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40話 パロライト①

「やはり対軍戦闘に関して君の使う念動魔術は真価を発揮するな。やはり、苦手にしている分野で攻めさせてもらおうか。


フォールン・ライトニング」


快晴だった空の天気が瞬く間に雲に覆われ、生暖かい不快な風が肌を撫でる。


次第に辺りが暗くなり、ポツポツと雨が降り始め、一気に雨足が強くなる。


雨が地面に落ちる音が響き、すぐに雷が鳴り始める。


レルゲンが天候操作による悪魔が発動した魔術が効力を発揮する前に、炎剣を構え直して斬りかかろうとするが


雷鳴と共に地鳴りが響くことでレルゲンの意識は悪魔から近くに落ちた雷へと向けられる。


ここで最初に悪魔が言っていたことを思い出す。


「苦手にしている分野で」


レルゲンが直感と共に空を見上げると、白く輝く虎のような見た目の巨大な雷の集合体が顔を覗かせ


レルゲンとセレスティアに迫っていく。


「俺が軌道を曲げられない雷を使うというわけか」


「その通り。さて、これからどうしますか?」


(この規模の雷撃は一人では対処できないな)


「ウルカ、手伝ってくれ」


「待ってたよ!精密操作なら任せて!」


レルゲンが意識を集中し、目を閉じる。すると瞬時に水で出来た半円状のドームがレルゲンとセレスティアの周囲を包み込んでいく。


すると悪魔の指揮官は高笑いをしながら勝ち誇り、そのまま白く輝く虎のような雷を向かわせるべく腕を下ろす。


「白虎よ、白き雷よ!奴らを焼き殺してしまえ!フォールン・ライトニング。発動…!」


音よりも早く虎の光がレルゲン達を襲い、大きく土煙が上がる。


「ハハハハハ!!これで君もお終いだ!魔王様もさぞお喜びになるだろう!!」


すると土煙の中から聞き慣れた声が聞こえてくる。


「やはりこの侵攻は魔王復活と関係があるのか」


「なっ…!なぜまだ生きている!」


大きく狼狽し、精神的に大きく揺らめく悪魔の指揮官は二歩後退り


仕留めきれなかったレルゲンとセレスティアを見つめる。


「ある水龍が言っていたぞ、雷を完全に断つことの出来る水が存在するってな」


「なんだ、それは…そんな水があってたまるか!」


「超純水という名前らしいぞ。何でも不純物が一切ない水は、電気を弾くらしい」


「そんな、馬鹿な…」


大きく戦意を削がれてしまった悪魔の魔術師は、再び上位魔術の詠唱を始めるが


それはもうただの単一の魔術でしかなかった。


「セレス、あの指揮官を頼めるか?」


「お任せ下さい。あの程度ならば問題ありません」


レルゲンがセレスティアに指揮官を任せ、側近との一騎打ちに持ち込むべく足に魔力を集中する。


瞬間的に加速されたレルゲンの上段からの一撃は簡単と言わんばかりの余裕さを見せた側近に剣で防がれる。


悪魔の背後にある地面が衝突で大きく掘られたが、悪魔の表情は変わらない。


「お前、なんでそこまでの力を持っていながらあんな奴の下についている?」


「レウロ様は私に生きる意味を与えて下さったお方だ。仕えることに実力差など関係ないのだよ」


レルゲンは悪魔にそこまで出来た臣下の鑑のような態度は想像がつかなかったが、改めて誇り高き側近に名を問う。


「そうか、忠義高き悪魔の側近よ。名前は何という?」


「パロライト」


「パロライト、いい名だ。俺は中央王国の副団長___レルゲン・シュトーゲン。いざ尋常に一騎打ちを所望する」


「いつでも構わないぞ」


レルゲンが笑うとパロライトも釣られて口角を少しだけ上げる。


真剣勝負が始まると同時にパロライトの片手直剣が黒い魔力を大量に帯びて


レルゲンを魔力放出だけで押し込んでいく。


地面に足が突き刺さってからも徐々に押されていくレルゲンを


胸のポケットから顔を覗かせているウルカが心配そうに見つめる。


押し切られそうになった時に、レルゲンもパロライトと同様に魔力を炎剣に流し込み、再び魔力放出同士で拮抗する。


魔力と剣から発せられる火花がバチバチとせめぎ合い、魔力放出による力勝負では五部の戦いを繰り広げていた。


二人同時に鍔迫り合いを止めて距離を取り直すとレルゲンがパロライトに声をかける。


「パロライト、お前の階級はどこにある?」


「これから死ぬ奴がそんな事を知ってどうするのか問いたいが、教えてやろう。上から"三番目の階級"だ」


「そこまでの実力がありながら上にまだ二つの階級があるのか」


「絶望したか?」


レルゲンの魔力が際限なく上がってゆき、全身から真紅の魔力が放出される。


「絶望…?逆に聞くがどうしてこんなに実力が近い奴と戦う機会に巡り合って絶望するんだ?」


「知れた事を。その実力が近い私よりも更に二つ上がいるのだぞ___


ただ単純に実力が足される訳ではない。

今のお前では触れることすらできない領域の上位悪魔が存在すると言っているのだ」


それを聞いてレルゲンは更に歯を見せて笑って見せる。

その表情を見たパロライトは一言


「化け物が」


「お前にだけは言われたくないな」


再び二人が接近して、全身を巨大な魔力で包み込まれているレルゲンの身体能力強化がパロライトの剣を大きく弾く。


吹き飛ばされるように後退したパロライトは空中に立つ要領で勢いを殺して静止するが


更にレルゲンが構えた炎剣が薄くパロライトの腕を掠める。


傷ついた腕を即時再生しようとするが、傷口が焼ける事で軽い傷でも再生までに時間がかかる。


「厄介な剣だ」


そこから更にレルゲンは肉薄して無数に繰り出された炎剣による連続攻撃が


幾つもの細かい焼き傷を残し、パロライトの身体を焼いてゆく。


「くっ…!」


防戦一方のパロライトは何とかレルゲンの炎剣を弾いて体制を崩すが、ここからが念動魔術の真骨頂だった。


大きく空いたレルゲンの懐にパロライトが好気と見て距離を詰めるが


瞬間的に魔力が込められた黒龍の剣から短い光線が発射されて、パロライトを呑み込んだ。


「相変わらず厄介な術だ」


「それが取り柄なんでな」


レルゲンの念動魔術は、剣を用途わけしてスイッチするだけではなく


出来た隙を潰す役割も可能にする剣位一体の攻防を可能にしていた。


「これに魔術を更に加えるとどうなると思う?」


「させん」

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