにセレスティアが苦笑いをする。


「それは悪い事をしましたね」


「で、そこの彼は誰だい?」


素早く騎士令を行い、自己紹介する。


「失礼致しました。私、新しくマリー殿下の専属騎士となりました。

レルゲン・シュトーゲンでございます」


「君がレルゲン君かぁ!噂は聞いているよ。

いやぁよく来たねぇ。植物くらいしか癒せるものはないが、

ゆっくりしていってくれたまえ。

それが終わったらぜひ私の研究を手伝ってくれるとありがたい」


ここに来る前にセレスティアから教えてもらったことから

警戒心を高くしていたというのに、

何だがこの覇気のない少女を見ていると毒気が抜かれてしまう。


見かねたセレスティアが助け舟を出してくれた。


「それでカノン。分析結果は分かりましたか?」


「分かったよー、ばっちり。毒だと言われていたからね。

その線で調べたら直ぐだったよ。

結果は黒──シアンの木の葉を乾燥させて粉状にしたものだったよ。

主に速攻性の毒で、急性の中毒症状を起こして死に至る。

控えめに言ってヤバい奴だね。どの国でも栽培を禁止しているのに、

どっかで隠れてやっているんだろうね」


「やはりそうでしたか。それだけ聞ければ十分です。

ご苦労様でした。ゆっくり休んで下さい」


「レルゲン君、また来ておくれよ」


カノンに一礼し、セレスティアが労いの言葉をかけ、

共に研究所を後にする。

研究室を出てから、セレスティアがレルゲンに問う。


「レルゲンから見て、カノンの事はどう見えましたか?」


「その気になればカノン王女はマリーに

盛られた毒を精製出来ますし、植物園もある。

疑う部分は多いですが、

私にはカノン王女が黒幕と通じているとは思えませんでした」


「そうですか、貴方を連れてきて良かったです」


ニコニコと笑うセレスティア。

彼女の狙いは、カノンの潔白を示したかったのではないかと

後々になって気づいた。


マリーに研究所での一件を説明したが、

やたらセレスティアとの会話について掘り下げられる。


暫くはマリーの食事にはレルゲンが

毒抜きの念動魔術をかけることになり、

マリーの部屋の付近に魔力糸を這わせる事に同意を貰う。


魔力糸について最初は嫌がってはいたが、

最終的には納得してくれた。


次に警戒するべきは、毒殺ではなく直接の暗殺だ。

真の黒幕がマリーの毒殺を失敗したと知れた時には、

また次の一手を打ってくるだろう。


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