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第八話『常人の皮をかぶったおバカ』

 今回のエピソードはちょっと文字数少なめです。

 なぜかって?3章くらい溜めてたデータ吹っ飛んだので思い出しながら書いたら多分ちょっと内容飛んだからだよ。


 てへぺろ(・ω<)☆

「なるほどな。つまりマコトはそこの馬鹿の言う通りにしただけか。確かに訓練場を壊したのはマコトだが……おいマリア頼むって言ったよな?」

「も、申し訳ありませんわ……」


 あの後、騒ぎに気付いた親父に応接室まで連行され、お説教を受けていた。

 バニーガール姿の巨漢がくたびれたオッサンに土下座をする光景はとても異様だ。


 マリアはギルドマスターなの筈なのだが、なんで親父にこんなに怒られているのだろう。


「まぁまぁ、とりあえずはこの辺で」


 延々と続くお説教に、見かねたミコトが仲裁に入った。


「それにしても君が弓を使うと毎回被害がでるね」

「そ、そんなこと言われても……」


 僕だってあんな事になるだなんて思ってもいなかった。

 まさかあの弓に魔力を込めれば込めるだけ威力が上がるなんて能力があるなんて説明されていなかったんだから。


「アハハ!それで、どうするん?体調戻るまで弓はやめた方が良いんじゃない?」


 応接室に笑い声が響く。


「あ!君は……」


 入口のそばには黒いパーカを着た青年がいた。

 確か……そうだ!朝、ミコトに気絶させられたチンピラのことを笑ってた人だ。


「どうもお久しぶりです。自分、レン君の友達で、前に何回かお会いしたんだけど……覚えてなさそうやね」

「ごめんなさい……」

「あぁ!全然大丈夫やで!そんな落ち込まんで大丈夫よ。そんな数回あっただけやったら覚えてないよな!」


 どうやら面識があったようだ。

 当然覚えている訳もなく、申し訳なさそうに謝る僕に慌てたようにフォローを入れる。


 なんだろうか、少し話しただけなのにこの滲み出る良い人オーラは……うむ、好青年である。


「?」

「挨拶はもういいか?」

「あ、はい!」


 親父が話を戻す。


「とりあえず。これがお前のギルドカードだ」


 親父は懐に手を入れると銅色に輝いたカードを取り出す。


「え、いいの?」


 てっきり、ギルドの施設を壊しちゃったから最悪出禁とかも考えてたんだけど。


「文句なしの合格よ!」

「何が文句無しだこの馬鹿……」


 サムズアップするマリアを親父が軽く叩く


「ははは……それで、マコトの武器は何にしましょう?」


 乾いた声で笑いながらもミコトが話を進める。


「えっと……弓じゃダメなの?」

「絶対ダメ!」


 パーカー君が全力で止めて来る。


「そうね、今のマコトちゃんは魔力の調節ができてなさそうだから魔力を多く使う武器はダメね」

「なら、剣術で良いだろ。それならレンやカンナが教えれるし魔力もあまり使わん」


 カンナ……あぁ僕のお姉さんか、レンに教えてもらったな。

 確か、とてつもない変態だって言ってたな。


「取り敢えずこれ使え、これが両方抜けたら一人前だ」


 実の姉が変態という事実を思い出していると、親父がどこから取り出したか二振りの刀を僕に投げる。


「うわっ」


 驚いて取ろうとするがもう一振りを取り損なってしまう。


「のわぁ!」


 取り損なったもう一振りはパーカー君がスライディングでキャッチした。

 うむ、ナイスプレイ。


「あら、おじ様が剣術を教えてあげてもいいのでは?」

「確かに、オウカもそろそろ学びたがってますよ?」


 地面に転がる僕達を置いて、マリアとミコトは親父に尋ねる。


「え?親父って剣術できるの?」


 衝撃の事実……でも無いのか。

 探索者の講習を任されるくらいだしな。

 頑張って若かりし頃の親父を思い浮かべる、確かに剣の手入れをしている所を見たことがある気がする。


「あら、まだ聞いてなかったの。アナタに弓を教えたのもおじ様よ」

「オウスケさんは橘流二刀術、それから橘流魔弓術の後継者だよ」


「橘流二刀術……橘流魔弓術……」


 なんだそれ、ちょっとカッコイイな……


「やっぱり字ずらがカッコええなぁ!」


 ……このパーカー君とはいい友達になれそうだ。

 レンも良い友達を持ってるじゃないか。


「めんどくせぇ、俺はもうガキ四人に教えるので疲れた。後は知らん、弓はタタラに剣はレンに聞け」


 しかし、めんどくさいの一言で終わらせてしまう。どうやらレンに教えてもらう方がはやそうだ。


