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日本国、異世界へ。(旧題 異世界転移は唐突に)  作者: スライム小説家
第二章

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48話 帝国動乱

 アグレシア大宮殿 


「シャベド北側の部隊が空から攻撃されただと!?」


「は、はい。恐らく二ホン軍によるもでしょう。付近はアークドラゴンが警備していたのですが、そのアークドラゴンも気づかなかったようでして………それと、その飛行体は取り逃がしたようです」


 とんでもない報告に動揺を隠せないファリバン。だが、なんとか感情を抑えてシャーカーに質問をする。


「な………それで、損害はどれほどだったんだ!?」


「わ、分かりません。何せついさっき魔法通信でこちらに入ってきた情報なのです。ただ、シャベドは他地域に比べてアークドラゴンや周辺海域での軍艦による警戒が何重にもあったはず。それでも気づけなかったということは………」


 シャーカーが暗い顔でそう話す。


「ここもやられる可能性があるというのか!?」


 ファリバンが信じられないといった表情でシャーカーに問う。しかしシャーカーの答えは………


「………はい。確かにこちらはシャベドより更に厳重ですが、それでも気づくことすらできなかったとなると………」




「むむむ、不味いな」


「な、なんと!ここも安全ではないとは」


 シャーカーのその言葉に、この場に集まった帝国重鎮たちの間にも動揺が広がる。


(間違いない。二ホンは、こちらよりも格上だ。帝国上空に気付かれずに侵入し、部隊を攻撃してそのまま無事に逃げ帰るなど………アークドラゴンやドラゴン、キングバードなどでは不可能だ!二ホンの航空戦力はアークドラゴンより下だという情報も恐らく間違いで………)


 シャーカーがそんなことを考えていると。


「お待ちください!シャーカーは嘘をついております!」


 男の声が場に響き渡る。その男とは………


「ま、マーク皇帝補佐!いきなり何を仰る!?」


 そう。皇帝補佐であり、帝国の事実上NO2であるマークだ。


「前々から、私はシャーカー殿のことを怪しいと思っておりました!四大魔王の件のときも、何か尋常ではない焦り方をしていたように思えます」


「は、はい?それは焦りますとも。古くは人類の多くの災厄をもたらした化け物が我が国から比較的近い海域に出現したのですよ!?焦らない方がおかしい」


 訳が分からぬまま、シャーカーは反論する。何を言いたいのだと言わんばかりである。


「なぜあそこまで焦っていたのか………その答えが今回やっと分かりました!入ってきてください!」


 マークがそう言うと、マークの部下が入ってきて書類をそれぞれに配っていく。そして最後に、シャーカーにも渡す。


「こ、これはっ!」


「な、まさか………」


 場に居る者たちの視線がシャーカーに集まる。その視線は、先ほどとは打って変わって疑念を主としたものだった。


「この書類は昨年の我が帝国の軍事予算をまとめたものと、シャベド警備や魔力探知機開発の予算について書類です。これを見れば一目瞭然、明らかに金額が合いません!シャーカー殿が異様に焦ったのは、四大魔王の件で自身が予算を横領していた魔力探知機の研究に注目が集まり、バレることを心配していたからなのです!」


 マークのその説明に、周囲はシャーカーへと怒りをにじませる。


「とんでもない男だ!」


「今回の二ホンの航空戦力を発見できなかったのも、シャベドの防衛予算を貴様が掠め取っていたからなのだな!?」


「見損なったぞシャーカー!」


 ファリバンも、今にもシャーカーに殴りかかりそうなほどの迫力で怒鳴る。


「私服をこやす為に、我が帝国の国防をおろそかにするとは何たることだ!!!シャーカーよ、貴様は一族郎党まとめて死刑だ!!!」


 突如の出来事に、シャーカーは混乱しながらも弁解をする。


「違うのです皇帝陛下!私はそんなことなどしていません!これは冤罪です!恐らくマークは二ホンとの戦争を推し進めた自らの責任を押し付けようとしているのです!」


 しかし、その言葉は届かなかった。


「黙れ!これは明確な証拠ではないか!もう良い!」


 ファリバンは深呼吸をすると、何かを唱え始める。


「我が偉大なる高祖よ


 我が偉大なる帝国の先達たちよ


 我が力星の彼方より見たまえ!ロイヤルフレイムッ!」


 炎の渦が、シャーカーに襲い掛かる。


「ち、ちがあああああああああああああっ!熱い熱い熱い熱いィィィィっ!ひいいいいいいいいいいっっっ!」


 悲鳴を上げながら、のたうち回るシャーカー。しかし、激昂したファリバンはそれを見ても一切手を緩めない。


「黙れ!喰らえ!ファイアランスッ!」


 ファリバンがそう言うと同時に、真っ赤な炎で形作られた槍がシャーカーを頭から貫く。


「」


 もはや彼は、物言わぬ屍であった。


 そんなシャーカーを横目に、ファリバンへマークが進言する。


「まだ調査中なのですが、帝国軍には他にも横領している者が多数存在すると思われます。そのような者たちは今後自らの横領によって帝国軍が敗北したとき、二ホンを過大評価して誤魔化そうとするかもしれません」


「うむ。シャーカーもそうであったな。考えてみれば、聞いたこともないような小国に我らが帝国が負けるはずなど無い。今後もこのような不埒ものが居れば、頼んだぞ」


「はっ。了解いたしました!」


 ファリバンのその言葉に了承の意を示すマーク。彼の瞳は、より深みの増した紫色になっていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] アグレシーズ帝国の上層部で、戦後も生き残った者がいたら、後にこう嘆きぼやくことでしょう。 「なぜあの時は、帝国を悪い方向に向けるようなことばかり起こったのだ!」と。 もっとも、それが無かっ…
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