8話 帝国使節団、襲来③
※ストーリー上、人種差別的な描写が登場しますが、筆者自身はそれを是としているわけではありません。
アグレシーズ帝国の使節団は、インベルド王国の兵士たちに護衛されながら首都インべリアーロ内を移動していた。
「ふん、所詮は後進国だな。街並みに優雅さが無い」
周囲を馬車の中から見渡した後、使節団代表のキーマはそう吐き捨てる。
「全くですよ。それにここまでの道も舗装がされていませんし、お尻が痛かったです。目に入ってくる黒い肌の者も下品すぎます」
副代表であるシャーリーもそれに同意し、同じように文句を言う。
そして二人を諫めるものも誰一人として居ない。帝国でも有数の名家出身である二人には、他の使節団の者たちは意に反するなど到底出来ないからである。
「お二方のおっしゃる通りです。この国のなんと低俗なことか」
「肌も汚い色の者ばかりですわ。特に黒などもってのほか。獣と同レベルの者を何故生かしたままなのか理解に苦しみます」
………それ以前に、使節団の全員が二人と意見が同じなようだ。総じて彼ら彼女らは不機嫌な表情で文句を言っている。
インベルド王国は過去に様々な国を併合してきた過去があるからか、リマ国やクラート王国などの他国と比べて肌の色が様々である。先述した二国はいわゆる白人がほとんどだが、このインベルド王国は逆。半分近くが黒人である。
だからどうしたという話なのだが、幼いころから人種差別の極みのような教育を受けてきた使節団の者たちにとってはその環境がとても不快なのだろう。
「使節団の皆様、そろそろインべリアーロ城に到着いたします。準備のほうもしておいた方が宜しいかと」
そう御者の一人が声をかけるが……
「黙れ!獣がしゃべりかけるな!」
「案内はもう片方の方にお願いしたいですわね」
黒色の肌であるからか、それを拒みもう片方の警備兵に案内するように言う。
「りょ、了解いたしました。数分後に城の内部に入りましたら左手の………」
警備兵の説明を聞き流しながら、キーマは一人考える。
(これから我々が交渉する二ホンの者は肌が黒くなければいいのだがね………)
 




