プロローグ
初めまして。kerokero9です。え?読み方?そのまま読んで頂ければ幸いです。
今回初めて小説を書かせてもらいましたが、やはり文字を綴るのは楽しいですね。私自身、今回は楽しみながら書いてみたので皆様も楽しんで頂ければ私も嬉しいです。
文の拙さ、漢字の使い方、表現の良し悪し、誤字脱字などあるかと思いますが温かい目でみてくだされば恐縮です。
前置きはこの辺にしておいて、それでは是非、小説をお楽しみください。
荒野。大地、水、生命、ありとあらゆるものが枯れ果てたその地。文字通りの荒野にソレは建っている。
ソレは何の変哲もない普通の教会。
作りが変わっているわけでもない。地下に謎の施設があるわけでもない。多くの人々が想像するような、普通の教会。
神に祈りを捧げる、神聖なる領域。
だが、祈りに来るものは一人もいない。当たり前だ。
なのに、何故こんな場所に教会?
誰も来ない孤独を纏った場所に人の気配は無い。
......一つを除いて。
教会内部。あらゆる物がボロボロになりとても人がいるとは思えないこの教会に一つだけある命。
塗装が剥げ、亀裂が入り今にも崩れてしまいそうな女神の像。
その像に向けて、祈りを込める一人の女がいる。
修道女。所謂シスターという者が着る服を見に纏い、全身が雪のように白く、長い髪さえその例外ではない。健康的だが細い四肢、整った顔立ち。その容姿は単純に美しい、というべきだろう。
やがて祈りを終えたのか、シスターは像の元を去り、外へと通ずる扉へと向かう。
そして、壁に立てかけてあった剣を手に取り、扉を開く。
視界に飛び込んでくるのは遥か一面の灰色の空。日の光など一切差し込む余地はないほど分厚い雲が空に広がっている。
シスターはその空を、何かを探すように見つめる。
左...右...正面...ピタリとシスターの視線がある一点に止まる。灰色の中で一点だけ、黒いものが浮かんでいた。
それは揺蕩うように灰色の空を旋回している。
羽ばたくだけで家は吹き飛ぶ、巨大な一対の翼。
鋼すら容易く引き裂く、鋭利な爪。
砲撃ですら傷一つ負わない、強固な鱗。
この世界における種の中で最も強大な存在、竜である。
こちらが扉を開いた刹那、翼を大きく翻し、その50メートルはありそうな漆黒の巨体を加速させ、遥か大空から急接近してくる。
仮にぶつかれば教会はおろか、その衝撃で大地もくだけるだろう。もしぶつからなくても通り過ぎるだけで教会は崩れ去ってしまう。
普通ならば逃げる。逃げたところで意味などないが、それでも普通ならば、最後まで生きようと抵抗する筈だ。
だが、シスターは逃げない。ただジッと竜を見つめている。
何をするわけでもない。ひたすらに竜を見つめている。
そして、恐らく向かってくる竜に向けて、喋りだす。
「命、とは何でしょう?この問いの答えは命の数だけ存在します。散ってゆくもの。生きるもの。殺すもの。喰らうもの...
