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27話 もう一つの影

向かってくる召子を真正面から受けるべく、アッシュが拳に白い輝きを放つ魔力を込める。


召子が何度も様々な角度から連続して攻撃を繰り出すが、アッシュは受けに徹して防御からのカウンター狙いで全て受け切った。


受けに成功しているはずが、召子の攻撃が少しずつ蓄積されていき、アッシュの拳からは再び鮮血が滴り落ちていた。


しかし、悪魔にとっては傷にもならない怪我は、召子の連続攻撃が終わった瞬間に回復する。


召子にとってはずっと密着状態を維持して、回復させる暇を与えないのがベストになるが、そう上手くはいかなかった。


傷口が深くなるのを覚悟の上で、アッシュは思い切り聖剣を打ち上げて後方へ跳んだ。


瞬く間に血は止まり、修復が完了する。

手の平を開閉して感触を確かめると、アッシュは少し口角を上げる。


「便利な身体ですね」


「悪魔だからな」


再び二人が打ち合いを始めるが、今度の打ち合いは横に走りながら

相手の横腹を狙った攻撃へとお互いが考えを変えた。


「何を考えている?」


「貴方を倒す方法です。回復され続けたら私に分はありませんから」


レルゲンはこの二人の会話を聞いて、召子がちゃんと一人でどうにかしようと足掻いているのを再認識した。


(そうだ、相手は悪魔。持久戦ではまず勝ち目がない。奴を倒すには大出力の攻撃がいる。

だが召子にはその手段がない。どう活路を見出す?)


召子は額に汗を掻きながらも、アッシュにどうやって聖剣の一撃を叩き込むか考えていた。


(やっぱりあの魔力で固められた拳以外のところに攻撃を当てるしかない。


でもそれは向こうも分かっているはず。だから咄嗟のフェイントは通用しない。だから!)


ヴァネッサと戦った時のことを思い出し、召子はアッシュに向けて決意する。


貴方を斬ります


召子の目の色がまるで魔力で包まれるような色味に変化すると同時に、聖剣が若干大きくなる。


アッシュは即座に勇者である召子の変化に気づき

拳のみに集中していた魔力を少しだけ全身に分配して、

攻撃力を犠牲に防御力を上げる動きを見せた。


だが、その程度の底上げでは召子は止まらない。


先程までのやり取りとは別人レベルに速くなった突進が、一瞬でアッシュとの距離を詰め切り、繰り出された聖剣の横薙ぎを防御力を上げた腕で受ける。


しかし、あっさりとアッシュの両腕を斬り飛ばして尚も首を狙ってくる召子の目は、もう転生者のあどけなさを微塵も感じられない。


(まるで別人だな…!)


斬り飛ばされたと認識してからは召子の聖剣を全て躱すことに専念し、腕が再生してから再度攻撃のために魔力を通す。


(あの攻撃を受ける時は全身の魔力を一点に集中する必要がある。


幹部クラスならそんなことまでしなくても良いだろうが、俺は技術でなんとかせねば)

 

ここまで召子の攻撃力が上がってしまうと、何度も腕や足の再生で大きく魔力消費をしてしまい、


アッシュの方が先に持久力切れを起こす可能性すらあった。


召子がアッシュを射程に捉えるために再び駆け出す。


しかしアッシュは魔術で上空に飛び上がり距離を取り直すが、召子もまた〈飛翔〉スキルで飛び上がり、詰めてゆく。


「お前も空を飛べるんだな」


「そちらこそ、羽をもがれた割に飛べるんですね」


「これは魔力制御で空中にいるに過ぎない。飛んでいるのではない」


「天歩の加護に近いんでしょうね」


この召子の一言に、アッシュは眉間に皺を寄せながら叫ぶ。


「あんなものと一緒にするんじゃない!"神が人間のみに与えた特権"と!」


アッシュの心が大きく乱れた瞬間、召子の姿が消える。


素早く背後に回り込んでからの一撃は、容易に肩口から腹にかけて刃が通り抜けた。


半身が裂けるように切断され、アッシュの体から鮮血が迸る。


修復しようと傷口に魔力が集まっていくが、致命傷に近いほど深く入った攻撃は、簡単には治らなかった。


アッシュは時間を稼ぐべく、召子に悪態をつく。


「勇者らしからぬ攻撃だな」


「私は確かに貴方達から見れば勇者でしょうが、私は私の事を勇者としては考えていません。


今戦っているのは勇者ではなく、最上召子ですから」


「ならば俺も最大限の敬意を込めて、この一撃を最上召子、お前に贈ろう。受けるがいい」


アッシュが必殺の一撃を放とうとした瞬間、もう一つの影が現れて発動する瞬間に割って入る。


「なんだぁ?やっぱり勇者が来てんじゃねぇか」

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