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39話 スチーム・シップス

「そろそろ見学は終わりにしたらどうだ?」


指揮官と思われる悪魔が、やってきたレルゲンとセレスティアに向けて苛立ちをぶつける。


「そうだな、アンタの部下は軒並みやられて、残すはお前達だけだ」


「あまりいい気になるなよ。最下級の悪魔を倒したくらいで」


「そうか、やはり一番下であの強さか」


レルゲンが飄々と受け流すと、悪魔の指揮官は眉を少し上げて意外そうな顔をする。


「一番下と気づいていた割には余裕がないじゃないか?」


レルゲンは悪魔の返答には答えず、静かに炎剣を構える。


悪魔は杖ではなく、指に多種多様の宝石が散りばめられた指輪を嵌めた手を前に掲げ


召喚魔法陣を複数出現させる。


その数実に三個。

五段目が二体、四段目が一つの魔法陣から山のように出現する。


ハクロウが騎士団を連れてすぐにレルゲンの下へ駆けつけ、レルゲンの助けに入る。


「魔物はこっちで対応する。ボウズは悪魔を頼んだ」


頷いて返すと、ハクロウは騎士団のメンバーを連れて魔物の討伐に注力する。


再び悪魔二人とレルゲン、セレスティアの構図が出来上がると、悪魔は再度口を開く。


「お前達、メテオラにいた奴らだな?」


「それを知っているということは、お前が浮遊魔石を盗んだ犯人か」


「そうだとも。今からその浮遊魔石を使った戦での使い方を見せてやる」


悪魔が空に手を向けて伸ばし、そして唱える。


「来なさい。スチーム・シップス」


レルゲンとセレスティアが悪魔が手を向けた方向を見ると、無数の飛行船がこちらに向けて飛んできている。


(なんの為に旅客用の飛行船を持ってきた?)


レルゲンが疑問に思っていると、飛行船から樽のようなものが飛行船から何個も落ちてくる。


落下していく所は、騎士団と召喚された魔物が戦っている場所に近い。


地面に落ちた樽に大きい衝撃が加えられると、コンマのラグがあったが大爆発を引き起こし


魔物諸共騎士団のメンバーが巻き込まれてゆく。


「セレス、これは、この爆発はまさか!」


レルゲンとセレスティアが瞬時に悪魔二人から距離を取って投下された爆弾の対処に駆け出す。


「火薬石による爆発だと思われます!でも数が多すぎてレルゲンの念動魔術でも全て捉えるのは…」


「ああ、無理だ!ここまで数が多いと魔力糸を繋げないと受け切ることが出来ない。大元の飛行船自体を叩く」


「分かりました。いつでも行けます!」


レルゲンがセレスティアを念動魔術で連れて、降ってくる樽爆弾を掻い潜りながら飛行船へ向かっていく。


「させませんよ」


指揮官の悪魔が飛んでいくレルゲン達に向けて手を伸ばすと


完璧に調教された魔物達が一斉に核撃の光を口元に集中させる。


(自分の命までお構いなしに打ってくるのか…!)


無数の核撃が地面から雨の様にレルゲン達目掛けて上ってくる。


一つ一つの核撃が一本の大出力の核撃と同じ様な威力となってレルゲン達に迫る。


咄嗟に黒龍の剣に持ち替えて集中した核撃の外側に魔力を通してゆき、上空で飛んでいる飛行船の一隻に向けて軌道を変更する。


曲げられた核撃が飛行船に直撃すると、大爆発と共に飛行船が燃えながら墜落していく。


「ほう」


自身の策で飛行船を一隻潰された悪魔は、核撃によって消滅した手数を補充するべく再び召喚魔法陣を展開。

騎士団は再び魔物の対処に追われる。


その隙にレルゲンは黒龍の剣に魔力を込めて、残る飛行船に向けて連続で遠距離斬撃を放つ。


残り三隻まで数を減らし、最後の一撃を準備しようと黒龍の剣を構え直す。


しかし、音もなく背後に現れたもう一人の悪魔が、空中にいたレルゲンの背中を両手で強打して地面へ叩きつける。


「レルゲン!」


空中にいたセレスティアが即座に熱感知で悪魔が見えなくしていた隠蔽魔術を看破して

フロストジャベリンを放ち牽制する。


悪魔はセレスティアの牽制を難なく躱し、少しだけ距離を取る。


空中から叩き落とされたことにより体制を崩したレルゲンは空中で身体を捻り


念動魔術で無理矢理軌道を修正して落下速度を落とす。


それでも完全に勢いを殺しきれない状態で着地したレルゲンの地面には小さくヒビが入る。


即座に念動魔術による再飛翔で飛行船に向けて飛ぶが、悪魔が割って入りレルゲンのゆく手を阻む。


この間にも火薬石の入った樽爆弾は落下を繰り返し、地上には爆発を伴った衝撃が響いていた。


「どけ」


「それは出来ません」


「どけ!」


強く意思が込められた言葉に呼応する様に、レルゲンより上空にいた悪魔が猛スピードで地面に叩き落とされた。


黒龍の剣に魔力が込められて赤い光線となった一撃は、残りの飛行船を全て巻き込んで爆発させて無力化させる。


その様子を見ていた悪魔の指揮官は、落下した部下を心配することなくレルゲンを見つめながら


「素晴らしい魔術だ。それこそが真の念動魔術に相応しいぞ!レルゲン・シュトーゲン」


全ての飛行船を叩き落としたレルゲンは赤く光る源に手を伸ばして掴み取る。


(これで上空からの攻撃はなくなったな)


ゆっくりとセレスティアの下へと降りると、叩き落とした悪魔は服についた砂埃を叩きながら指揮官の悪魔の横へ歩いてゆき


叩き落としただけでは大した攻撃にはならないと悪魔の頑丈さを再認識して、再びお互いが睨み合う体制に戻った。

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