第十五話 hitode
【登場人物】
長男 キル・タイム
一度は一家から離れたものの、今は協力して『怪物達』と戦う。使用するゼロは『時間停止』。
次男 キル・ブラック
長男替わりに一家を取り仕切っていた。
三男 キル・パニック
すぐ慌てやすい性格。三男だが頼りない。使用するゼロは『パニック』。
四男 キル・ニャン太
語尾に「にゃん」がつく、猫耳の男。『怪物達』の裏切り者だが、何かわけがあるようで……?
五男 キル・デルム
昔のアイナが死んだ事件から部屋にこもって出てこない。だが、デンジャに連れてかれて…!?使用するゼロは『レーザービーム』。
六男 キル・ライル
頭の切れる合理的な男。単純な肉弾戦も可能なようだ。
七男 キル・パワー
筋骨隆々な男。髪の毛が拳の形の一本にまとまっている。
八男 キル・デンジャ
アイナが死んだ事件から行方不明になっていて、殺戮兵器になってしまっている。だが、最近デルムを連れて、全ての組織を破壊するという作戦を実行しようとしている。使用するゼロは『氷結』。
九男 キル・アストラ
主人公。キルデビルという悪魔が宿っており、二つの形態がある。巨大な髑髏の怪物の【Lv.1】を召喚でき、半身黒半身白の怪物に変身もできる。使用するゼロは『侵入』。
長女 キル・ハート
タイムの『巻き戻し』のゼロで赤子にされていたが、最近戻すことができた。
次女 キル・スター
タイムの『巻き戻し』のゼロで赤子にされていたが、最近戻すことができた。使用するゼロは『星操作』
三女 キル・ツバキ
勘が鋭く、状況判断能力に優れている。センター分けの髪型で、和服を着ている。
四女 キル・アイナ
数年前、『怪物達』に襲撃された事件によって死亡した。
ガストロは黒いパーカーをパサッと羽織った。そして長い机のリーダー席の場所に座った。
「【Y】。」
ガストロがそう言うと、壁を走ってガストロに向かった。そして、【Y】はガストロの横に立った。
「あそこの空き缶倒してみて。」
そう言ってガストロは数百メートルあるかもしれない廊下を指した。暗すぎてなにも見えない。だが、どうやら空き缶が奥にあるらしい。
ガストロの隣のYがコップの水を手にこぼすようにして垂らし、廊下に向かって水滴を飛ばした。
遠くから「カァァッン」という鈍い音が鳴り響いてきた。エミが性能のいい懐中電灯で廊下を照らした。
奥が少し見えた。目を細めて見ると、空き缶が真っ二つに割れていた。
「ふぅ、実力は確かだねぇ。」
そう言ってガストロはYの頭を撫でた。「グルルルル…」という低い唸り声をあげた。
エミが懐中電灯を棚に放り投げた。そして呆気にとられたのか、「はひぃ…」という息を吐くようなため息を漏らした。
「私たちより強いの作られると、立場が……」
「いやいや、大丈夫でしょぉ?みんなの方が強いって。」
ガストロが笑いながら煽るように言った。全く、よく分かりにくい人だなと『強欲』ことゴステラは思った。
「ガストロ、もうすぐ本人も呼んだ方がいいんじゃないか。」
「確かにそうだね。」
『傲慢』ことマインの提案にガストロが立ち上がって叫ぶように言った。
「hitode!」
そう言うと、焦ることもなくパーカーを脱ぎながらhitodeは歩いてきた。
オーラというより、貫禄のようなものを感じた。
「ガストロ様、私を呼んでくださるとは。」
「明日『例の作戦』の日だからね。作戦が過ぎればお前も幹部入りだ。で、ちなみにあれは持ってきた?」
「はい、こちらです。」
そう言って右手に持つバッグから、花瓶に飾られた『空気の花』を出した。
紫色で禍々しい見た目だが透明感がある。そして、水色の円形の何かが発生している。
「これ、空気か。何度観ても綺麗だねぇ。」
「何度も確認しますが、作戦が終われば……幹部入りなんですね!?」
「あぁ。そうだよ、だから……」
ガストロは地面に足で「タンッ」と音を鳴らした。すると、ゴステラが飛びかかってhitodeの腹を蹴って吹き飛ばした。hitodeがぶつかった棚が「ガシャン」と音を立てて壊れた。
「足蹴りは得意ではないんだがな。」
「な…なぜだ……!!」
肋骨が折れたようで、hitodeは立ち上がれずに呻いた。hitodeは口から血を吐きながら叫ぶように言った。ガストロが席に座ったまま、見下しながら言った。
「お前が幹部になれるのは作戦が終わったあと。今はまだ幹部でもない、ただの部下だよ。【Y】を作ってくれてありがとな。」
