乙女ゲームのヒロインに転生しましたが、なぜか婚約者に嫌われてます!!
初めて異世界物を書きました。拙い文章ですが読んでいただけると嬉しいです。
―プロローグ―
乙女ゲーム「ラブミラクル」。私はヒロインのユイ、今は。この前、突然目眩がして前世の記憶を思い出した。
―私は鷹松唯十七歳、ごく普通の高校生だった。自分で言うのも何だけど、友達も結構いて、この前ずっと好きだった幼馴染の平上友汰に告白されて付き合い始めたばかり。十年越しの片思いが遂に実を結んで幸せな日々を過ごしていたはずだった。初めてのデートの日、楽しみすぎて前日寝れなかったせいで寝坊してしまった。なんてことをしてしまったんだ。彼に、ごめん寝坊しちゃって遅れる、と送った。すると、いいよ全然、焦っても良いことなんて無いからゆっくりおいでって返ってきた。相変わらず優しすぎるんだ、私の彼氏は。なんて考えながら駅まで自転車を漕いでいたとき、信号無視の車に轢かれて意識不明の重体になった。私が最後に見たのは、今までに見たことがないほどの涙を流す友汰と両親だった―
というわけで今に至る。ラブミラクルは私が生前、毎日と言っていいほどやっていた乙女ゲームだ。で、ユイっていうのはヒロインのことで、偶然私と同じ名前だったってだけ。最近よくある乙女ゲームの悪役令嬢に転生しましたーっていうやつならまだわかるんだけど、なんでヒロインなんだろう。ヒロインだからもちろん王子に好かれているはずなんだけど、最近王子の態度が私に対してと他の女子に対してで全然違うように思うのは私だけかしら。もしかして嫌われてる?ヒロインが?全然ゲームと設定が違うんだけど。そういえば、最近王子と一緒にいる令嬢は、それこそゲームでは悪役令嬢と呼ばれる立ち位置だ。王子の前では優しい令嬢のように振る舞っているけれど、周りに令嬢だけしかいないときは暴言吐きまくりで、しょっちゅう他人の悪口を言ってる。風の噂によると、自分よりも年下の令嬢には特に当たりが強くて、パシリに使ったり、自分の思い通りにならないと脅したりしているらしい。そんな娘のどこが良いのか私にはわからないが、まぁ王子は彼女の本当の姿を知らないから仕方がない。
あ、そうそう、そういえば王子の顔が友汰にそっくりなのよね。初めて見たとき、なんか見たことあるような…って思ったけど、そんなことありえないから気にしなかった。だけど今思えば、そう思って当然だ。なんせ、前世の幼馴染しかも彼氏そっくりなんだから。ずっと心を曇らせていた靄がなくなってスッキリしたように感じる。でも、王子は友汰みたいに優しくないから、顔だけでは好きにはならない自信がある。向こうも私のことよくは思っていないだろうし。ていうか、なんでヒロインの私が嫌われて、悪役令嬢が好かれてんの?どう考えても逆じゃない?こんなの全然ゲーム通りじゃない。ってことはまさか破滅フラグ立ってる?いやいや、ヒロインが破滅するなんてあるはず無いんだからまぁ、気楽に行きましょう!
―第一話 二人の出会い―
私ユイの住む国では、幼いうちに親が婚約者を決める。というのも、うちの国は身分がはっきりとしていて、私の家は一応トップに君臨する。要するに、私はお嬢様である。婚約者はこの国で知らない人はいないエルバップ家の第二王子シルバラ・エルバップ。第一王子のルキア・エルバップとは違い、他人に対してはほとんど心を開かないと言われており、それが故に彼に話しかけようとする人もほとんどいない。ただ一人を除いては。ハリヤ家第二王子のラピス・ハリヤ。二人はどうやら幼馴染らしくシルバラ王子もラピス王子には心を開いてるみたい。
「ユイ、こちらはお前の婚約者のシルバラ・エルバップ王子だ。あのエルバップ家の第二王子だぞ!ほら、挨拶しなさい」
「あ、えっと…コトカ・ユイと申します。よろしくお願いいたします」
「おい、シルバラ。お前も挨拶しなさい。ごめんね、ユイちゃん、この子人見知りで」
「シルバラ・エルバップだ。よろしく」
これが私たちの出会い。幼いときはよく一緒に木に登って遊んだり、ピアノを弾いたりして仲が良かった。私にも心を開いてくれているんだと思ってた。
「ユイ、どっちのピアノがお父様たちを喜ばせられるか勝負しようぜ」
「いいわ、まぁ負けないけどね」
「臨むところだ」
あの頃は楽しかった。いつからあんなふうになってしまったのかしら?
