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20話 奴隷市

「大変お待たせ致しました。誇り高き悪魔の皆様。今宵はなんと、あの魔王軍幹部のヴァネッサ様がいらっしゃっております!


そして今回のメインイベントは、我らが魔王軍に適正のある悪魔達をお買い上げ頂いた場合


奴隷紋を刻み、ヴァネッサ様直属の軍に加入する事が決定しております。


これ程までに名誉な奴隷紋が今までにあったでしょうか?いや、ない!


と言うわけでメインイベントが始まるまではしばしいつも通りの奴隷市をお楽しみ下さい。


勿論!メインイベントに登場しないまでも、今回の奴隷市は特別な品物も数多く取り扱っております。


それでは張り切って参りましょう!エントリーNo.1!」


最初からマリーは司会の言葉を聞いて分かりやすくゲンナリするが、メインイベントまでは少し時間が空くようで、


会場の後ろでレルゲン達はフードを目深に被って目立たない様に努める。


セレスティアの複合魔術のおかげで魔力量の偽装まで完璧に演出しているはずだが、


先程すれ違った巨大な魔力を持つ、この奴隷市での親玉がやってくる。


「あら?やっぱり来てくれたのね!嬉しいわぁ」


「魔王軍に買われる奴を見に来ただけだ」


「そうなの?まぁでも奴隷紋を刻む所を見るだけでも楽しいものね。


私はもう直ぐ裏に回るから、何か買いたい奴隷が出てきたら遠慮なく言って頂戴。

二割引きで優先して売ってあげるから」


「そうか。その時が来たら頼らせてもらうよ」


ヴァネッサは片目を閉じて要人専用と見られる幕を潜り姿を消す。


毎度のことながらあの巨大な魔力量を垂れ流しているのに当てられると気分が悪くなりそうになる。


興味の無い奴隷市が展開されていくのをただ眺めていると、ようやくメインイベントの魔王軍に入る面子の競りが始まるようだ。


競りと言っても通常の品物を競るのとは違い、あくまで決定権は魔王軍幹部のヴァネッサにある。


つまり、これは買う側が値段を競い合うのではなく、買われる側が自分の持っている力を見せて、買ってもらう為の競りなのだ。


一人一人悪魔が力を見せてゆく。

審査するヴァネッサの一存で決まる競りは、普段と違うやり方に会場からは割れんばかりの歓声が常に上がっていた。


単純に魔力量を誇示する者、膂力をアピールする者、洗練された武術や魔術を披露する者など多岐に渡るが


ヴァネッサはどれもピンとこないようで、会場が少しづつ冷めていく。


司会は慌ててヴァネッサの元へ確認に行くが、どうやらあんまり相手にされていないようで、すぐに追い返されていた。


(エルフの坊やみたいに尖っている人材はどこかにいないものかしら…?)


ここで審査員のヴァネッサが何か閃いた表情をして、司会を呼ぶ。


すると司会は真っ直ぐにレルゲンの元へとやってきて、あるお願いをする。


「貴方がレルゲン殿か?

申し訳ないがヴァネッサ様は貴方を魔王軍に引き入れたいようだ。


本来エルフは魔王軍とは犬猿の仲だが、軍には入らなくてもいい!


この冷め切る寸前の空気を変えてくれないか?」


周りが心配そうな目をしているが、これは逆にチャンスかもしれない。


ターゲットは椅子に座って止まり、立ち上がるまで数秒はかかる。やるなら今だ。


レルゲンが周りに心配そうな表情をされると、優しく微笑んでから、顔を引き締めて魔力糸で思念を飛ばす。


(俺は今からヴァネッサに攻撃を仕掛けて戦闘に入るつもりだ。


みんなも戦えるように準備してくれ)


(ここで戦うの?)


(倒せなかった場合は即離脱だ。無理に深追いしなくていい)


((了解))


レルゲンが司会に向き直し出る旨を伝えると、安心したような表情になる。


「ありがとう!さっ!こっちで力を披露してくれ」


奴隷市の中心に魔剣を何本も携えたレルゲンが現れると、ヴァネッサが大きな音を響かせて拍手をする。


観衆はヴァネッサに引っ張られるように拍手を贈ると、レルゲンが新しく手に入れた氷華を手に魔力を込める。


始めは軽く魔力を込めて興味を惹きつける。


剣を振ると氷の華がレルゲンの周りを囲むように咲き誇り、更に魔力を込める量を上げて剣を上空高く掲げると


冷気からなる蒸気のようなものが周りに向かって立ち上る。


氷華が鞘に納められると、ヴァネッサは大変満足したようで拍手をレルゲンに贈り、魔王軍の一員になってもらいたいと告げる。


しかしレルゲンはヴァネッサの方へは向かず、居合をする体制を取って腰を落とす。


(全魔力、解放)


赤い魔力がレルゲンの全身から噴き上がり、更にヴァネッサの興味を引き寄せる。


赤い魔力が全て氷華に込められると、ヴァネッサの方へと振り向きながら剣を思い切り抜いた。


すると一瞬でヴァネッサの足元から首元まで氷で覆われて身動きを封じ


何が起きたかまだ理解出来ていないヴァネッサは、「えっ?」と声を上げるのみで、まだレルゲンが敵対心をもって凍らせていることに気づいていない。


(ここだ)


引き抜いた氷華に再度魔力を込め直し

固まっている無防備なヴァネッサを中段からの薙ぎ払いで真っ二つに斬り裂いた。

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