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8話 イビル・ラプトル

イビル・ラプトルと呼ばれた魔物は青年の悪魔の腕を噛みちぎると、それを咀嚼して飲み込む。


すると、高純度の魔力が循環していた腕を吸収したことで、更に体は大きく成長し、牙も鋭さを増していた。


青年の悪魔が腕を再生させようと意識を向けるが、新しい腕は生えてこない。


「どうして!くそ!なんで新しい腕が生えないんだ!俺はこいつを倒さなきゃいけないのに!」


何度も腕を生やそうとするが、魔力が噛みちぎられた腕に集中させることが出来ていない。


突発的な錯乱状態で魔力を操りきれずに、腕の再生が出来ずにいると見たレルゲンは


黒龍の剣を浮遊剣にしてイビル・ラプトルの後ろから深く突き刺すと、苦痛の声を大きく上げる。


「ガアァァァアア!」


突き刺した黒龍の剣を無理矢理に念動魔術で引き抜くと、傷口からイビル・ラプトルの血が噴き上がるが、


徐々に血は治って行き完全に傷口が塞がる。


青年の悪魔がレルゲン達の介入を見て、罵声に近い抗議の声を上げる。


「手を出すなと言っただろう!なんで勝手なことをするんだお前達は!」


「その治らない腕ではどうにもならない。


その必死な表情から察するにお前がこの魔物を呼び出したんだろう?」


「…!そうさ、コイツを呼び出したのは俺だ」


レルゲンに向かってイビル・ラプトルが突進してくるのを


念動魔術を発動させて全員がスライドすることで躱しながら尚も青年の悪魔と会話を続ける。


「なぜこんな街中で呼び出した?」


「そんなの決まっている、俺がイビル・ラプトルを倒す所を誰かに見てもらう必要があるんだ。

そうでなければ倒す意味がない。


知らないのか?イビル・ラプトルを倒す事ができる戦士は一人前の称号を与えられるんだ」


「そんなことは知らないし、興味もないな。

それを言うなら、あの魔物を倒せない君は未熟な戦士と言うわけだ」


「黙れ、お前から殺すぞ」


青年の悪魔の魔力量が感情に呼応するように跳ね上がり、噛みちぎられた腕も瞬時に再生する。


ようやく治った腕を見て口角が上がり再び剣を握り直してイビル・ラプトルに正面から突っ込んでいき、

再び一対一の戦いが再開される。


それを再び観戦するレルゲン達だが、この身勝手な悪魔をどうするべきか。


今でこそイビル・ラプトルはこの場に留まってはいるが、いつ暴れ回るか不透明だ。


ここで、先程の老悪魔がレルゲン達に話しかけてくる。


「我々下級悪魔ではあのイビル・ラプトルはどうにもできません。


今戦っている青年はどうやら私達よりも強い悪魔のようですが、それでも一人では難しいでしょう」


老悪魔はレルゲンの剣を見て


「先程の攻撃を見ていました。あなた方なら問題なくイビル・ラプトルと渡り合えるでしょう。


どうかあの無鉄砲な青年にお灸を据えてあげて欲しいのです。


助けてくれとは言いません。

結果的にあの青年が命を落とすとしても、呼び出したのがあの悪魔ならそれもまた運命。


今後似たような事が起こらない為にも、お力を貸して欲しいのです」


「力を貸す事は構わないが、貴方は一体…?」


「私はこの街の長です。ですので、この街の秩序を護る責任がある。

どうか、イビル・ラプトルをよろしくお願いします」


「分かった。今から見せるものは他言無用で頼む」


「心得ております」


レルゲンが長に向かって頷き、全員に指示をする。


「マリー、一番危険な前衛を任せたい。

セレスはディシアを除いた全員にバフをかけたら牽制してくれ。


召子はフェンとアビィを元に戻して、アビィに回復魔術を全員にかけるように指示

フェンと共にマリーの補佐を頼む」


「「了解!」」


全員が陣形を形成して戦闘体制に入るが、青年の悪魔を助けるには一歩遅かった。


再び突っ込んで行った青年の悪魔は大きく剣を振りかぶって斬りかかったが


正面からの攻撃をあっさりと躱されて、後ろを向いたかと思えば長い尻尾で薙ぎ払って勢いよく吹っ飛ばされる。


軽くクレーターができるほど建物の壁面に叩きつけられて、青年の悪魔は気を失ってしまう。


捕食しようと近づくイビル・ラプトルにすぐさま話を切り上げたレルゲンが、魔剣三本を浮遊剣にして背後から貫いたが


痛みに耐えながらも気絶した青年の悪魔を咥えて持ち上げて、全身を噛み砕いて捕食してしまう。


(遅かったか…!)


悪魔を完全に捕食したイビル・ラプトルは腕を捕食した時とは比べ物にならない程巨大な魔力を持ち


大きさも数メートルから倍は大きくなっているように見える。


今、魔力量だけは高い悪魔を片っ端から食い漁られては


幾らレルゲン達でも苦戦する事は必至。

一番避けたい魔王への報告も避けられないだろう。


イビル・ラプトルが移動しようとその場を後にしようとする。


(この魔物が襲う悪魔を探しているのは、恐らく…)


レルゲンが剣に魔力は込めずに魔力解放を半分程すると


それに反応したイビル・ラプトルはレルゲン達に向きを変えて、大きく咆哮を上げて威嚇する。


「グアァァァァアアアア!!!」


これからお前を喰うぞと言わんばかりに猛烈な勢いでレルゲンへ向かって突進を始める。

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