第十九話 真実
ここで一話過去編が入ります。是非、六話の過去編と比べながら読んでください。ちょっと長くなっちゃいました。
何億年前か。分からない。キルデビルは微生物が生まれるよりも前に、この世に生を受けた。『サン』という神によって。
この世は曜日ごとの七つの世界に別れていた。そのうち、日曜日を支配していた神がサン。そしてキルデビルが生まれたのは水曜日だった。
この世界に生まれ、生きる理由は一つ。この世界の主を殺すこと。だが、数年が経ち気づいてしまった。自身が主であることに。
そしてキルデビルは時を待った。新しいもう一人の主が生まれるのを。
だが、キルデビルには寿命があった。およそ数万年。だが、そんな短い年月では足りないと思った。そして、キルデビルは初めに動物に宿った。だが、その動物は近くの動物を皆殺しにするような凶暴な動物になってしまった。
ある時、恐竜に宿った。結果、恐竜を殺し尽くし、小動物だけが残った。これが恐竜絶滅の歴史である。
数万年が経ち、キルデビルはある少年に宿った。名は『キル・ガストロ』。キルデビルは『キル家』に出会い運命を感じた。絶対キル家の中に主が生まれると思ったのだ。
結果、キルデビルの存在は誰もに知れ渡り、ガストロは『悪魔』と呼ばれ世界中に知れ渡っていた。ある日、キルデビルの兵器利用を恐れた『×軍』がガストロの家を襲撃した。だが、その時にはもうキルデビルは他のキル家に宿っていた。
現在から数年前…
キルデビルはキル家次男、「キル・ブラック」に宿っていた。そして、その協力者は「キル・ライル」だった。キル家に退屈していたライルだけがキルデビルの存在に気が付き手を組んだのだ。
「へぇ……ガストロの家族が死んだらしいぜ!!ライル!」
「そりゃあ……可哀想なこった!!」
ライルとキルデビルはゲラゲラ笑いながら話し合っていた。ガストロは、アストラ達の従兄弟に当たる存在だった。そんな中、キルデビルは口を開いた。
「おい、そういえば最近「アイナ」って女のガキが生まれたんだろ?この体も使いにくくなってきたから移るぞ?」
「いいが……ブラックの肉体の記憶を多少いじらなければいけない。一ヶ月ほど待ってくれ。」
数ヶ月後、ニャン太は二人の男を連れて会議を開いていた。
「『ゴリ!』、『グワス』。「ゴリ!」、お前はブラックの中のキルデビルだけを殺せ。キルデビルは今アイナに移ろうとしてる……どうしてでも阻止しろ。そして、グワス、お前はライルを殺れ。……チッ、いっその事家族に言ってやりてぇが、『怪物達』からの情報だからな……」
ニャン太はこの時から『怪物達』の裏切り者。なのでライルの事を言ってしまえば、バレてしまう。
「今日の深夜だ。分かったな。」
「あぁ!」
深夜、ニャン太一行はキル家に爆撃を起こした。元々弱い使いを送らせておいて、弱らせてから爆撃をしたのだ。結果ほとんどの家族が対応できていなかった。
それに対して、ライル一人だけは違った。まるで、ニャン太が爆撃をするのを分かっていたかのように、別室で勉強をしていた。
これは後日分かったことだが、ライルの勉強部屋だけが、爆撃で残ったという。
そんな中、デンジャが叫んだ。
「何が起きた!?」
「恐らく大砲を撃たれた!」
一方のパニックは父親と話していた。
「父さん、俺が何かするか?」
「いや、パニックはまだここにいろ。それよりもスピードが速いデルムはアイナを連れてきてくれ!」
「了解!」
そしてデルムはそのまま炎の間を潜り抜けて走っていった。それを後ろで眺めていたブラック……キルデビルは、アイナに移ることだけを考えていた。
「せっかくだ。こちらから出向いてやろう。」
キルデビルは頭の中でそう思い、ブラックの肉体から離れた。
キルデビルの気配が消えたことに気がついたニャン太は一瞬困惑したが、すぐにアイナの事を気がついた。だが、先程デルムがアイナの所に向かった。
「クソ……デルムも殺すしかない……!!」
そしてニャン太はデルムを追うようにして走り始めた。使用するゼロ、『完全猫』の応用技、『影歩き』で地面に潜って走った。
デルム付近に来たので、地面に出た。そして、能力で横腹を攻撃した。暗闇ということもあり、デルムに姿は見られなかった。
デルムの意識が飛びそうになり、アイナが落下した。アイナを先に殺す。そう思った瞬間、デルムの口からレーザーが発射された。