―第二話 学園生活の始まり―
私たちがこれから通うエターナル学園は、国の中でもトップクラスの王子や令嬢が通う学校だ。前世は私立は学費が高いからってことで普通に公立高校だったから、お嬢様学校に通えて嬉しい。今日は入学式で、シルバラと一緒に学校まで向かっているんだけど…無言。本当に私嫌われてるみたい。流石に気まずすぎるのでなにか話そうと思って、
「ねえ」
って言ってみたんだけど
「なに?(圧)」
って言われてこれ以上話しかけるのはやめておいた。
学校に着くとどこを見ても高貴な人ばかりで、本当に自分が通って良いところなのかと思ってしまう。今の私は鷹松唯じゃなくてユイだし、一応それなりのマナーは知っているつもりだから大丈夫か。
「あら?ユイー」
遠くから幼馴染のリンが私を見つけて走ってきた。
「リン、おはよう。今日も相変わらず元気ね」
「おはよう。元気が一番!だからね。それにしてもユイとシルバラ王子はホントに仲が良いわね。今日も一緒に来ちゃったりして」
「違う。お父様に言われたから一緒に来ただけだ」
そう言って、シルバラはさっさと言ってしまった。なにリンが言ったこと真に受けてんの?リンの性格知らないの?ちょっかい出してるだけじゃん。ていうか、もうちょっとあの態度なんとかならないの?シルバラが私を嫌いなのは別に構わないけど、態度があからさますぎて流石にこっちも気分良くないんだけど。まぁ、これ以上は彼との間に険悪なムードを作りたくはないから、こんなことは口が裂けても言わないけど。そんなこんなで私の学園生活は幕を開けた。
―第三話 悪役令嬢登場―
「皆さん、ご機嫌よう」
学校に着くと、いつも通り彼女の声が聞こえてきた。え?彼女って?ああ、彼女の名前はマリー・ユリカ。トップクラスの令嬢ではあるけど、性格が本当に最悪。今日もみんなの前では猫を被っているみたい。
「あら、シルバラ様ご機嫌よう。今日も格好いいですわ」
「あ、ああ。それはどうも。ユリカ様も素敵ですよ」
「またまた、そんな御冗談を〜」
シルバラに素敵だなんて言われて調子に乗っているんだろう。あれはどう考えても冗談だろうけど。 ふと、彼女が私の方を見た。
「あら、ユイ様ご機嫌よう。衣装は似合っていらっしゃいますけど、シルバラ様のお隣は似合ってないですわよ。ユイ様より私のほうがシルバラ様にお似合いだと思いますの。ねえ?皆さん?」
周りにいた他の令嬢たちがこくこくと頷いた。彼女に逆らえばどうなるかくらいみんな知っているので、誰も逆らおうとしない。まぁ、そうなることくらい私にも予想はついていたのだけれど。
「ええ、いつでもシルバラ様のお隣はお譲りしますわよ。私も、ここにいたくているわけじゃないので
「あらあらそうでしたの?早く言ってくださればよかったのに。シルバラ様もユイ様より私のほうが良いでしょう?」
「別にどっちでも良い。誰もそんなこと気にしない」
と言ってシルバラはさっさと歩いていった。
「またまた〜、シルバラ様は素直じゃないのですから。あ、ちょっと待ってくださ〜い」
彼女もシルバラの後を追って去っていった。
途中振り返ったシルバラが悲しそうな顔をしてこちらを見ていたように見えたのは気のせいかしら?
―第四話 第一王子と急接近?―
最近、第一王子のルキア・エルバップつまりシルバラのお兄さんがどういうわけかちょくちょく私に話しかけてくるようになった。ルキアとは小さい頃シルバラと三人でよく遊んでいたので普通に話せるけど、顔面国宝すぎて直視できない。しかも性格も良いときたもんだから、本当に完璧王子様って感じ。いくら幼馴染といえど、イケメンと久しぶりに話すのは緊張する。
「私になにかご用ですか。ルキア様」
「ルキア様だなんてそんな他人行儀な呼び方はやめてくれよユイ。俺たち幼馴染だろ?」
「それはそうですけど一応年上ですから」
「いいからそんなの。そういえば、最近シルバラと喧嘩でもしたのか?険悪な雰囲気が漂ってるけど…」
「別に喧嘩したわけじゃないんだけど彼が私を嫌ってるみたいなの。私なにか気に障るようなことしたかな〜」
「そうなの?シルバラはユイのこと嫌いじゃないと思うけどな〜」
「いや絶対嫌われてる。私に対する程度だけ異常に冷たいの。はあ、婚約者がルキアだったらよかったのに…」
「え?それ本気で言ってる?シルバラより俺のほうがいいの?」
「まぁ、ルキアのほうが優しいし」
「俺だって誰にでも優しいわけじゃないよ。ユイだけだよ」
「え?なんで?」
「それは…。ユイのことが好きだから」
「もー、そんな冗談いらないからー」
「冗談じゃないよ。俺は昔からユイのこと好きだよ」
「そんなこと急に言われても…」
「困らせてごめんね。でも、俺の気持ちは知っていてほしいな」
「わ、わかった」
「ありがとう。こんなこと言っといてなんだけど今まで通り接してくれると嬉しい」