「とりあえずギルドカードの更新は終わったわけだけど……これからどうする?僕とオウスケさんはまだ午後の講習が残ってるから先に帰っててもいいし……」


 そうか、僕の用事が済んでもミコトたちはまだやることがあるのか。


「それじゃあ、一人で帰ってみようかな。来るときに道順は覚えたし」

「それやったらなんか簡単なクエスト一緒に行きませんか?」


 おっと、ここでパーカー君からクエストへの招集が掛かる。

 確かに家に帰ったところで別にやることがあるわけでもないし、この際探索者の仕事を体験してみるのもいい機会かもしれない。


「い、行ってみたいけど大丈夫かな……パーカー君の足で纏いに――」

「パーカー君?」

「あ……」


 あ、しまった、心の中のあだ名が……


「くっ、ふふっ……いいじゃないか。僕もしばらくはパーカー君と呼ばしてもらおうかな」

「いいな、俺もしばらくそう呼ぶか」


 それを聞いたミコトと親父が悪ノリを始める。


「ちょ、ちょっと!?」

「なんかごめん……」


 すまぬ、名も知らぬパーカー君よ……


「マリアはどう思う?」


 そんな僕らを置いてミコトはマリアにクエストを受ける事の意見を求める。


「そうねぇ、最近特異魔門の出現率は増えているけど外のモンスターの生態系に異常は見られないし……薬草採取とDランク以下のモンスターの討伐までは良いんじゃない。それに”パーカー君”がついてるしね、何なら少し戦い方を教わりなさい」


 どうやらマリアも便乗したようだ。


「わ、わかっ……ぶふっ」

「あー!笑ったなぁ!」


 とりあえず許可は出たのがその代わりにパーカー君いじりが始まってしまった。


 それにしても、マリアから信頼されてそうな感じだったしパーカー君って案外強いのだろうか。 


「もうそれでいいよ、僕はどうせ一生パーカー君なんや!あとそんなに俺、強くないからあんまり期待せんといてな」

「う、うん……」


 なんだか不憫なパーカー君をみて申し訳ない気持ちになる僕であった。




~~~




 ギルド一階、最初に扉を開けてから一番奥に見えた大きな受注版の前に僕たちは移動していた。


「それじゃあ、何を受注しようかな」


 たくさんのクエストが貼られた受注版の中からパーカー君がクエストを探していく。


「クエストってこうやって紙で貼られてるんだね」


 ふと疑問に思ったことを聞いてみる。

 こんなに人がいるのに受注版でクエストを張り出すのは非効率なのではないだろうか?


「うん?何言ってるんよ、端末で受注できる奴よりこうやってその日に紙で貼りだされた奴の方が良いのが残ってるやん?」

「端末……あぁ、魔道具か」


 なるほど、紙だけじゃなくて何か魔道具のような物でもクエストの受注はできるらしい。

 パーカー君は思ったよりも慣れているようだ。


「なに言ってるんですか。寝たきりやってもこれは覚えてるでしょ」

「え?」

「ん?」


 何だ、話がかみ合ってない気がする。


「もしかして、聞いてない?」

「え、何を?」


 パーカー君は心底不思議そうな顔をして僕に尋ねる。


 僕は気づいた。あ、これ知らないやつだ。


「僕、記憶喪失……なんだ」

「あはは!何それ笑えない冗談やん!」


 笑えない冗談と言いながら爆笑するパーカー君。

 矛盾である。


「……」

「え?マジ?」


 僕が真剣な表情でパーカー君を見るとその表情が硬直する。


「大マジ」


 彼の顔から笑みが消え、後退しながらの見事なスライディング土下座へと体勢を変化させる。

 そのスムーズな身体操作は目を見張るものがあった。


「ご、ごめん!」

「え、ちょっと」


 何事かと周囲から注目され始める。

 中には僕がパーカー君をいじめてるんじゃないかと冷ややかなめで傍観してる人もいる。


 そりゃあギルドのど真ん中で土下座なんか目に入ったらもめ事だと思うよね。


「俺、全然知らんくて。言いづらい事言わせちゃってホントにごめん!」

「いや、大丈夫だから。顔上げてお願いだから!」


 確かに、最初はほんのちょーっと辛かったかもしれないけど、今は周りから感じる視線の方が断然つらい!


「かくなる上は……」


 頭を上げさせようと近づいた僕の腰から彼は刀を抜きだす。


「この腹掻っ捌いて詫びさせてもらいます!」


 まじかこのお馬鹿!

 この子人の刀で切腹しようとしてやがる!


 僕はパーカー君の狂気じみた思考に戦慄する。


「やめてぇぇ!誰か!誰かこの子止めてぇぇぇ!」


 これが僕のパーカー君との最初?の出会いであった。

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