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29話 毒ガス

レルゲンは振り向き様に黒龍の剣でジャックごと薙ぎ払ったが、首元に差し掛かった辺りで剣ごと掴まれて勢いが止まる。


「そう簡単に終わらせるわけにはいかないだろう。お互いに」


両者とも不敵な笑みを浮かべ、一度距離を取り合う。


一旦の速さ比べは終わり、今度は一撃の出力勝負に変わる。


ジャックは右手に魔力を集中していくと、すぐに収束して赤い光線を放つ。


レルゲンは今まで核撃を放ってきたどの魔物や人形よりも素早い発動に目を見開いたが、黒龍の剣を前に伸ばし魔力を込める。


今度は言葉ではなく剣で受け止めると、赤い光線は二つに分かれてゆき、レルゲンを覆い被さるように迫ってくる。


アッシュに止めを刺そうと放たれた核撃よりも数段高い威力で放たれた赤い核撃は、念動魔術によってこれもジャックの元へ返す。


すると、ジャックは核撃を打ち込んでいる右手はそのままに左手でも核撃を放ち、


同種の攻撃同士で相殺され、衝突による爆発が発生した。


ジャックは冷静に再び返された核撃の分析をし、威力の大小にではなく結果を引き寄せている事に気づく。


「どうやらその技、今の核撃も曲げられるなら威力の問題じゃねぇな。


もっと深い、"結果を最初に引き寄せて"いる。

名を名乗れ、エルフだった男よ」


「レルゲン・シュトーゲン」


「対等な殺し合いだ。俺からも名乗らせてもらおう。ジャック・ボロス。誇り高きフェンリルの王だ」


「フェンと同じ種族か」


ジャックはレルゲンの同じ種族扱いに憤りを見せる。


「そんな飼い慣らされた犬と一緒にするんじゃねぇ。フェンリルとは本来群れない者。


あんな半端者と同じとは聞き捨てならん」


フェンを貶された召子はジャックに一瞬向かって行こうとしたが、セレスティアが手を引っ張って止める。


「でもフェン君の悪口を!」


「大丈夫ですよ。その分までレルゲンが倍返ししてくれますから」


引き下がる召子を脇目に、ジャックの魔力が更に高まってゆく。


「また核撃か?」


何度やっても同じ事だとレルゲンは言いたげだったが、すぐに間違いだと気づく。


「核撃にはこんな使い方もある」


元々黒龍の剣と打ち合う事が出来るほど鋭利で頑丈な両手両足だったが


更に赤い核撃が両手の指部分に集中していき、真紅の輝きを見せる。


「お前も大概だよ、ジャック」


レルゲンは半ば呆れたように笑うが、すぐに表情を引き締め直して、出方を伺う。


(あの指に集められた核撃は間違いなく威力が圧縮されて強力になっている)


「構えろ。レルゲン・シュトーゲン」


真紅に輝く両手を携えて、レルゲンへと迫る。


「ハァァアアア!」


獣の声に近い咆哮を上げて勢いよく走り込み、レルゲンの直前で消え横から爪を立てて顔面へと迫ってくる。


しかし、しっかりと目で追っていたレルゲンは横目で浮遊剣を軌道上に合わせて、核撃が込められている指先を防御出来るだけの魔力を剣に込め、


剣と剣が打ち合うような衝撃が周囲に響きながら、指先が衝突しているとは思えない程の火花が飛び散る。


「…!」


ジャックは自慢の攻撃を二度も防がれたことに驚いたが、攻撃の強度が落ちることはない。


寧ろ魔王に力試しを挑んだ時の様な高揚感に全身が包まれた。


「いいじゃねぇか。お前ももっとやる気を出せよ。レルゲン・シュトーゲン」


「レル君、力が必要?」


胸のポケットからウルカが顔を覗かせるが、レルゲンはこの助け舟を断った。


「いや、今はまだいい。必要になったら頼む」


「分かった」


再びウルカはレルゲンのポケットの中に引っ込んだが、その様子を見ていたジャックが不思議そうに声をかけてくる。


「レルゲン、人間の癖に純精霊と契約しているのか?気の毒な奴だな」


「契約内容のことを言っているようだが、お前にそこまで言われる筋合いはないな」


それもそうだと言わんばかりに肩をすくめてジャックが憐みの表情を見せると


抗議の声を上げようとするウルカがポケットから飛び出そうとするので、入り口を塞いで抑える。


「今度はこちらからいかせてもらう」


レルゲンが黒龍の剣から氷華に持ち替えて魔力を込め、氷華から冷気が漏れ出ると、ジャックが攻撃に備えて身構える。


斬り上げの動作をした事により、地面から氷の棘がジャックに向かって這ってゆき、ジャックの周りに円を描くように伸びてゆく。


氷の棘がジャックを包み込むと、レルゲンはすぐさまブルーフレイムを出現させ


一本だけ弓矢状に形状変化させると、氷のドーム状に包まれたジャックに向かって放たれた。


ジャックはブルーフレイムの弓が発射されるのを魔力感知で気づいたが、どんな方法で攻撃をするのか興味があったため、敢えてレルゲンの攻撃を受けた。


ブルーフレイムの弓が氷のドームに当たる寸前に、斜線上にあるドームに小さく念動魔術で穴をあけ


内部でジャック共々爆裂した瞬間に入り口を閉じる。


大きな破裂音にも似た音が響くが、ジャックは蒸し焼き状態になったとしても軽い火傷程度で済んでおり、レルゲンの攻撃には落胆していた。


「逃げ場を塞いだまではいい。だが、一発分の火の魔術なんざどう喰らおうが同じ事だ。

無駄な魔力消費は……っ!」


突如としてジャックが膝をつく、レルゲンの狙いは逃げ場を無くして確実にブルーフレイムを当てることではなく、その後にあった。


「なにしやがった…!」


意識が朦朧となりながらもジャックはレルゲンに向かって吠える。


核撃が込められた爪で無理矢理に氷のドームを破壊するが、それでも意識を繋ぎ止めて置くので精一杯。


移動しようにも足が動かずにいた。

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