本当に多種多様です、うんざりするぐらい。では竜である貴方にとって命とはなんでしょう?」
人の言葉が竜に通じるわけもないのに、シスターは返しを期待する。
だが、返しを期待するシスターに、容赦なく竜は接近する。
シスターは返しが無いことに少しガッカリした様子で、ため息をつく。
「ハァ。貴方も答えられないのですか。答えられないほど難しくはないでしょう?難しく考える必要はないのです。
たった一言でいいのに...」
それに応えるように竜は大きく咆哮する。
「グオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」
教会ごと噛み砕いてしまいそうな顎がいっぱいに開かれ、その中に人間程のサイズの白い歯が見える。
あらゆる生物を畏怖させる怒号が地の果てまで響き渡る。
しかし、シスターは恐れるどころかむしろ―笑った。
薄らと笑みを浮かべる。まるで女神の嘲笑のように。
「なんだ。答えられるじゃないですか」
接敵まで1秒もないだろう距離で、シスターは剣を鞘から引き抜く。
聖剣でも魔剣でも名剣でもない、無銘の剣。
その刀身を見た時、竜はこの世で最後の音を聞いた。
「貴方に最後の救済を」
竜がシスターごと教会に突っ込む瞬間、シスターはその引き抜いた剣で竜の体が線対象になるように、叩き切った。
比喩でも何でもない。その華奢な腕で、力任せに叩き切ったのだ。
竜の肉体はその強固な鱗ごと二つに断たれた。
そして自らの勢いで、二つの体は教会を挟むように、大地へと墜落していった。
その余波でシスターの白髪が美しく滑らかに揺蕩う。
シスターは振り返ることなく竜の死骸に向けてこう言った。
「メメント・モリ。それじゃあ良き来世を」
それ以上シスターが声を上げることはなく、為すべき事は為したと言わんばかりに教会へと戻ろうとした。
「ぁぅ…」
その瞬間、シスターは確かに聞き取った。今にも消えてしまいそうな儚い命の声を。
だがそれはあり得ない。この辺りに人など住んでいる筈もない。旅人すら通らないような場所なのだ。
しかし、事実として声は聞こえた。
勘を頼りに音のした方を向く。
向いた先には竜の右半身が残されていた。
急いで向かってみると意外とすんなりみつかった。
竜の胃液やら唾液で悲惨なことになっている少年を。
うつ伏せで倒れていて顔以外は薄汚れたマントで覆われている。
フードでよく見えない顔を覗き込んで見る。勿論知らない子だ。フードの隙間から金髪の短い髪が顔を出している。
状況から察するに、竜に生きたまま喰われたのだろう。
それにしても竜に喰われて生きているなんて運の良い少年だと思う。
竜の胃から人が見つかることは決して少ないことではない。だが大抵の場合、死んでいるか、溶けかけて死にそうになっているかだ。
この少年は喰われて間もないのだろう。だから五体満足で生きることができた。
しかし竜は人と違って、人間が消化できないものを喰らうこともしばしばある。そのため胃酸は人間のものと比べるとかなり強く、洗い流さないとそのうち体が溶けてしまう。
シスターは胃酸などに躊躇することなく少年を、身の丈に合わぬ力で軽々と持ち上げた。
この辺りではまず見ない服装。故にこの少年がどこから来たのかはわかった。
問題はそこに転がっている剣。何が問題かというとその正体である。現物を見たことがない者でも一目見ただけでわかるような物。誰しもが御伽噺で聞いたことのある物だ。
片手で振り回すには大きすぎ、少年と変わらぬサイズ。
切ると言うよりは叩き潰す、というデザイン。
極め付けに、バラバラに叩き割ったガラスを無茶苦茶に繋げたような見た目の刀身。
即ち、勇者の剣。またの名を、デウス・エクス・マキナ。
先程の竜が偶然飲み込んでいたのだろうか。いやそれよりもこの少年が持っていたと考えるのが自然だろう。
この勇者の剣は王都にて厳重な警備、強固な封印をもってして保管されていたのだから。いくら竜といえどもあの騎士団相手では勝ち目がない。
こんなことを知っているのは昔、王都にいたからである。
もう思い出したくもない過去だが。
「さて、これが勇者の剣であるということは、これを持っていた彼が勇者だってことですかね?」