【ゴオオオオン】という音が鳴り響いて、ニャン太は吹き飛ばされた。レーザーが地面に直撃して、爆発が起こったのだ。煙は案外早く晴れ、デルムの倒れている姿が見えた。そして、アイナの姿も……
「あれは……!!!」
「あぁ、いい気分だ……新しい体は!!!」
アイナにキルデビルが宿ってしまった。キルデビルは周りを見回し、遠くにいる誰かを見つけた。
「どれ……試しにあいつを殺るか……」
瞬間、キルデビルは辺りの炎を吹き飛ばすほどの速さでその誰かに近づいて殺した。そして、体力回復のために、そいつを食った。すると、数分して何者かが来た。
その後はもはや記憶がない。おそらく何者かに半殺しにされた。赤子のこの肉体では、必死に呼吸をするのがやっとだった。
一方の吹き飛ばされたニャン太は、遠くに何者かの姿を見つけた。アイナかと思い、近くの棍棒のような木の板を取って殴りかかった。だが、瞬間ブラックに頭を殴られた。バレた、そう思ったが、ブラックは何も言わなかった。おそらく、キルデビルの精神とブラックの精神が混濁していて、何も言えないのだろう。ニャン太はもう一度影歩きを使い、どこかへ逃げた。
一方、グワスと戦闘中のライルは、石操作での攻撃を軽々避けつつ、ある事を思い出していた。
キルデビルに「分身を作れるようにしておけ」と言われたことを思い出していたのだ。そして、ライルは分身を作ると、要件を手短に言った。
キルデビルの手助けか、キルデビルが死にかけならアストラに移せ───
案の定、キルデビルは死にかけだった。おそらく先程バレずにすれ違った隼によって半殺しにされていたのだ。
「アストラに移れ、キルデビル。」
そう言って、アストラに移ったキルデビルを確認してから、アイナの肉体にトドメを刺した。その後、分身を解除した。
一方ニャン太はアストラと共にいた。煙の奥に戦ってる二人の姿を見た。そう思い見てると、パニックが飛んできた。
「アストラ!あそこの敵思い知らせてくる!」
「は!?」
そう言って炎の奥に飛び込んでいった。だんだん戦っている二人の姿が見えた。あれはゴリ!と……パワー……!?ゴリにはブラックを倒せと言ったはずだ。
「チッ……どけ、パワー!!」
そう言ってからゴリ!に攻撃した。ゴリ!は突然ニャン太に攻撃されたことに驚いていたが、ニャン太は激怒してゴリ!に言った。
「誰が家族を殺せといった……!?」
そう言ってゴリ!を押し倒していると、背後からパワーに「それにしてもこいつら何なんだ?」と話しかけられて、ビクッとした。「さぁ?」と焦りつつも、誤魔化して、どこかへ逃げるように影歩きで行った。
影歩きをしていると、遠くにグワスの死体が見えた。そしてライルが立っていた。なので、少し離れた場所に出て、ライルに対して『完全猫』で魚の骨を飛ばした。すると、ライルの右目に刺さり、ライルは激怒して、叫んだ。
「クソ猫ォーーーーーーッ!!!!」
ライルがそう叫ぶと、ライルの頭からは、ニョロニョロとした角のようなものが生えてきていた。
それに呼応するように、ニャン太も少しずつ姿を変えた。すると、服から髪の毛に至るまで、全身が毛に包まれ、完璧な猫のようになった。
「殺す……!」
「やってみろ!!」
そう言って、二人の拳がぶつかりかけた。瞬間、大地が揺れるように、【ゴオオオオオン】という音が耳を劈いた。そして辺り一帯が、影に包まれた。
音のなった方を見ると、そこには異様な雰囲気の巨大な骨の怪物がいた。
「は?なんで……」
「来た来た!!面白ェのがよ!!!」
先程、『影歩き』の最中、アイナの死体は発見した。なぜ死んでいたのかは分からないが、とにかく死んでいたなら、キルデビルは存在しないはずだ。
なのに、この異様なオーラは確実にキルデビル。瞬間、隙をつかれた。
ライルは静かに飛びかかって、ニャン太の頭を掴んだ。
「『白骨化』!!!」
すると、ニャン太の頭部の皮、肉、が剥がれ始め、中から頭蓋骨が顕になった。そして、首元まで白骨になったので、ライルは手を離して、ニャン太を放り投げた。
「別に死んじゃいないさ。数分すれば治る……まぁ、聞こえてないか。」
そう言っている最中に、キルデビルは消滅していた。そして、黒色の灰のようなものをライルは拾った。
それを見つめていると、遠くで家族が騒いでいるのが聞こえているので、灰をペッペッと捨てた。
「一件落着か……」
そうしてライルの不敵な笑みを最後に、この事件は幕を閉じた。
この作品が面白いと思ったら是非★やブックマーク、コメントなどお願いします。
また、他の連載作品などもお願いします。




