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23話 恩義

「行きます!」


レルゲンとマリーがヴァネッサに向けてコンビネーション攻撃を仕掛けていた所に、召子が空いている背後から斬りかかる。


「貴女もいい剣を持っているようね…!」


「剣だけかどうか、確かめてもらいます」


召子が連続でヴァネッサに斬りかかるのを見て、一旦レルゲンとマリーは下がる。


「三人同時でもいいのよ?」


全員でかかって来るように挑発するが、

今まで見せた事の無い程に気合いが乗っている召子を肌で感じた二人は、


ヴァネッサの言葉を意に返さずに距離を取った。


挑発に乗ってこない二人を脇目にヴァネッサは一瞬残念そうな表情をしたが


直ぐに召子を舐めていた考えを改めることになる。


(この娘、攻撃は単調だしまだまだ坊や達より遅い。でも、一度でも受けを誤ったら致命的になる…)


それは召子から発せられる勇者としての圧なのか、召子本人が発する圧なのかは定かではないが

ヴァネッサは警戒するに値する何かを感じ取っていた。


「やぁああ!」


短い気合いの声と共に、何度も攻撃をする召子の剣を受けるのではなく横に身体を捻り

そしてステップを踏みながら躱していく。


「この…!」


自分の起こしている逃げに徹する行動に苛立ちを覚えたヴァネッサが、長い足を伸ばして召子に回し蹴りを繰り出す。


ヴァネッサの動きの機微に気づいた召子は聖剣の広い腹部分を使って防御するが


数メートル程吹き飛ばされる程に純粋な力の差がそこにはあった。


だが、召子は再度進むのを止めずに尚も攻撃を繰り返す。


レルゲン達は構えを解除し、召子が単独で戦っているのを観察していると、一つの変化に気づいた。


「なぁマリー、召子の剣ってあそこまで横に広かったか?」


「ううん、私の神剣と似ていて召子の場合は戦っている最中だけ大きくなっているんだと思う」


「そうだよな。俺達が加勢する必要も無さそうにも見えるし、これなら」


召子一人でヴァネッサに勝てるのでは無いか…?と感じる程に、確信に近い予感があった。


ヴァネッサに突き進んでいく召子の視界の端には、何個も新しく獲得したスキルが表示されてゆき


更にヴァネッサは額に汗を掻きながらも召子の攻撃を躱しながら受け流す。


(この娘、さっきよりも確実に強くなっている…!一合やり取りをする度にどんどん速さも重さも、そしてキレまでも上っていってる。


一体どこまで強くなるのか…ゾクゾクしちゃう!)


召子の横薙ぎ攻撃を、上体を逸らして躱し聖剣を蹴り上げ、武器を手放させようとするが、固く握られていた手からは聖剣は離れない。


代わりに召子の体制が、地面から足が離れるほど大きく浮き上がり、再び地面に足が付くまでコンマ五秒程。


この間、ヴァネッサの右腕へ瞬間的に込められた魔力は拳を赤く輝かせ、真っ直ぐ召子へ向けて放たれる。


しかし、召子は拳が当たる寸前に〈飛翔〉で距離を取りそのまま空中に浮き続ける。


「あなた、空も飛べるのね」


「ええ、貴女は武器を使わないんですか?」


「あら?勘のいい子ね。今日は戦闘するつもりはなかったから持ってきていないのよ」


「戦い辛そうにしていると思いました。このまま戦いますか?


私は戦う度に、やり取りをする度に強くなりますよ。

それでも構わないなら幾らでも付き合います」


「それもそうねぇ」


ヴァネッサがレルゲンを一瞥した後に、再度召子へと向き直り、両方の拳に赤い魔力を込め直す。


まだ戦う意思を見せたヴァネッサに応えるべく聖剣を構え直したが


やはりこれ以上召子を強くするのは得策では無いと理性が勝ったようで


赤い魔力が完全に消え失せ、レルゲンを連れ帰るのを諦めたヴァネッサは背を見せて歩いて引いてゆく。


どう見ても無防備な後ろ姿だが、

今ここでヴァネッサを更に追い詰めるのは危ないと居合わせた全員が感じ取っており


そのまま当初の予定通り撤退することを選択する。


「また来るわ、坊や達。

どうやら足掛かりは掴んでいるようだけど、それではまだまだ甘い。


万全の私とやるまでに、もっと強くなっていてくれると嬉しいわ」


完全に影に姿と魔力が吸い込まれるように消えてゆき、ヴァネッサはレルゲン達から姿を暗ませた。


最終的に撤退を選択させた召子の功績は大きく、レルゲンとマリー、セレスティアの三人で攻め立てる以上の圧をかけ続けていた召子に感謝の言葉をかけた。


「ありがとう召子。本当に強くなったな」


「これはレルゲンさんがメテオラで勇気づけてくれたおかげなんです。それが今、少しだけ返せた気がします」


「貸し借りではないから、そんなこと言われても困るぞ」


全員が困った表情を浮かべるレルゲンを見て笑いを浮かべて、ヴァネッサを追い返したことを讃えあった。

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