ガストロが嘲笑うように鼻で「フッ」と言った。
「ふざ…っけんじゃねぇぇぇぇええええええぇ!!」
hitodeが肋骨を無視して立ち上がって走り出した。ゴステラが興味ないように逃げるhitodeを見ていた。マインが手をかざしてレーザーのようなものを出した。部屋から出る扉に辿り着く前に、細い光の柱がhitodeの腹に突き刺さるようにぶつかった。すると、その点から腐っていって、一分経つ時には内臓や骨に至るまで完全に腐ってドロドロの液体になった。
「【Y】、食ってもいいぞ。」
【Y】は普通の食料を好んで食べないので、死体を食べる。hitodeの死体を喜んで食べた。
「悪いねぇ、ニャン太君と喧嘩するでしょ?それに……反乱因子は減らしてかないといけないから…」
一方、デンジャとデルムの二人は暗い廊下を歩いていた。奥の部屋からは「バタバタ」という何かの音が聞こえる。だが、こんな暗闇ではなにも見えない。迷わず歩き続けた。扉の前に着いたので、デンジャが扉を蹴り飛ばすように開けた。目の前では赤と紫の気色の悪い液体を食べる、小学生程の身長の怪物がいた。
「うぇぇ……気持ち悪。」
デンジャが蹴り飛ばそうとしたが、気づいた時には足に怪物が乗っていた。壁を蹴って怪物を潰そうとしたが、デルムが体を抑えて止めた。
「どうしてだよ、デルム兄ちゃん。」
「あれを見ろ」と、デルムは顎でクイッと部屋の奥の方を指した。デンジャがそちらを見ると、そこには異様なオーラの『ガストロ』がいた。
「…えっと、誰?」
ガストロが口だけ笑って言ったが、目は依然として真顔のままだ。
「この組織に入れてくださ〜い。」
デンジャがわざとらしくふざけて言った。流石に堪忍袋の緒が切れたクラウスが蹴りかかろうとしたが、ガストロが止めた。
「まぁ、いいよ。何で知ったのか分からないけど、明日作戦があるのは知ってる?」
「知らな〜い。」
「ま、簡単に言えば地球、壊しちゃうの。敵は隼組とキル家。キル家はあんまり誰がいるか分かってないけど。」
「隼組って……あの!?」
デルムが思わず聞いた。
「うん。まぁ適当に戦ってくれりゃいいよ。じゃあ、用が済んだら帰ってねー。」
ガストロにそう言われたので、デルムとデンジャは帰った。帰り道は、前が見えないほどの森だった。デンジャが途中、ニヤニヤしながら言った。
「後はアストラを……」
気味の悪い笑みを浮かべてデンジャが言おうとした。だが、言い終わる前にデルムが口からレーザーを放った。デンジャがギリギリで避けた。
「何を……」
デルムがデンジャの足をかけて転ばせた。デンジャにできた一瞬の隙で、首に強烈な一撃を入れて、気絶させた。
起きた時に逃げないように、猿ぐつわをつけて、縛りに縛り、絶対動けないようにした。
「はぁ……お前みたいな危ないヤツといつまでも付き合ってらんねぇよ。作戦が終わったら解いてやるからな〜!」
そう言ってデルムはサササーと森を歩いていってしまった。
「明日が作戦の日だ……みんな準備しな。」
そう言ってガストロは歩いていった。隣の部屋に入ると、壊しそうな勢いでタンスを開いた。だが、開かない。固く閉ざされている。鍵を確認するが、かかっていない。
なので、壊れるほど力を込めて、扉を開けた。すると、扉が吹き飛んでタンスが開いた。
そして中からは数人の人が流れ込むように出てきた。
「ふっ……ははははは!!デルム!!お前が裏切り者だったわけか!!」
中心に立つのはアストラ。そして横に広がるようにキル家全員が集まった。
「『テレポート』。」
ツバキのゼロ、『テレポート』。全員がタンスの中にテレポートしてしまったので、扉が開かなかったのだ。
「前日だからって油断しすぎたよ……お前ら!!」
マインを筆頭に、ゴステラ、エマ、ラビⅢ世、クラウス、Yが走ってきた。それに少し遅れニャン太も走ってきた。だが、ツバキがそれを潰すように、上空に『テレポート』した。
「初めましてだ!!『怪物達』!!」
『隼組』の四人が『怪物達』の七人(八人)と向き合った。ガストロが怒りを含んだ笑みで隼に言った。
「開戦だな。」
「いや、終わりだよ。」
デンジャとかhitodeみたいな、集団の流れに沿えないようなやつは、集団の誰にも気が付かれないまま消えていってしまうっていう風刺?的な要素を入れてみました。
三話ぐらいでデンジャが出た時からもうこの消え方は決まってました。ていうかこの消え方のために作りました。




