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22話 それぞれの覚悟

(奴のこの異様な余裕はなんだ?

まるで見下ろされているような…)


「何となくは気づいているようね?

でも私の口からは教えてあげない。教えられて気づくのと、自分で気づくのは全然強くなり方が違うの。


私は貴方がこんな所で足踏みして欲しくないとは思うけど、自分で気づくまでは教えてあげない」


「何をごちゃごちゃ言っている」


「だから自分で気づくまでは何度でも相手になってあげるわ。貴方を連れ帰った後でね」


自分勝手な物言いにをするヴァネッサに苛立ちを隠せなかったのは、マリーとセレスティアだった。レルゲンの両側に立ち


「随分とウチの夫を気に入っているようだけど、そんな簡単に渡すと思ってるの?」


「冗談もそこまでいくと不愉快ですね」


二人とも神と名のつく武器に魔力を通すと、白い輝きを放ちながら命令を今か今かと待ち望んでいるようにも見える。


「それは聖属性の武器ね。坊やより貴女達の方がまだ真髄に近いのかも」


「真髄…?」


「何を訳の分からないことを…!」


マリーが白い輝きを放つ神剣を上段に構えて振り抜くと、余裕たっぷりに片手で受け止めようと右腕を頭の上にもってくるが


マリーは受け止めようとした腕ごと絶対切断の加護を使って斬り込んでみせると、気合いの声を剣を振る途中から上げる。


「やぁぁぁあああ!!」


声が響くと同時に神剣の輝きがより一層と増してヴァネッサに襲いかかる。


白い輝きの変化に寸前で気づいたヴァネッサは受け止めることを中断して後方に飛んで回避する。


(あのまま接触すれば間違いなく斬られていたわね…!私が押し負けるなんて!)


マリーを賞賛するのも束の間、今度はセレスティアの大質量の氷の塊が上空から降ってくる。


氷の外側を白い輝きが薄く覆いながらヴァネッサに向かって押し寄せるが、これも一度上空へ跳んで砕こうと考えたが素直に避ける。


大きな土煙が上がって会場が完全にセレスティアの攻撃で天井が破壊され、ぽっかりと空いた穴からは風が吹き抜けている。


レルゲンはマリーとセレスティアの攻撃がなぜヴァネッサに通じると思ったのか考えていた。


(マリーの剣を、セレスの魔術をなぜ途中で避けようと行動を変えた?


そんなの決まっている。俺が仕掛けた攻撃よりも有効打になると判断したからだ。


なんで俺より低い魔力量で構成されている攻撃が、俺よりも有効打になると判断したかが重要になる。

もしかすると、前にも何度か経験のあったあの…)


考えの整理がついたレルゲンは、試しに黒龍の剣に通常通り魔力を込めて上体を低くする。


「お前を斬る…!」


放たれた言葉と覚悟が呼応するように剣へと伝わり、剣が僅かに震え出す。


完全にマリーとセレスティアに注意が向いていたヴァネッサは


明らかに纏っている雰囲気が変わったレルゲンの遠距離からの一撃に反応して寸前の所で避ける。


先程まで全力の魔力解放をしてようやく傷を負わせていた時に比べれば、間違いなく魔力量は遠く及ばない。


しかしヴァネッサは攻撃を受け止めるのではなく、躱す手段を取った。


この反応を見てレルゲンは予想から確信へと考えが変化し、思わず笑みが溢れる。


「避けたな」


「この娘達の攻撃を見てもう自分のものにしたのね!

貴方のこと、ますます欲しくなっちゃう」


「誰がお前になどついていくか」


再び三対一の数的有利の状況でヴァネッサを追い詰め始めると、レルゲン達は更に攻撃の手を加速させる。


側から見ていた召子は、いつでも戦闘に参加出来る状態で待機して、


異様な雰囲気を纏いながら戦う四人を見ていたが、何故か自分の足が前に進まなかった。


それ程までに意思のぶつかり合いを繰り広げている攻防に参加できると、レルゲン達に加勢出来ると思えなかったのだ。


フェンとアビィを見ながらも、ただじっと見つめることに重視する召子。


(まだ"今の私ではこの戦闘に参加する資格が足りない"…!でもなんでそう思うのかが分からない)


加勢したい気持ちはある。

それでも足は前に進まない。


単純なレベル差かとも思ったが、先ほどのレルゲンが見せた"何でもないただの遠距離攻撃"を躱したヴァネッサが頭をよぎり、


これも多分違うと頭を振って頭をリセットする。


何故自分は参加できなくて、単純な総合戦闘力とでも言い換えられる物差しでは測れない攻防が繰り広げられているのか。


それは間違いなく元一般人と最初から戦士だった者との差。そこまでは召子にも理解できていた。


圧倒的に足りないのは何かを成し遂げたいと思えること。


ここで魔界に来る直前にクロノと戦い、そして一度は心が折れかけた時にメテオラでレルゲンに勇気付けられて宣言した時の事を思い出す。


あの時は温かく、かつ無限に力が湧いてくるような気持ちになった、誰かを護りたいという意思。


今でこそ拮抗している両者だが、いつまでこの状態が続くのかは分からない。


(私が入る事で、三人の連携が崩れてしまうかもしれない。でも…!ここでやらなきゃ私はきっとこの先戦えない。


レルゲンさん達の後ろで終わるのをただ待つだけになるかもしれない!

だから、私はここで…!


貴女に勝ちます。ヴァネッサ・ヴァロネッサ)


召子がヴァネッサを見つめ、聖剣を構えて突っ込んで行く。

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