表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/103

49話 崩壊への第一歩

「マークぅ!貴様、ふざけるな!二ホンとの戦争をしつつも四大魔王という大きな脅威が迫っている現状、仲間割れしている暇など………」


「黙ってください。ロジェン伯爵。いや、ロジェン()()()貴方のそれは自らを保身するための言い訳でしょう」


 シャーカーが殺害されて以降、マークに口を出せる人間は誰一人として居なくなった。

 本来なら外交大臣のガバダもそうだったのだが、その彼は既に帝国には居ない。


 その結果、たった数日の間でマークは様々な者を次々と処刑していった。

 今日もまた、魔法銃の開発に携わっていたロジェン卿が処刑されようとしている。


「き、貴様ら離せ!あれが正気に見えるか!?あの男は国害だ!私は二ホンとの戦争に反対はしないが、あの男が権力を持つことには反対だとも!」


「連れて行きなさい。例の新型竜の餌にでもしておけば良い」


「や、やめろっ!やめろおおおおおおおッ!この悪魔があああああッ!」


 じたばたして抵抗するロジェンが、複数の兵士たちに強制連行されていく。


「………やっとあの耳障りな声が聞こえなくなりましたね。あのような愚物を排除することで、帝国はより良くなる!そうは思いませんか?セリア軍部大臣」


 そんなロジェンの罵声を無視しながらマークが、新しく軍部大臣となったセリアへそう問いかける。


 シャーカーの件以降、マークによって散々な目に合ったのはロジェンのような貴族だけではない。軍の上層部もそうだった。

 当初処刑されていたのは、二ホンとの戦争に反対するものやシャーカーの処刑に猛反発したものだけだったが、それを止めようとした他の軍人たちも対象に含まれていったのだ。


 元々、帝国軍は仲間意識が非常に強い軍隊であった。彼ら彼女らが次々と殺されていく仲間たちを見捨てられるはずがなく………


(こんな形で大出世を果たすとは思いませんでしたね………あの人たちも黙っていれば、生きていたかもしれないのに)


 セリアだけが生き残った。今や帝国軍の最高司令官は彼女であった。


「………そうですね。次々と帝国の害となるものたちが消えていくのは、素晴らしいことです」


 適当にセリアがそう返すと、マークはそうだろうと鷹揚に頷く。そしてすぐに上を向いて祈るようなポーズを取り始める。


「でしょう!?ああ、神よ。より我々が高みへと至る姿を天よりご覧ください!」


(正気の沙汰ではありませんね。これは二ホンとの戦争とか四大魔王とかそういう話以前の問題です)


 天に向かって祈るマークを冷めた目で見つめるセリア。しかし、彼女もプロだ。

 思うところはあるものの、軍人としての責務を果たす。


「そういえば二ホンによるシャベド北側の部隊への攻撃についてですが、死者は四千名程度でした。密集していた仮設兵舎へ例の攻撃が直撃し、火災も被害を増大させたようです。また、それ以降二ホン軍の動きは見られません」


「そうでしたか。ご苦労、では私から陛下へ伝えておきますので。もう下がってもらって構いませんよ」


「はい。では、失礼します」


 報告を手早く済ませ、退室する。







「………ガバダさんが羨ましいですね」


 セリアが、思わずそんな愚痴を吐いたのも仕方ないだろう。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ナルカル連合 キャメロ基地


 ほぼ同時刻、連合と帝国の国境付近にあるキャメロ基地では物々しい雰囲気が漂っていた。


「お前ら!装備の用意は出来てるか!?敵味方識別用の魔法アクセサリを忘れるなよ!それと、あの暴れん坊な竜も実戦配備したてだからな!ちゃんと指示に従うか確認しとけ!」


「は、はい」


「分隊長、キームがまだ準備できてません!」


「なんだと!?またあいつか………」


 自分の剣や盾を手入れする黒人の兵士が居れば、瞑想をしているハーフエルフの魔法使いも居る。空を見れば弓に頬ずりしているハーピーだって見つかる。


 見た目や恰好、様々な要素が全く異なる彼ら彼女らは、慌ただしく戦いへの準備をしているという点だけは同じだった。


「良いか!政府からの連絡では、一時間後に我が国は帝国に宣戦布告をするそうだ!それに合わせて我々は帝国のジョール城を攻撃せねばならない!急げよ!」


「ついに帝国の奴らとやるんですよね!?」


「俺がガキの頃、アイツらに母国を滅ぼされたんです………やっとあの時の復讐が………」


「奴隷とか好き勝手やってるからなあ。むしろ何でうちの国はあいつらと仲良くしてたんだろうな」


 民主主義が当然の連合で育った者たちは、差別と格差で溢れる帝国への印象が良くない。特に近年は、連合に帝国によって母国を滅ぼされた難民たちが逃げ込むことが増えたため、よりその印象は悪化していたのだ。


 つまり、やる気満々なのである。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] マークのこの変わり様、誰か仕込んだな? そしてどの様に帝国が崩れるのやら…
2022/05/17 22:11 退会済み
管理
[気になる点] ……マークがどんな末路を迎えるのか。 [一言] そして帝国は、マークの愚かさと自らの油断によって、滅びへの道をたどるというわけですか。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