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46話 研究者による現地調査

帰還したレルゲンは、カノンとディシアがいる薬学研究所に足を運んでいた。


二人はレルゲンが来たのを見ると、カノンは何だか含みのある笑顔を見せてディシアを見るが


カノンの視線に気づいたディシアは顔を逸らして紅茶を口に運んでいる。


疑問に思ったレルゲンは何かあったのか問うが


「別に?それでレルゲン助手は、一体どんな御用かな?」


レルゲンの疑問には答えなかったが、ここに来た本題を話すようにカノンが問いかけてくる。


「悪魔の根城に通じていると思われる転移魔法陣を見つけたんだが、分からないことが多くてな。


二人に知恵を借りようと思って」


「ほほう、奴らは転移魔法陣を使って複数の国に、そして同時に現れた訳か」


カノンが顎に手をつけてレルゲンの話しを聞き、納得の表情をする。


「それでしたら一度現地に行って見てみるのが一番早いでしょう。ここからの距離はどれくらいですか?」


ディシアは足が悪いが、こうした時のフットワークの軽さは光る物があった。


正にヨルダルクのダンジョンの時と言い、現場主義なのだろう。


「俺の魔術で飛んでいけば、ここからそう遠くない場所にある。

早速で悪いが、二人とも来てもらえるか?」


二人とも頷いてすぐに出発の準備を始めると、レルゲンの念動魔術で運んで貰えばいいため

あれもこれもと計測用の機材を多く準備している。


一通り揃い二人は満足したのか、レルゲンに向かって


「荷運びは任せたぞ助手君」


「よろしくお願いします」


と両手では抱えきれない程の機材の山をレルゲンに託す。


機材はどれもデリケートなため、保険をかけて魔力糸による接続で念動魔術をかけて運ぶ事に。


「結構持っていくんだな」


「どんな環境か調べることも大事ですから、これくらいは常に持ち歩きたいのが正直なところです。


私達では運べないので、貴方の魔術には大変助かっていますよ」


ディシアがレルゲンを見つめて感謝の意を伝えると


「これくらいならお安いご用だよ」


と軽く返して、三人で悪魔が用意した転移魔法陣に向けて出発する。


着いてからは基本的な計器である温湿度計や魔力濃度計、風向やレルゲンにはよく分からない形状の機器を指定された場所へ立ててゆき


カノンとディシアが計測結果を各々記録してゆく。


「何か分かったか?」


レルゲンが二人に問うが、一度計器で観測を記録してから、バラバラな情報を繋ぎ合わせている最中のようで


「ここが地脈の溜まり場のような場所は分かったけど、悪魔にこんな土地感があるとも思えない。


私達ですら来てみて初めて知った場所だからね」


ディシアが転移魔法陣を確認し終えて地上へ戻り、「これは私見ですが…」と前置きして話始める。


「いくつか分かったことを簡単に説明します。

まずは悪魔に転移魔法陣に詳しい者がいる事。


あの規模の大きさになると、数千キロ以上の距離が渡れると考えていいでしょう」


「数千キロ…俺も何処に通じているのか距離感を掴みたかったが


実際数千キロとなるとここからどの辺になるんだ?」


ディシアは首を振り


「少なくとも周辺諸国以上の距離が離れています。


それこそ王国にもある深域に通じる魔法陣も大規模と行っていいですが


その深域よりも遥かに遠い、"深域の先"とも言える場所に繋がっているかと」


レルゲンとカノンの顔が若干引きつるが、それは気に留めずに更にディシアが続ける。


「もう一つは中央王国がナイト・ブルームスタットの研究所から持ち出した研究資料よりも


私が所属していたヨルダルクにある技術よりも高いレベルで構築されていることです」


カノンがディシアの解説に付け加えるように


「まだ彼の研究所から持ち出して解読出来ていない資料も多くある。


ディシア君と日夜研究は進めているが、それでもまだまだ時間が足りないのだよ」


「つまり、解読が進めば何か分かる可能性があるのか」


「そうですね。あくまでも可能性の話にはなりますが、あり得ない話ではないかと」


ここで、レルゲンが閃いたように表情が明るくなり、ディシアの肩を両手で掴む。


驚いたディシアは若干目を見開いたが、真剣なレルゲンの顔から目が離せなかった。


「ディシアはナイトの研究所に行ったことってあるか?」


「いえ、資料でしか確認した事はありませんので、行ったことはありません」


「もしかしたら、ディシアにしか気付けない何かがまだ残っているかもしれない。


護衛は俺がやるから、一度見に行ってみないか?」


「私としてはありがたい申し出です。いつか行ってみたいと思っておりましたから」


レルゲンがディシアの参加を取り付けると、当然のようにここにいるもう一人の研究者にも声をかける。


「カノンも行くだろ?」


「いんや、私は何度も足を運んだからね。今回は遠慮するよ。


非戦闘員が二人も行くと助手君の負担も大きいだろう。二人で行ってきたまえよ」


護衛するのが一人でも二人でもそう大差はないのだが、行く気がないのなら無理に誘っても仕方がない。


「そうか、なら今回は二人で行こう。

ディシアも構わないか?」


「え、ええ。私は何人でも構いません」


計測を記録した紙をまとめて機材を回収して中央へ戻り


またすぐにディシアを連れて深域へと通じる転移魔法陣の上に乗り、二人が青い光と共にその場から消える。


二人が深域へと行ってからカノンが呟いた。


「頑張りたまえ、ディシア君」


空を見つめるカノンは眩しい陽の光に目を細めて大きく伸びをして


「さっ、研究の続きと行くか」


目に軽いクマを蓄えた第二王女は、再び薬学研究所に戻るのだった。

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