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15話 プライド

体制が大きく崩れた凍刃龍の翼が正面を向き、召子は攻撃の要と思われる翼目掛けて聖剣を振るう。


フェンは横を向いて比較的狙いやすくなった首元へ、進化で手に入れた強靭な鉤爪を立てるように切り裂き攻撃を。


召子は渾身の力で翼へと聖剣を振り下ろしたが、剣同士で打ち合うような音が響き渡り大きく弾かれる。


「硬い…!」


一方のフェンは氷で出来た硬い外殻を弾き飛ばしながら、僅かに凍刃龍の鮮血が散る。


硬い翼を無理矢理斬ろうとしたせいで召子の手から全身にかけて大きく痺れると


すかさずフェンがフォローに入って召子を回収し離脱する。


体制が元に戻りかけた時、レルゲンが浮遊剣にしている二本の剣に魔力を込めて、自身より先に先行させる。


狙うはフェンが弾き飛ばした外殻が大きく削れた防御の薄い部分


正確に狙い澄まされた二撃は、首元を捉えかけたが、硬い氷の刃で出来た翼で全身を覆うように防御の体制を取る。


硬い翼で完全に防がれた二本の剣は大きく弾かれたが、最後の炎剣だけは違った感触があった。


(朱雀も翼で防御していたが、硬さで言えば凍刃龍の方が上だな…だが炎剣なら!)


レルゲンの魔力が通された炎剣は、振り下ろすと同時に炎を吐きながら凍刃龍の自慢とも言える硬い翼を溶かしながら傷をつけてゆく。


天敵に成り得る属性を持つ剣を凍刃龍は見つめて、近くにいるレルゲン達に向けて大きく翼を羽ばたかせて冷気を纏った暴風を浴びせると


ヒート・アーマーで耐寒バフをかけていたレルゲン達の足元が瞬間的に凍り、地面と接着状態にする。


身動きを封じられた状態で氷の範囲攻撃をまともに喰らったレルゲン達は、耐寒バフを強制的に剥がされてしまう。


(セレスのバフが無かったら今頃は死んでいたかもな)


すぐにセレスへ前衛組にバフをかけ直すように叫び、足元を固定している氷を剣の柄で叩いて破壊して距離を取り直す。


初手の攻防は少しばかりレルゲン達が押す展開となったが、雄の背後にいる雌の存在も気になる。


現にマリーが初撃で決めそうになった瞬間、僅かばかりだが魔力を高めていたのを中衛から観察していたレルゲンは見逃さなかった。


雄から手を出すなとは言われていても、完全に任せ切るわけではなさそうだ。


下手に追い詰めすぎると途中で出張ってくる可能性すらある。


やるなら一瞬の内に倒し切ってしまった方がいい。


幸いフェンが外殻を既に何枚か吹き飛ばしているので、素材の採取に関してはもう問題がない。


手を抜く必要も無いと判断すると、レルゲンがウルカとセレスティアを呼んで、火の上位魔術の連続射出を開始する。


「「ブルーフレイム・アローズ!!」」


数十にも上る火の上位魔術が凍刃龍に襲いかかると、相殺しようと氷のブレスで対抗するが、


直線軌道しかないブレスでは薙ぎ払う他はない。


初弾は相殺されたが、次弾から先の連続発動には凍刃龍はなす術もなく火の上位魔術を受け続ける。


「ぐっ…!おのれ!」


凍刃龍は翼を最大限に広げ、自ら連射魔術の的を広げたが


一気に閉じる事で氷の風圧を発生させ、装填されて待機させていた状態の魔術をも消滅させる。


風圧の勢いでレルゲン達は顔を覆い、魔術の発動を強制的に止められると


今度は凍刃龍の方からレルゲン達に向かって突進を開始する。


「翼の刃を使った攻撃が来るぞ!セレスはもっと下がれ!」


刃の間合いに入ると同時に、凍刃龍は前腕と一体化している片翼を思い切り振り上げる。


すかさず浮遊剣にしている二本を念動魔術で、攻撃してくる射程の延長線にクロスさせるように重ねて防御する。


(全魔力、解放)


身体から赤い魔力が噴き上がり、全身を超強化して、前に待機させている二本の剣も赤い魔力を帯びて衝撃に備え


魔力が噴き上がる勢いで凍っていた地面に亀裂が入り、片足を地面に叩きつけ、身体を固定させると、必殺の一撃が振り下ろされた。


盾にしていた二本の剣は念動魔術で強力に空間に固定されていたが、数秒拮抗した後に弾き飛ばされる。


それでも翼の刃での攻撃を強行してくる凍刃龍は、レルゲンに狙いを定めて尚も振り下ろす。


炎剣を両手で握り直し、足元と炎剣に全身から噴き上げていた魔力を二箇所に分散させながら集中させる。


大きな衝撃音と共に、足元には小さくクレーターが出来ており


半分以上は威力を相殺したはずの攻撃とは思えない程の、押し潰して切り裂かんとする一撃がレルゲンの全身を軋ませる。


「ぐっ…!!」


全力の念動魔術で身体を上へ上へと持ち上げようとする力を以ってしてようやく拮抗できるレベル。


「エルフの癖によく耐える…!だが!」


凍刃龍の全身から魔力が噴き上がり、翼へと集中すると、釣られるように翼から魔力で出来た冷気が迸る。


どんどんとレルゲンが押し込まれて行き、遂に膝を地面に突く。


最後の一撃と言わんばかりに更に魔力を上げた凍刃龍の表情は笑みを浮かべているようにも見える。


「はっはっは!よく頑張ったが終わりだ!」


押し込まれる寸前でレルゲンがその名を呼ぶ。


「ウルカ!」


「「第二段階、全魔力解放!」」


レルゲンの全身から赤い魔力が一瞬消え、今度は明るい青色の魔力が噴き上がる。


身体から溢れる魔力は行き場を求めて大きく揺らめいたが、少しずつ突いていた膝を浮かし始め、


遂には完全に立ち上がってから気合いの込められた声を上げて氷の刃を弾く。


よろけるように体制を崩した凍刃龍は、体制以外にも心が大きく揺れていた。


自身の全力の一撃を真正面から受け止めて、尚もまだ立っているこのエルフの男を見ながら声が漏れる。


「貴様、ただのエルフでは無いな!何者だ!」


「さあな」


凍刃龍が隙だらけの会話を持ちかけた時には、背後からマリーと召子が全力の一撃を構えて待っており、


自慢の刃が付いている肩口にかけて狙いを済ました一撃を振り下ろしたが、ここで乱入者が現れる。


マリーと召子に向けられた氷の槍は、正確に飛び上がった二人を捉えたが、


レルゲンの矢避けの念動魔術で軌道が逸らされると理解している二人は氷の槍を確認はしたが攻撃は中断しない。


深々と神剣と聖剣によって斬りつけられた肩からは大きく血が吹き出したが


普段からとてつも無い重量を支えている翼を落とすまではいかなかった。


「ガァァア!!」


言葉を話す余裕が無くなった凍刃龍は、痛みに声を上げて討伐まであと一歩という所。


しかし、深々と斬りつけられた肩口から滴り落ちる血を凍らせ傷口ごと凍らせて塞ぎ


応急処置にも似た判断の早さを見せた。


「あなた、敵は残念ながら強いわ。私も戦う」


「ぬぅ…良かろう…」


手負いの凍刃龍と、もう一体の万全な状態の凍刃龍の雌を同時に相手取る戦況へと変わり


レルゲン達は再び陣形を構え直す。

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