変えたい自分
どうして僕がこんな過酷なプログラムを受けたかと言うと、自分を変えたかったからだ。
単純かつ当たり前な理由。
でも僕にとっては大きな決断だった。
僕は高校1年生の時、クラスに馴染めなくていじめを受けていた。
それもなかなかの陰湿なものばかり。
金はとられて当たり前、殴る蹴るの暴力は日常茶飯事。
入学してから3か月も経たずに僕は休学し、半年で退学した。
それから8年、ずっと引きこもりの状態が続いてる。
僕と同い年の人は皆、社会人として真っ当な生活を送っている。
もちろん、僕をいじめたあいつらも。
それが悔しくて、惨めで、腹立たしくて、親にも申し訳なくて、社会と自分、何もかもが許せなかった。
こんな底辺な自分を何としてでも変えたかった。
これからの僕のために、僕を変えたかった。
だから、どれだけ辛かろうが、僕は一切の迷いなく本プログラムの参加を申し込んだのであった。
1時間が過ぎた。
僕を監視していたテレビは強制的に切れた。
重々しく密閉された空間は、「カチャリ」というあっけらかんとした音を鳴らして簡単に解放された。
「お疲れ様です、ナガタキさん。順応治療第1回目、終了です」
職員の労いの言葉と同時に、新鮮な外の空気が颯爽と吹き込んでくる。
ああ、やった。
やり遂げたんだ、僕。
やればできるじゃないか。
極度の緊張から発せられた大量の汗と度重なる頻呼吸で、むさくるしさが立ち込める室内。
僕は地獄から抜け出すように、陽気な足取りで部屋を出た。