0. Catch The CROWN
「試合開始まで残り5分」
淡々とした機械ボイスが真っ白な空間に響く。
この時間だけは、俺とあいつの2人だけの物だ。
そう…まるで
今この瞬間だけは世界から切り離されたような、そんなような場所だ。
「ついこの間までは、私1人だけだったから、この空間に他人といるなんてやっぱり新鮮だなー」
空中に浮かぶメニューウィンドをいじりながら、あいつはそう言った。頭にはいつもの金属の兜を被っているので表情は見えない。
しかし、声色から楽しさを感じる。
「本当だよな、まさか自分がコンビ組んでやるなんて、マルチやランク戦ならまだしも、大会でなんてさ」
そう言いながら、準備完了を押す。
「私なんてマルチ戦でもランクで戦もやったことなかったから、ほんとに新鮮なんだからね!」
皮肉そうにあいつはそう言った。
「俺だってほとんどないさ」
俺も反論するように言った。
「残り3分」
そしてまた淡々ととした機械ボイスが響く。
「今更なんだけどさ、なんで俺とコンビ組んでくれたんだ?」
手足を伸ばしながら、俺はあいつに言った。
すると、
「ふふふ、それはね~内緒!
仕方ないな~優勝したら教えたげよう」
「なんだよそれ」
俺は試合前は少し冷静になりたいタイプなんだ。
しかし、なんでこいつはこんなにウキウキなのだろうか……。
「そういえば準備完了押しちゃったけど始めちゃっていいの?押しちゃうよ?押しちゃうよ?」
まぁでも試合前にウキウキする気持ちは分からなくもない。相手をボコボコにするのがオンラインゲームの醍醐味である。
「いーさ、押しちゃって。
俺たち初めての大会 なんだ、足引っ張んなよ
あの時の模擬戦みたいに……」
「はぁ?あの時負けたのは、あなたのせいってことになったでしょ?あなたこそ足引っ張らないでよね」
そう言いながらあいつはメニューウィンドを閉じた。どうやら準備完了を押したらしい。
「メンバー全員の準備が完了しました。30秒後に試合を開始します。」
「いよいよだな」
「うん!」
「それでは、試合を開始します。
Catch The CROWN!!」
これは1話の半年前の話である。
次回から始まる!




