第二十一話 分離
あと数話です。ここまで皆さんありがとうございました!!!
「ガストロ!!!」
「隼!!!」
戦闘中の全員が叫んで、戦闘どころではなくなった。突然の出来事だった。キルデビルの武器がガストロと隼の心臓に突っ込んでいった。
キルデビルの高笑いが轟く中、隼は倒れかけながら、先程の武器を心臓から抜き、掴んだ。
「!?」
「おらぁっ!!」
隼が最後の力を振り絞って武器を投げつけると、首を貫通して、キルデビルを完全に仕留めた。
「ゔっ……」
隼が力尽きたようにその場に倒れる。隼組の全員や、キル家が近寄って生きてるか確かめると、きちんと息をしていて大丈夫そうだった。だが、ガストロの近くからは叫び声が聞こえてきた。
「心拍が……ない……」
ガストロの心臓は完全に貫かれていて、もう息をしていなかった。『怪物達』の全員が叫んでどうにかしようとしているが、どうにもならない。
「キルデビル……キルデビル!!!!!」
憎しみに包まれながら、マインが叫んだ。
一方のキルデビルは武器が首を貫通しているので、悶え苦しみ、膝を着いていた。瞬間、空気が凍りつき、全員の思考が停止した。キルデビルの口から、黒いモヤの煙が上空に上がって行ったのだ。そして、その煙はライルのことも掴み、吸収してしまった。
「っ……!?」
ライルも想定外だったらしい。そのまま黒い煙に飲まれるようにして、ライルの姿はモヤに消えていってしまった。
モヤは段々と形を作っていき、遂にはモヤに巨大な一つの目玉が作られた。
「あれが……キルデビルの最後の姿……!」
意識を取り戻したアストラもその姿を目視した。あまりの迫力に一瞬恐れおののいたが、それでも立ち上がってきちんと目を直視した。
「大丈夫なのか、アストラ!」
「あぁ、首の傷は何故か治ってる。」
そんなことを言っているものの、ほとんど上の空だった。意識は全てキルデビルに向かっている。戦闘不能になった隼が体を起こして、話し始めた。
「アストラ……はぁ……お前とキルデビルは今もまだ強く結ばれてる……だから、お前のゼロ、『侵入』を使えばあのモヤの中にいるキルデビルと……はぁ……話すことができ……」
言い終わる前に、心臓が傷んで、もう一度隼は倒れてしまった。だが、言いたいことは全て伝わった。『侵入』のゼロを使用すれば、キルデビルの中に入ることができる。
そうなれば、このままボサッとしている訳にはいかない。迷わず、ゼロを放った。
「『侵入』!!!」
視界が渦巻いて、意識が飛んだ。
気がつくとそこは一面、赤色に似た、まるで人間の体内のような気持ちの悪い色合いに包まれていた。まるで、水中のように空中をふわりふわりと浮ける不思議な空間だった。
「ここが……キルデビルの中……」
そんな空間の奥に、透明な膜のようなものに包まれた、赤子くらいの大きさの何かが浮かんでいた。その何かに浮かびながら近づくと、だんだん泣き声が聞こえてきた。
「……泣いてるのか?」
【グスン……グスン……】
赤子のような何かは、膜を破りたいかのように、アストラの方を見ながら、膜に両手をついて、話し始めた。
【本当は寂しかったんだ……なぜ人を殺すために生きないといけないんだ……なんでみんなと一緒になれないんだって……】
そう言う間も、何かの泣き声は止まらない。その話を聞いて、確信した。これはキルデビルの心、そしてキルデビルの本心の化身だ。その振動、悲しみが空間を伝わってアストラに直接伝わった。
「もう良いんだよ……神なんかに呪われて生きなくても……」
そう言うと、キルデビルの心の化身はそのまま膜を突き破った。最期、心の化身は少しニコと笑みを浮かべたような気がした。
瞬間、現実世界の方のモヤも一緒に晴れて、空を包む暗雲も晴れた。
「やった……やったんだ!!!キルデビルを倒したんだ!!!」
全員が歓喜に包まれた。『怪物達』もガストロの無念が晴れたことが嬉しかったようで、喜んでいる。マインはもう意識がなくなったガストロに、勝利の報告をした。
「ボス……ガストロ。もう良いんだ。世界破壊なんて。結局俺らは何も目指してなかったんだよ。」
アストラはキルデビルの空間から出ると、キルデビルのモヤがあった高度から、ヒューンと落下していた。ほとんど意識が朦朧としていたので、ランドに助けて貰って良かった。
意識を取り戻して、目を開くと、全員が傷を治しあっていた。『怪物達』とも何とか仲直りしたようで、ガストロに追悼をしていた。隼は少し心臓から逸れたようで、致命傷には至らなかったという。
一安心した瞬間、歩いていると何かを蹴ったのが分かった。
「なんだ?」
不思議に思って蹴ってしまった何かを拾うと、それは何かの目玉だった。
「キルデビルの残骸……」
瞬間、目玉からヒビが入った。目玉にヒビが入ったのではない。目玉からヒビが入ったのだ。
そう、時空、世界そのものにヒビが入ったのだ。そのヒビは広がっていき、やがて大きいゲートになった。
「アストラ?どうかしたのか?」
その隼の質問で、不思議と状況をスッと理解できた。恐らくこのゲートは自分にしか見えていない。そしてこの先は……
「みんなちょっと待っててくれ。」
「おい、アストラ!?」
そう言って、笑ってからゲートの中に入った。
目が覚めると、虚空にいた。言うなれば、星の光がない宇宙。こここそが……
☾日曜日へようこそ☽
何者かの声が、耳に直接響いているようだった。目の前を見ると、身長およそ数百メートル程の巨大な人型の怪物がいた。
あまりの温度に、一瞬で体全体が「暑い!!」と叫んでいるようだった。そして、服もだんだんヂリヂリと燃え始めていた。
この怪物こそが『サン』。周りを見渡すと、他の曜日の主達六人が、自分と同じように虚空に浮かんでいた。
「決着をつける時だ!!!サン!!!」
六人全員の声が重なり合った。
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