「うん。あ、私もう行くね」
そう言って足早に走ってきてしまった。ルキアが私のことを好き?いやいやそんなことあるわけ無い。でも、ルキアのあの真剣な表情、本気の顔だった。いきなりあんなこと言われても…今まで通り接するなんて無理に決まってんじゃん!ルキアの馬鹿。意識しちゃうじゃない。
―第五話 三角関係激化?―
ルキアに告白されてから数日が経ったけど未だに実感がわかない。向こうは普通に接してくるのに私だけ意識して馬鹿みたい。こんなことを考えていると、ルキアが私の方へ走ってきた。
「おはようユイ。今日も綺麗だね」
「おはようルキア。あんまりそういうこと言わないほうが良いと思うわ。令嬢たちは勘違いするわよ」
「だからユイにしか言わないって」
「はいはい、わかりました」
「なんだ冷たいな〜」
最近はずっとこんな調子。令嬢たちの間でも私たちのことが噂になっているらしい。
「あらルキア様とユイ様。最近よくお二人でいるところを見ますけどそういうご関係で?」
「まぁそんなとこかな」
「いやいや違うから。ルキア様が言ってるだけで」
「そうでしたの。ユイ様にはシルバラ様という婚約者がいらっしゃるというのによくそんな事ができますわね。私には理解ができませんわ」
「でも、シルバラ様は私のこと嫌ってるみたいですし」
「いや、俺は…」
「私、ユイ様がこんな酷いことをするお方だとは思っていませんでしたわ。シルバラ様が可哀想。もう行きましょ、シルバラ様」
「いや、だから俺は…」
シルバラの言葉を遮ってマリー・ユリカが彼の手を引っ張っていってしまった。シルバラはなんて言おうとしたのかな。「あの令嬢が噂のマリー・ユリカか」
「え、ルキア知ってるの?」
「ああ、風の噂でね。他の令嬢に嫌がらせしたり嫌味ばっかり言ったりしてるって聞いたことがある」
「そんなに有名なのね」
「まぁでも気にしなくていいよ。ユイのほうが千倍は可愛いから」
「それはどうも」
放課後、ルキアとシルバラが校舎裏で何か話しているのを目撃した。あの二人が何を話しているのか気になったので、隠れて聞き耳をたてることにした。
「ルキア兄さん、ユイのこと好きなのか?」
「ああそうだよ。もう告白もしたし」
「え、本当か?」
「うん。お前がユイのこと嫌ってるってユイが言ってたからチャンスかと思ってね」
「いや俺はユイのこと嫌ってない」
「じゃあなんでユイに対して冷たい態度をとるんだ?」
「そんな態度をとってるつもりは…」
「でもユイはそう感じてるんだぞ。俺はユイに婚約者がいても遠慮はしないからな。たとえ相手がお前だろうと。取られたく無ければちゃんと自分の思い伝えろ。そうしないと何も変わらない」
「わかったよ」
―最終話 王子の本音と真のヒロイン―
私シルバラに嫌われてたわけじゃなかったってこと?えー、めっちゃ誤解してたじゃん。どうしよう会う顔がないよ。嫌われてなかった安心と誤解してた申し訳無さでぺたんと尻もちをついてしまった。前を見るとそこには目を見開いたシルバラの姿が。ヤバいと思って逃げようとしたけど手遅れだった。シルバラに手を掴まれて動けなかった。
「ユイ、さっきの俺と兄さんの話聞いてたのか」
「ごめん、何話してるのか気になっちゃって」
「じゃあ話が早いな。さっきの話の通り、俺はお前を嫌ってたわけじゃない」
「じゃあなんで…」
「冷たい態度をとってたかって?それは、お前のことがす、す、」
「?」
「あーもう言わなくてもわかるだろ。お前のことが好きだからだよ。そのくらい気づけよ」
「そうなの?全然気づかなかったけど」
「お前が鈍臭すぎるんだよ。俺は好きな娘の前だと素直になんねーの。幼馴染なのにそんなこともわかんねーのか」
「ホントに嫌われてると思ってた…良かった、嫌われてなくて」
「俺はお前のこと嫌ったりしねーよ
「ホントに?」
「ホントだよ」
そう言ってシルバラは私を抱きしめた。
「すき」
「ん?ユイ今なんて?聞こえなかったからもう一回言って」
「嫌。だって絶対聞こえてるもん」
「マジで聞こえなかったからお願い」
「はぁ、私もシルバラが好きだよって言ったの」
「知ってる」
「ほらやっぱり聞こえてるんじゃんかー。シルバラのいじわる」
「ごめんって」
そんなことを言いながら歩いていると、ルキアが後ろから走ってきた。
「お、仲直りしたんだね。俺は別にしてもらわなくても良かったんだけど」
「ユイは渡さないからな」
「まだ諦めてないよ。チャンスはまだまだあるだろうし。ユイ、シルバラが嫌になったらいつでも俺のとこおいで」
「え、あ」
「行かせねーよ」
鷹松唯改めユイ、やっとヒロインになれました!
最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。これからも努力して参りますので、また読んでいただけると幸いです。