第十八話 キルデビル
もう最終章入っているので、文字数が次回くらいからつめつめになるかもしれません。
時空の割れ目から巨大な怪物が現れた。まるで空を覆い尽くすように全ての体を出すと、下半身は幽霊のように一つにまとまってニョロニョロとしていた。
これがアイナ?そんなはずがない。アイナは赤ちゃんだった。こんな怪物じゃ……
だが、その怪物はこちらを見て残酷に一言告げた。
【お……兄ちゃ……ん……】
明らかにこちらを見て、意志を持った言動だった。怒りとショックと悲しみとで、体が破裂しそうなほど、頭の中がぐちゃぐちゃしていた。今にも嘔吐してしそうで、暴れだしてしまいそうだ。
そんな時、耳元で何かが話しかけてきた。
【そろそろ変われよ……】
何の話か分からないが、絶対に駄目だ。そう、本能では分かっていたのに、体が言うことを聞かなかった。瞬間、【キルデビルLv.2】の体を覆う膜が、腹から破けて、もう一度体を覆った。
全身で、グニョグニョと動く膜の動きを感じた。数秒後には、もう意識はなかった。
アストラだった物は、今では鬼のような角が片方だけ生え、黒のパーカーを羽織った、怪物のような姿に変貌してしまった。
その圧に、近くにいたニャン太は逃げ出すことも出来ず、ただその場でじっと震えていた。
魔力は分からないが、立っているだけで人を恐れおののかせる程のオーラ。
これが、噂に聞いた【キルデビル最終形態】。
キルデビルは、アイナの顔をじっと見つめると、空中を蹴るようにして空を駆けた。そして、アイナの顔面まで近づくと、拳を握って、顔面にふりかざした。
すると、顔にヒビが入ったように、割れて、中から光が吹き出して、叫びながら風船のように破裂した。
【グォァァォオオオァォ!!!】
「くっくっくっ……はぁっはぁっ!!!」
いとも簡単にアイナを殺してしまったキルデビルは、墜落するように落ちてきながら高笑いをした。怪物を上回る怪物。
「アストラだったか……アイナとかいう化け物は除霊してやったぞ。全く、要望の多いガキだ。」
アストラとキルデビルは、脳内の中で二つの意志を持っている。そのため、常に頭の中で会話を繰り返しているようなものなのだ。
そのため、アストラに頼まれたキルデビルは、アイナに膨大な量の魔力を注ぎ込み、除霊した。そもそも、このアイナは、巨大な怪物の肉体にアイナの魂を入れただけ。なので、キルデビルの魔力に耐えきれなくなったアイナは除霊されたのだ。
「さて、久しぶりの肉体だ。楽しませて貰うぞ!!!」
そう言うと、落下中のキルデビルは、グルンッと空中で一回転して、どこかへ向かった。
そして、そのまま隼とガストロの戦場に突っ込んだ。
「っ……!?」
「君、誰だい?」
突っ込んできたキルデビルから、二人は一旦距離をとって、三つ巴という形になった。
「俺が誰か?見りゃ分かるだろ、真の敵だよ!!!」
ラビ三世は、筋骨隆々な体で、二人の男と戦闘中だった。タイムとブラックの二人である。ラビ三世は自慢のスピードとパワーで戦うも、二人のゼロの前では攻撃が通用しなかった。
攻撃しようとしても、タイムの『時間停止』で距離をとられてしまう。『巻き戻し』は能力差の影響で通用しないが、まともな戦闘は不可能だった。
「ブラック、俺がこのウサギの動きを止める。その間にゼロで攻撃してくれ。」
「あぁ。」
嫌味のように、わざわざラビ三世に聞こえる、真正面でそう言うと、タイムはラビの近くまで一気に近づいた。
「『時間停止』」
「っ……!!」
対象は、ラビ三世のみ。すると、殴りかかろうとしていたラビ三世の動きは、ピタリと止まった。瞬間、ブラックはラビ三世に近づいて、体に触れた。そして一言呟いた。
「『空亡』。」
瞬間、【ゴオオオオオオオオオ】という鼓膜がはち切れるような音が地球全体に響いた。
そして、上空を見上げると黒雲から、太陽のような何かの球体が現れた。
「【空亡】、百鬼夜行の最後に登場する、最強の妖怪。太陽は球体上の妖怪なんだよ。」
すると、空亡と呼ばれる太陽は、グルンッと横に一回転して、ラビ三世の方を向いた。すると、巨大な目が、一つ、二つ、三つ、四つ………合計で十つほど、様々な大きさでついていた。
その目一つ一つが、ギョロギョロと絶え間なく動いている。だが、中心の目だけは、確実にラビ三世を見つめていた。そして、どこにあるか分からない口で、テレパシーのように一言呟いた。
【滅亡だ……】
一メートル程の杖を持つ、エミは、様々な魔法を杖から放つことが出来る。だが、キル家の敵で窮地に追いやられていた。
「キル家め……!!」
そう言って睨む先には、キル家長女ハート、次女スター、三女ツバキの三人が立っていた。杖をほとんど振り回すようにして、ハートに攻撃をしたが、冷静さを欠かした攻撃など、通用しない。簡単に避けられて終いだった。
「観念しな、『色欲』エミ。あんたの負けだよ。」
「まだまだよ……」
隼、ガストロ、キルデビル。三つ巴になった三人だったが、全員が睨み合って動かなかった。問題はキルデビルにある。あまりにも意味不明な乱入。それに加え、底力の分からない怪物。基本、こういった怪物からは魔力を感じられない。そのため、不気味すぎる存在なのだ。
そんなキルデビルが、口を開いて突然叫んだ。
「ライル!!!!」
すると、家族全員が集まってるところから、ライルが一歩前に進んだ。キル家全員の視点が集まった瞬間、ライルは自身のゼロ『白骨化』で、近くの家族を白骨にした。
「おいおい……あいつ……魔力を感じない……!?ってことは……」
「人間じゃ……ない……!!」
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