勇者。それは世界を滅ぼしかねない存在が現れる時、また世界が滅ぶ時、それに呼応するように選定される者。
選定者は5歳から15歳までの世界中の子供の中からランダムに決まる。例えそれが、貧困に喘ぐ子、幼少期の虐待で心が壊れてしまった子、幸せの絶頂にいる子、貴族の子だろうが関係ない。
どんなに幸せだったとしても、不幸だったとしても、ある日突然戦いの日々を世界から望まれる。
拒否権はある…だが、その後の人生に待ち受けるのは―
その子が望まないなら、世界は再び選定する。
終末を撃ち砕く、完全なる機構を。
「はあっ。嫌な時期が来ましたね。まさか勇者が必要になる…
そんなの考えたこともなかったですね」
今まさに世界を滅ぼそうとしている奴がいるのだろう。だから王都は勇者を探した。見つけたはいいが竜に飲み込まれ、連れ去られた。
以上の通りなら騎士団が勇者を救いに、ここにくる筈だ。
ならこの少年は丁重に扱わないと面倒臭いことになる。
シスターは竜に向けたため息よりも、更に深いため息を吐く。
「うちは孤児院みたいなことはやってないんですけどね…この子に死なれても困りますし、しばらく面倒でも見ますか。面倒くさいですけど」
「ゲホッ!ゲホッ!」
少年が突如として咳き込む。
額に触れてみるとかなり体温が高い。多分風邪の症状だろう。
看病も必要となり、また面倒くさいことになった…と思えば少年は虚に目を開いていた。焦点が合わないところを見るに未だ意識が朦朧としているのだろう。
その眼球には金色の十字架が燃えるように輝いていた。
「あら?証もあるじゃないですか」
シスターは目を覚ますには早い少年と刻まれた十字架に驚きながらも、しかしいつもの調子で挨拶をした。
「フフッ。お早うございます」
少年はまるで女神のような目の前の女性の微笑みを見た。
触れれば溶けてしまいそうな白い肌、風に凪いだだけで千切れてしまいそうな細くて白い髪。
そして凍えてしまいそうなほどの哀しさ。女神と見紛うほどの美しさを見て、恐ろしいと感じた。
その姿から感じるのは初めて見るナニカ。
わからないことだけがわかる、そういうもの。
混濁していく意識の中、少年は確かに聞いた。
「ようこそ。夢も希望も無い、絶望の溢れる世界へ」
同時に灰色の空から、雫が一、百、万…すぐに数え切れない数にまで膨れ上がり、乾いた大地を潤していく。
実に3年ぶりの雨だ。
雨は大地にこびり付いた竜の血も、少年を覆っている胃酸も、全て洗い流し清めていく。
だが、潤うことはなく乾き続ける。清められることはなく穢れていくものがある。
それは自らの***。
しかし、シスターは知っている。
もう救いようのない自分の***にも、いつの日か救済が訪れることを。
それがどんな救いなのか、いつ訪れるのかはわからない。
ひょっとすれば、この少年がそうなのかもしれない。
突如竜が現れ、偶然中から少年が出てきた。その少年は勇者だった。そしてこの少年を救うかのようにたまたま雨が降ってきた。
「偶然にしては出来過ぎていますね。まさか貴方の筋書きとは言わないでしょうね?」
独り言に近い感覚で話しかける。
その目は空、いやさらにその向こうを見つめていた。
そして不意に笑いだす。
「フフっ。ありえませんね。だって貴方は存在しませんもの」
それは自虐の笑い。存在しないものを信じ続け、それが無いと分かった今でも存在を疑ってしまう自分への。
「まあどうでもいいです。それより教会に何か食べれそうな物はありましたっけ?ああ、この少年の迎えはいつくるんでしょう」
少年を抱えたままシスターは教会へと戻っていく。
その足取りはどこか重く、哀しく、諦めのあるものだった。
どうでしたか?
今回はプロローグということで主人公の一人であるシスター(サーベイ)視点で書いてみました。
サーベイについて重要なことをちょっとだけ書いてあるのでよかったらサーベイがどんな人物なのか想像してみてください。
この世界における重要な設定云々については次回以降触れていくつもりですので何卒お待ちを。
後書きもこの辺りで終わらせておきましょう。
...書くことがないわけではありません。コラ、そこ。笑わない。
それではここまで読んでくださった方、小説楽しんでくださった方ありがとうございました。
次回以降もこの物語をお楽しみください。




